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誰がやる。何の為に。 28節 アトレティコvsカディス(A) 2024.3.9

ミッドウィーク無しで一週間空いた。今週はカディス戦。前回対戦

こう考えるとアトレティコの今の取り組みはこの辺りからかなり可視化されていた様子。良い試合だったと記憶している。

今季も引き続きどうにか守りましょうというスタイルのカディスは気づけば9月1日の4節ビジャレアル戦(3-1)以降23戦勝利無し。得点数18がぶっちぎりのビリでなかなか厳しい。とはいえ先季も30得点で残留しているが。
先季まではけっこう3点差4点差で負けても次の週にはケロッといつも通りガチガチに守って戦っていたので、結局エスピノ、チョコ・ロサーノと"カディス節"の象徴的だった選手がいなくなった影響は大きそうである。夢があったテオ・ボンゴンダもいなくなったし。セルヒオ・ゴンザレスを解任し22節からはマウリシオ・ペジェグリーノが監督をしているが、監督が変わったから別の事が出来ますというチームでもない。今季はネガティブなラフプレーも多く見られ、どうなる事やらである。

アトレティコにとってはインテル戦前最後の試合で、良い気分で終えたいところ。そのためにもまずは勝利。


●スタメン

・アトレティコ
オブラク
ヴィツェル / パウリスタ / エルモソ
ジョレンテ / デ・パウル / コケ / サウル / リーノ
メンフィス / モラタ

チーム練習に復帰しているグリーズマンはまだベンチ外。
バリオスは扁桃腺が腫れたかなんかで欠場する。
イエロー4枚のコケ、デ・パウル、パウリスタは揃ってスタメンに。

・カディス
レデスマ
イサ / ウスウ / チュスト / ハビ・エルナンデス
ロベルト・ナバーロ / アルカラス / クアメ / ソブリーノ
マキシ・ゴメス / ファンミ

CBは冬にレンタルで加入したアイハム・ウスウが初出場。シリア国籍という珍しい選手だがスウェーデン出身で前所属クラブもBKヘッケン。今季はELのグループステージにも出場している選手。ちなみにアジアカップも出ていた。もの凄いレンタル移籍マンで近年はスラヴィア・プラハにいたりした。
それ以外は前節のラージョ戦と同じスタメンに。



ということで今季まだ2勝しかしていないカディスに0-2で負けるわけだが。時期も時期でありインテル戦の前準備を整理したい気持ちもあるので4局面を中心にアトレティコの現状をまとめていこうか。


●前半

・撤退

まず撤退守備から。理由は一番普通だったから。

ここ最近のデフォルト。5-3-2ベースでリーノの立ち位置を上下させて圧力を変化させる。形としては普通だが矛盾は常にあり、エルモソの箇所の1vs1を可視化させるように仕向ける守り方がどう考えてもリスクが高い点。エルモソの起用が常に功罪付きまとうのは何も今に始まった事ではないが、前向きの圧力を強めたい事とエルモソの配球力を両立させるというのは結局無理である。
この試合で言えば明らかにマキシ・ゴメスが右サイドへ流れてきて、トランジションはここへハイボールを蹴っ飛ばしてエルモソとの駆けっこorエルモソと距離の近い競り合いを狙っていた。狙われるなら攻撃時のエルモソの位置を低く調整しよう、というなら尚更エルモソがピッチにいる必要がなくなる。これも今更指摘する事でもないがこういう対策をされるとエルモソの起用=攻撃的配置という構図は成り立たない。インテルは対策も何もここにテュラムがいるのがデフォルトなので、スタートはエルモソ、終盤のラッシュorクローズ局面でヘイニウドにスイッチという考え方はそういう展開ではなくなった時に全く身動きが取れなくなる事は確定している。シメオネはエルモソと心中するのかどうかの判断を割と軽く考えているように見えてしまうのは非常に心配。

また、リーノの立ち位置でビルドアップをハメる考え方はサウルとエルモソがボールにアタックする事が前提なのでエルモソが後方に不安を抱えていたりカードをもらって強くぶつかれない時点で成立しなくなる事も付記。

27節ベティス戦より

この試合に限って言えば背中でロベルト・ナバーロに暗躍されたサウルの影響力が全く効かなかったのも気になる点。攻守ともボールとの距離が近くないとサウルの良さは出ない。
ついでに指摘しておくとこの2トップのブロック守備の貢献度が低すぎ。前線守備はCHに入るボールをMFが追いかけてGKに戻させる設定だったようだがそれ以外何もしていなかったが。それでいいのか?


