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絶対死守こそアイデンティティ 27節 アトレティコvsベティス(H) 2024.3.3

国王杯でアトレティックに敗れたアトレティコはベティス戦。前回対戦。

今季唯一の0-0の試合。一時期なかなか勝てなかったベティスだがここ5試合を3勝2分と好調。冬の補強がフォルナルス、ジョニー・カルドソ、チミー・アビラと当たっている。

国王杯タイトルを逃したアトレティコはCLと、来季のCL権確保(4位以内)が目標。まずは軌道修正の試合としたい。



●スタメン

・アトレティコ
オブラク
ヴィツェル / パウリスタ / エルモソ
ジョレンテ / デ・パウル / コケ / バリオス / リーノ
メンフィス / モラタ

CB中央はガブリエウ・パウリスタ。
モラタとメンフィスが同時にスタメンになるのは実は今季初めて。

・ベティス
ルイ・シルバ
ベジェリン / ペッセッラ / チャディ・リアド / サバリ
ジョニー・カルドソ / マルク・ロカ / ロドリ / フォルナルス
チミー・アビラ / ウィリアン・ジョゼ

前節アトレティック戦で先制ゴールのチミー・アビラ含め、冬の新加入が3人スタメンに。そんな中イスコに続いてフェキルもこの日はメンバー外。前節の接触プレーで鼻を骨折した様子。




●前半

良くも悪くも規則正しいベティスのシステムが、この日はアトレティコの優位に影響した。この辺がベティス戦が得意な理由なのかもしれない。

アトレティコのビルドアップ。普段通り3CBとコケが参加し、ベティスは4-4-2で制限。1stラインの2人がパウリスタとコケを見張りつつロドリはヴィツェルまで出ていく。両WGは対面するHVを警戒する。個人的に4-4ブロックで両SHが新加入というのは色々難しいと思っている。
アトレティコはここの4vs4でエルモソのダイレクトパスから始まるコンビネーションと動き回るコケを起点として中央に縦パスを刺していく。

両WB(ジョレンテ&リーノ)は大外固定で相手SBのプレッシャーを呼び込む距離感を維持し、IH2人(デ・パウル&バリオス)の移動にベティスのCHコンビがどのように対応するかを確認していく。主にバリオスはエルモソのパスコースに顔を出す動きとリーノと2人で相手SB(ベジェリン)に2vs1を問う形を使う。これはアルメリア戦で習得したプレー。
右のデ・パウルはシンプルに大外に消えて中央を開ける。ジョレンテを前に押し出すと同時に自分がフリーでボールを受けるorヴィツェルとコケへの圧力が弱まればそれで良しのプレー。前半に中央で数的優位を作れたのはこのデ・パウルの位置取りに寄る。ちなみに高い位置でジョレンテが周囲とコンビネーションが合わないのが最近のトレンド。また、バリオスがリーノと協力してベジェリンの背後を狙う動きに呼応してメンフィスが中央に降りてボールを引き出し、逆サイドを選択するプレーも出来た。メンフィスらしいポストプレーの上手さ。


同様にボール保持も規則正しかったベティスは、2CBから綺麗な前進ルートを探るがアトレティコはこれを思いっきり捕まえた。

2CBに2トップが正面からぶつかるとペッセッラの選択肢は
・GKに戻す
・ベジェリンにやや窮屈なパスを渡す
の2択となり、ボールがGKに戻ればFWがそのまま2度追いすれば蹴っ飛ばしてくれる事を確認してロングボールを回収、それならもうちょっとパスを繋ぐ方法を考えようとベジェリンにボールが入るところをスイッチにプレスを掛けた。

こういうプレスの時エルモソはMF役

このプレッシャーで4分と7分に2度高い位置でボールを回収し、2つ目が先制ゴールに繋がっている。ベティスはジョニー・カルドソのビルドアップタスクが不明瞭だったのと、前進のネタが尽きた時にボールを引き取りに落ちてくるイスコの不在も影響し、代案を練る前に失点した形。両WGがアブデとディアオだったら違ったのかもしれないが、この日のスタメンが単独突破型ではない事もあって宜しくないハマり方をしてしまった。あとルイ・シルバはもう少し上手にパスを繋ぐ選手じゃなかったかね。
25分にもGKからボールを引き取ったロドリに全く選択肢がなく、出したパスがリーノに引っ掛かりモラタのPKゲットに繋がった。これはモラタが外したが、ベティスは悩ましい時間が続いた。

