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「ぼくたちのリメイク」10年前に戻ってきたらイージーモードどころか全然ハードモードだった件。

人生は不可逆的なものだからこそ、「あの時ああしておけば...」とたらればを繰り返す事も珍しくないと思います。
「ぼくたちのリメイク」は、主人公である橋場恭弥28歳が、ひょんな事から10年前にタイムスリップし、18歳となった彼は、大学進学という人生における大きな選択をやり直し、同じ轍を踏まないぞと奮闘する話です。

恭弥はエロゲメーカーで働いていましたが、開発は難航を極めるどころか、社長の悪態によって、会社は社長と恭弥のみとなり、挙句の果てには倒産する始末。職を転々としながらも、ゲーム制作への道を諦めきれなかった末に選んだ場所も、散々なもので、全てに疲れた恭弥は実家に帰る事に。

そして実家で1夜明けた次の日あろうことか、10年前にタイムスリップし、そこで大学受験生であった恭弥は、どの大学へ進学するか選択を再度迫られます。結果、以前とは違う大学であり、自分が憧れるクリエイター達を排出した芸術大学への進学を決意するのです。

社会人生活10年の経験値があれば大学生活なんて、イージーモードじゃね?となるかもしれませんが、そうはいきません。
恭弥の進学した芸術大学には、色んな才能を持った学生が入ってきます。
絵を描く才能、脚本を描く才能、演技の才能。10年という歳月も、溢れんばかりの才能の前では無力なのかと恭弥は驚きと同時に大きなショックを受けてしまいます。

そしてその才能溢れる同い年は、自分が憧れていたクリエイター達がまだ第一線で活躍する前の学生としての姿だったのです。

10年前にタイムスリップした原因は一切不明ですが、行きたかった大学でなりたかった自分になろうとする話には強く共感しました。
僕は大学ではなく専門を出ていますが、同世代で自分の行きたかった場所に行ってたり、僕が行きたかった学部に行ってる人達を見ると思わずたらればを繰り返していた時期もありました。

しかし現実問題、じゃあそっちの道に進んだらなりたかった自分になれるのか?というと必ずしもそうとは限りません。

上手くいけば今の自分よりも良い状態になれるかもしれない。
でも、失敗すれば今の自分よりも悪い状態になる事だってありえる話です。
10年前に戻ってきても、またダメなのか?と恭弥は自分の無力さを呪いますが、そこで諦めるのではなく、仕事で培った経験を活かし、あの手この手で自分の出来る最大限の力を振り絞ろうと奮起し諦めず前に進み続ける姿は等身大で、人間味に溢れていて、活力に満ちていました。

10年前にタイムスリップするというフィクションさはありますが、作中起こる事はどれも現実として起こりうる話だし、物作りをする事の大変さと楽しさを説いていて、各キャラクターの各セクションにおける拘りも見えてみんなしっかりとした人物として描かれています。


何より高校ではなく、大学という環境がいいチョイスだなと思いました。大学は高校を出た学生達が更に自分が学びたい分野について、広く深く学ぶ
場所(と思ってます)。

大学を舞台にする事で、主人公やその周りの学生達のモチベーションを明確なものにし、同じ夢を共有する仲間として、切磋琢磨する話にしたのは、読んでいるこちらも元気をもらうし、フレッシュな気持ちにしてくれます。


特定の誰かではなく、学校を卒業し社会人として生きている人、何なら学生にも、学校で勉強する事、友達を作る事はどんな事なのか?
この作品に触れて感じ取ってほしいです。

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