・ポジトラ

アトレティコのポジトラの考え方はエルモソ周辺の解決がベースになる。これは開幕からずっとそう。その日のメンツで言うとリーノ、サウルが近づきコケとデ・パウルが回避ルートを作りヴィツェルが逆サイドで浮く。

2節ベティス戦のプレビュー参照

カディス戦で上手くいかなかった理由は「グリーズマンがいなかったから」に集約できる。くさびの回避ルートを準備できなかった事でカディスはコケ、デ・パウル周辺に人を準備して前を向かせない対応ができた。
まあ心情的にメンフィスにビデオを見せてグリーズマンと同じ事をやってくれというのも難しいのかもしれないが。じゃあコレアで良かったんじゃないですかね、という事で45分でコレアに交代したのは自然。縦幅と深みを取れないポジトラはただの自己満足に過ぎない。カディスはそれがチームカラーでもあるので入れ替わられそうになるとファールで止める事でアトレティコの攻撃をぶつ切りにしていった。これはカディス戦アウェーなら十分予想できた事なので敗因に挙げるのは難しい。というか気に入らないので挙げない。ファールを受けない事もポジティブトランジションなのでは?特にメンフィスは途中からファールをもらうためのボールの受け方が増え、全然実現しなかったどころか自分がカードをもらう始末。必要なのかその作業は
そしてモラタとメンフィスはスペースを共有する意図が一切見られないのでモラタに長いボールを当てて近づいて解決、というプレス回避は一度として見られなかった。この2人はもう少しコミュニケーションを取った方がいい。無理なら一生グリーズマンの相棒候補として争っててください。


・敵陣攻撃

アトレティコの敵陣侵入。

基本形

エルモソにマキシ・ゴメスが近づきなからロベルト・ナバーロが距離を詰めて早めにボールを手離させる守備。

そもそも論だがアトレティコが3-2-5に固執している昨今の構築はグリーズマンがバグメイクを全部やってくれる事に依存する。それがここ最近のグリーズマンがいない数試合で改めて可視化されているに過ぎない。ずっとこんなもん。この日サウルは早めにトップポジションに立って3-2-5を確定させたが最近バリオスがこのポジションで相手の右CH(この日ならアルカラス)の横のスペースを活用していた事を考えると効果的ではなかった。
サウルの思考は「左ハーフスペースのトップポジションに入りさえすれば相手が勝手に崩れる」と凝り固まっていると予想する。それはグリーズマンがやってくれているだけで相手が勝手に崩れるわけではない。なのでズレを生むためのチャレンジがどこかで必要なわけで、モラタはやらない(要求されない)しメンフィスには出来ない事は明白になり始めている。つまりWBが大外を取っている以上その仕事はIH(デ・パウル&サウル)に依存するのが通常の考え方だ。バルサのIHが得意なプレー。見ていこう。

今のデ・パウルとサウルはそれが出来ていない。この日サウルが取り組んでいたのはリーノとのリンクで、立ち位置を入れ替えて背後を取ろうとするチャレンジは見られた。これ自体は悪くない。

ただしこの狙い自体がリーノがイサを一人で突破できない事から生まれる取り組みであり、サウルとリーノ2人では打開できない事が可視化された結果である。同数を解決できないので相手の5バックにバグも生まれない。それも、別にいい。では3人目がどう関与するか。ここでエルモソが登場する。
問題はマキシ・ゴメスに常に背後のスペースをチラつかされていたエルモソがどこまで積極的に左サイドの打開に関われるかというところだ。そしてこの試合はロベルト・ナバーロがコケ周辺で暗躍する事でこのエリアのトランジションの優位はカディスにあった。エルモソはカードをもらって球際で戦えなくなる事を避けたかったし、コケは累積リーチで出足に迷いがあった。というかインテル戦を見据えながらついでにその先のバルサ戦を見据えて目の前の相手が見えていない試合というのはちょっとリスペクトに欠けすぎではないかとも思う。ただし後半から出てきたフェルメーレンが全く使い物にならなかったのでバリオス欠場の時点でここはもう諦めるしかなかった。このエリアのトランジションで不利になるのは戦う前から確定していた環境なのだ。じゃあ、左HVはエルモソではなくヘイニウドだったのでは?