とはいえベティスはベティスなので、時々ゴール前まで迫られるシーンはあったがこの日はヴィツェルに加えてパウリスタがベストのパフォーマンス。PA内で存在感を発揮し、空中戦の対応も完璧だった。40分には抜け出したロドリのシュートに良く足を出した。ヒメネスがいる時と同様の安心感でアトレティコが前向きの守備を行えた立役者はパウリスタ。最終ラインを高い位置に保つチャレンジも良くコントロールされていた。

アトレティコは前半の内に追加点。44分にCKの流れからデ・パウルのミドルシュートを弾かれたところをモラタが詰めた。モラタは1月22日のグラナダ戦以来、公式戦11試合ぶり(出場9試合ぶり)の得点。このCKゲットもフォルナルスの横パスを前向きに攫ったところがきっかけで、引き続きベティスの産みの苦しみに依る物だった。


●前半終了

ビルドアップ前進と前からの制限に苦戦したベティスの一人相撲に乗じた2得点。アトレティコは失意の国王杯から立ち直るには充分な45分を過ごした。規則正しい相手とここで戦えたのは組み合わせもラッキーだったと思う。ベティスとはいえ。

攻撃ではバリオスがジョイントする左サイドの前進が上手くいき、逆サイドでジョレンテの質を押し付けた環境は理想的だった。現状WBはジョレンテの方が攻撃は上手くいく時期なのかもしれない。メンフィスのパフォーマンスが良く、モラタに得点も出たのはグリーズマン離脱中のチームにおいてポジティブ。あとは勝利という結果を求める後半に進む。


●後半

ベティスはマルク・ロカとロドリに替えてギド・ロドリゲスとウィリアム・カルバーリョ。中盤を2枚替えた。

ビルドアップが上手くいかなかったのでCHの組み合わせを変えつつ、トップ下には理不尽にボールが収まるウィリアム・カルバーリョを置き、ボール保持の時間を長くする方法を探る。この変更を早めの選手交代で行うのは是非が分かれそうだが、ペジェグリーニはよくやる方法だと思います。そしてこの日は当たった。

この交代で、ウィリアム・カルバーリョが平行に横移動する動きでプラス1を作り、ベティスが徐々に侵入を開始する。

主に中央から右に流れてエルモソの注意を自分に引き寄せたままスルスルと降りていき、前方のスペースを味方に使わせようとする。

ちょうどアトレティコのDFが人に吸われる距離ギリギリを横断していく動きは嫌らしい。この動きで逆サイドにスペースを用意し、アトレティコは横スライドを要求されて動かされていく。後ほどこの左サイドの2枚を交代する流れへと繋がる文脈。
また、中盤3枚がスライドに忙しくなると前半はほぼアトレティコが支配していた中盤のセカンドボールの回収で時々ベティスが拾い始め、カルバーリョは真ん中付近に突っ立っている事が多いのでここからチャンスを作るなど展開が変わり始めた。

アトレティコはターンオーバーも考え始めた62分に失点。ヴィツェルがジョレンテにデスパスを渡してしまいロスト。後半のキーマンになっていたウィリアム・カルバーリョが見事に右足を振り抜いた。凄いシュート。
それでもアトレティコは計画を変えずにここでコケとデ・パウルを下げた。

縦移動最強3MFに切り替えた。バリオスアンカーはシンプルに不安だがこれも必要なお勉強。68分にはバリオスがメンフィスに付けた鬼パスからジョレンテ→モラタの決定機を迎えた。

ベティスは72分に打開を狙う左サイドにアヨセ・ペレスとフアン・ミランダを投入し、さらに同点ゴールを目指す方向にシフト。正直アヨセ・ペレスはチミー・アビラ以上にトップポジションに行ってしまうのでなんだか違った気はする。→その後アブデを左WGに置く流れ。75分頃にはCKからギド・ロドリゲスに決定機が来たがこれはオブラクのスーパーセーブで切り抜けた。

この時間帯にアトレティコはリーノがガス欠になり、"もう一度押し込む"、"ゲームをコントロールする"などの選択肢がある中で"完全撤退"を選択。自陣で守ってのクローズへと移行していく。交代の選択肢はリーノ&メンフィス→ヘイニウド&リケルメ

明確に撤退しながら、さらに最後の選択肢はモラタ→サヴィッチとかなりわかりやすく2-1でのクローズを指示した。

最前線でリケルメに馬車馬をやらせる根性フォーメーションに。リケルメはけっこう適性がありそうだった。適性とは。
アトレティコは完全に引き切ってボールホルダーに一人ずつ飛び出していき、質の良いクロスだけ拒否する守備。サイドの人の割き方は誰が指示しているのかわからんが見事だった。パウリスタとエルモソを中心にラインを下げすぎないコントロールも完璧で、ここも良い演習となった。アンカーポジションのヴィツェルは前を捕まえにいくのもPA内に入ってクロスに対応するのも完璧。また新しい良さを披露しつつ、ジョレンテとリケルメを縦に突っ走らせて攻撃もコントロールした。ちなみにフル出場している中で試合開始時とポジションが変わらないのはパウリスタとエルモソだけである。