続いて度々話題に出す放置されたヴィツェル問題だ。攻撃が上手くいっている試合では右HVのヴィツェルは無敵のパフォーマンスを見せるが、能動的に得点を取りに行く展開ではどうしてもデメリットが大きくなる。もちろんそれは「ヴィツェルに能力がない」という話ではなく「この環境でこのポジションのヴィツェルが放置されると厳しいね」という話。

ヴィツェルがフリーで前向き。クアメの立ち位置が良い。そしてびっくりするほどパスの出し所がない。
アトレティコの右HVがボールを持った時の一番優先すべき選択肢は左ポケットを取る事。この試合で言えばハビ・エルナンデスの背後を取る事。スピードとクロスの質を考えると理想はジョレンテが取れる事だがそのためのチャレンジをデ・パウルとメンフィスが共有できていない。メンフィスは足下でボールを受けるかゴール前にいたいしデ・パウルは後方サポートしかやらない。

結果、誰も狙いたいエリア(ハビ・エルナンデス周辺)にアタックしていない。たぶんグリーズマンがいればこれでも攻撃が成り立つ。だから普段は問題にならないしそれでも勝てる。前半、唯一この右サイドの攻撃でチャンスになったのは12分にヴィツェルが無理やりメンフィスに縦パスを入れてジョレンテを使い、速いクロスを入れた場面。この場面はサウルがトッポポジションに入る事で大外のリーノを浮かせたので良い形。コケとモラタも関与した全員攻撃だった。


・ネガトラ

そして問題になったネガトラ。マキシ・ゴメスがエルモソの背後へ走ってロングボール。ファンミも近づいてきて嫌がらせした。ロベルト・ナバーロがライン間で仕事をし、アルカラスを経由している間にジョレンテの対応をしているソブリーノが間に合ってサイドチェンジを待った。ソブリーノはよく走る。先制点はまさにそんな形で決められたのでカディスとしては前回対戦と違って準備した形だったのだろう。ファンミの決定力を最大限に活かす良い攻撃だった。ナバーロに振り回されたところは言い訳無用だろう。
ちなみに先制点以降ややアトレティコの攻撃が良くなったのは「失点したならもうリスク度外視で」となってエルモソの立ち位置が高くなった事が理由なので問題点は何も解決していない。そして同点ゴールも奪えていない。これが現実。



●前半終了

おれはインテル戦、バルサ戦を念頭に入れて戦う事を悪いとは全く思わない。なんならそれが理由で負けるなら仕方ないかなとまで思っている。ただし、改善できる箇所はあったはずだという気持ちは大いにある。凝り固まった3-2-5、後方のケアが出来ないネガトラ。たった一人のテクニシャンに振り回される失点。これで負けて先を見据えるなんてちゃんちゃら可笑しいわけで。

この前半の戦いは何もかもが「グリーズマンがいないから」に集約できる。できてしまう。選手達はそれでいいのか。じゃあ来季グリーズマン以外全員出ていってくださいよ。それでいいんですか?という気持ち。



●後半

デ・パウル、サウル、メンフィス

モリーナ、リケルメ、コレア
に交代。

メンフィス&モラタの組み合わせをやめたのは納得感がある。デ・パウルの交代は累積警告対策。なぜリケルメなのかといえば他に人がいない。

モリーナの登場で右サイドからの侵入は増えたが確率の低そうなふんわりクロスに終始。なんかもうちょっとないのか、アイディアは。
コレアの登場で中央ルートの侵入ができるようになり、リーノの侵入から横パスにコレアが反応、という狙いも出た。このまま押し込み続けて最後のアイディアが詰められれば充分にこの試合の価値はあるなと思ったら64分に2失点目。しょうもない失点だったので特に言う事もない。パウリスタはやや難しい対応だったかもしれないが、このプレー以降明らかに平静を失ってパニックに。別にミスしてもいいから落ち着け。お前しかいないんだ。