アトレティコは最後まで隙を与えずクローズに成功。公式戦4試合ぶりの勝利となった。


●試合結果

相手の設定ミスもあり圧倒した前半から、展開が変わって一点差に迫られた後半。2-1とされてから試合終了までの30分弱の過ごし方について考察したい。

・クローズの考え方

①グリーズマンがいれば
完全撤退を選択をした理由は第一にグリーズマンがいなかった点とする。どういう事かというと、この日の2トップがメンフィスとモラタだったという事であり、特にモラタは縦に速すぎる。ピッチにこの2人が残っているとボールを奪ってカウンターに出るスピードが速すぎて中盤が間延びし自分達が苦しくなっていく未来は結構予見できた。ジョレンテが一生懸命追いかけてめちゃくちゃ疲れるのも想像できる。グリーズマンなら最前線に残しても一人で突っ走っていってしまう事はないし、引く時は中盤外側の守備を任せられるのでどうにかなる。グリーズマンがいないので、FWを2人ともベンチに下げなければならない。そうなると撤退する事になる。という流れではないか。

この中で疑問なのはなぜリケルメが起用されコレアに出番がなかったのかである。これは、なんでだろうね。わからん。ただ、この日リケルメはクローズ局面でボールを追いかけ回してカウンターを一人で完結させていく姿はチームを助けていたので、リケルメの起用を疑問視する必要はなかった。それがわかっていての起用だったのか、単にコレアを使いたくなかったのか。その答えはこの日のピッチにはなかったと思われる。またどこかで。ちなみにおれは後半頭からモラタ→コレアかなと思っていた。


②シメオネの都合
この日のシメオネは前半からナイーブなリアクションが目立った。先季の負け狂っていた時期もそうだが、チーム状態が悪い(とシメオネが思っている)時のシメオネの反応は割とわかりやすい。この試合に向けてその改善に時間を割いたのだろうという事もよくわかる。

ナイーブでネガティブになった時に"シメオネが縋るものはなんだろう"と考えると、それはやっぱり"守備"なんじゃないか。2-0の残り30分の時点で準備させたのはモリーナとサウルで、逃げ切りへ舵を切る準備だったはず。それは投入前に失点して2-1になっても変わらなかった。あとはヤキモキしながら、ソワソワしながら、それでもやっぱりトドメを刺しにいく3点目よりもこのリードを守った体験こそがシメオネを、アトレティコを安心させると思っていたのではないか。だから守った。鉄壁守備というアイデンティティの中に身を置くための、撤退。そういう事だったんじゃないか。少なくとも個人的にはこういう真でも守るという戦いは大好きである。気持ちよかった。


ベティスはいかにも構築途上の様子。来季の欧州を狙うならそんな事は言っていられない環境にありつつも、最善策を求めてもがいている状況かと。イスコとフェキルがいない状況でこういう試合をしてしまったのは致し方ない感もある。

今週はバルサが引き分け、ジローナが負け。アトレティックも引き分けた。ベティスを負かす事ができたアトレティコは勝ち点上は2位への挑戦権を得た。ジローナとの勝ち点差は4ポイントに過ぎない。CLを勝ち進むチャレンジと平行するのはアイデンティティを取り戻す戦いなのかもしれない。インテル戦が迫ってきた。


3/3
シビタス・メトロポリターノ
アトレティコ 2-1 ベティス
得点者
【アトレティコ】’8 OG(ルイ・シルバ) ’44 モラタ
【ベティス】’62 ウィリアム・カルバーリョ


●ピックアップ選手

パウリスタ
ヒメネスの穴を埋める充実のパフォーマンスで勝利に貢献。インテル戦のカギを握るか。

バリオス
エルモソとの関係とリーノとの関係を両立させたこの日の体験は成長を感じた。あとはこの枠組みの中で本来の特徴であるバリオス特有の抜群の技術を発揮できるかどうかとなる。

ヴィツェル
真ん中より右の方が良さそう。一つ前を捕まえにいく対応が良く、パウリスタをサポートした。失点に繋がったビルドアップエラーは反省すればそれで良し。

モラタ
約一ヶ月半ぶりの得点でシメオネを安心させた。価値を示す戦いが近づく。

メンフィス
モラタと組んでいた事もあってか普段以上にグリーズマンのタスクを請ける事を意識した。本人は得点が欲しそうだが。

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