この2点目でカディスは逃げ切り方向にシフトすると同時にアトレティコはリーノを休ませるためにフェルメーレンと交代。ここに戦術的な意義はない。そういう試合になってしまった。
78分には20歳のサリム・エル・ジェバリがコケとの交代でトップチームデビューとなった。おめでとう。左の大外でドリブルが得意そうな選手。
フェルメーレンはスクランブル体制に入った後に一人でアンカーポジションをやる事になったのは気の毒ではあったがそれにしてもびっくりするほど全く貢献できず。これで一層試合に使いにくくなった。84分にはルックアップ出来ておらず不用意なボールロスト。後方の人数が余裕で足りている局面で足を出してイエロー献上。90分にはエルモソに渡した横パスがとんでもないバウンドをして100点満点で3点くらいの質。正直"フォーメーションがどう"とか"慣れればどう"とかいうレベルですらないように見えるが何十億円という値段がついた選手なのできっとほっとけば活躍を始めるのでしょう。おれの見る目なんて参考にしないでください。終盤にエルモソが頻りにエル・ジャバリに1vs1をやらせてあげていたのが本当に優しい選手だなと思いました。勝ち負けを抜きにしても大事な事。



●試合結果

全ての選手に課題があり、完璧なんていう事はない。それはこの試合に限った事ではないのでこういう指摘は好みではない。ただ、インテルに負けたらシーズンが終わるわけで、消化試合でこんな事をいちいち書くモチベーションもないので書くならここしかなかったというだけの話。

途中でも書いたがグリーズマンが出場できれば大体の問題は解決する。グリーズマンとはそういう選手。それでいいのかと言われれば、アトレティコ的には別にそれでいいだろう。一人一人の選手にとっては駄目だが。おれはアトレティコが勝てる仕組みになっていれば個々のキャリアはまあ二の次だ。グリーズマンがいればいい。しかしそれにしても問題解決力に欠ける。

リーノは連続起用の意味を問いたくなるクオリティに留まる。数試合前からリケルメとの比較を抜きにしてインテル戦の左サイド突破はリーノと心中するというシメオネの賭けなんだろうなと理解している。その賭け、もう負けていないか?大丈夫か?まだ信じる価値はあるのか?
メンフィスはグリーズマンの代役をやるためにアトレティコに来たわけではないが欲しいのは得点なのか勝利なのか。グリーズマン欠場後のパフォーマンスにがっかりしている。チームを助けているか?
デ・パウルはアイディアより手数。精度よりも勇気。もっと相手に向かっていけるでしょう。もっとゴール方向に刺せるでしょう。中盤をコントロールするだけ、コケをサポートするだけなら他の選手でもいい。
モリーナの判断をシンプルから程遠いものにしている要因は何か。もっと簡単なはず。もっとわかりやすいはず。単純で一直線なのが強みだろう。
コレアとリケルメは結果を出したい気持ちだけはわかった。クオリティはそれに足るのか。試合に出してくれない事が悪いのか、出られない自分悪いのか。
パウリスタはヒメネスの穴埋めに最適なベテランである。一つのミスがなんだというのか。インテル戦もやってもらう。決定的な仕事に期待する。出来るでしょ?

コケ、オブラク、サウル、エルモソ、サヴィッチ、ヴィツェル、ヘイニウド、ジョレンテ、モラタ。さて、誰がチームを勝たせる。誰が救う事が出来る。問題解決は誰がやる。それは何の為だ。材料は揃わずとも試合はやってくる。決戦は目の前に迫る。


3/9
ヌエボ・ミランディージャ
カディス 2-0 アトレティコ
得点者
【カディス】’24 ’64 ファンミ

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