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アトレティコ・マドリーのプレス回避手順〜ベティス戦のプレビューを添えて〜

アトレティコの2節はベティス戦。プレビューを書くのが久しぶりすぎて何から書こうか。

先季の対戦はこちら

ベティスは開幕戦アウェーでCL権争いの直接のライバルとなるビジャレアルに1-2で勝利。プレシーズンの印象はあまりよくなかったが球際やトランジションにさすがの切れ味を出して狭いエリアでも正確なボールコントロールで侵入していった。新加入のイスコも良い感じ。




●予想スタメン

ベティスのメンバー構成について。
ウィリアム・カルバーリョが開幕戦直前の怪我でビジャレアル戦を欠場している。

後述するが、いれば絶対スタメンだがいない前提で話を進めます。

それとファンミが開幕戦にいなかったが、どうやら売却の方向で話が進んでいるよう。ファンミ売らないとベジェリンとバルトラが登録できない的な話もtwitterに出ていた。詳しくは知りませんが上記3人全員いない前提です。ということで予想スタメン

予想スタメン

アトレティコの人選も含めて。コレアが捻挫で間に合わなそう。ヒメネスは引き続き欠場でヴィツェルは出場停止明けベンチ入り。

ベティスのスタメンを考えた時、右サイドはエンヒッキになるが、左はアヨセ・ペレスあるいはロドリとなる。ファンミも含めてだが、ベティスの左サイドは大外アタッカーがいない。そうなるとアトレティコは右WBの守備能力にあまり悩む必要はない。WBは対面する左SBとの1vs1だけ考えていれば良い。アブネル・ヴィニシウスかフアン・ミランダの2択。単純な守備能力ならミランダだが、走力があまりわからないのでそこが不安ならヴィニシウスかも。
逆にアトレティコの右CBはFWと対面することが増え、右からのクロスに大外に飛び込んでくる相手を捕まえる必要もある。ここはサヴィッチでもアスピリクエタでも特に心配していない。左右逆だった方がややこしい。


●非保持

中盤の構成。ベティスは2CH+トップ下。グラナダ戦の前半と同じなので、アトレティコの対応も同じになる。

こうなる
中盤が3vs3でハマるので2トップが外回りを誘導する。エンヒッキの足下にボールが入ってイスコが近づいてくる形をビジャレアル戦でも擦っていたので基本は右SBサバリが出口に。

ベティスはこの前進が基本。マルク・ロカは気が利くタイプのセカンドボール拾い屋なので理に適った配置ではある。
で、アトレティコからすれば当然ここから進まれるのは理解の上。というかここから進んでほしいまである。

ベティスからすれば当然エンヒッキの突破に全振りするわけにもいかず、中央ルートからの侵入が必要。そのためにはマルク・ロカではなくウィリアム・カルバーリョが欲しいところ。いないならアトレティコは助かる。ウィリアム・カルバーリョはこの仕事をやらせたらワールドクラスなので。
中央ルートからの侵入でアトレティコが避けたいのは必要以上にルマルが釣り出されること。つまりカラスコが1vs1に晒される形を避けたい。おれが先季終盤のデ・パウルの左IH起用を評価していたのは基本的にはこの部分。

具体的にはこういうボールの入り方は避けたい。カラスコが大外の1vs1の対応をさせられてエルモソが近い距離のサポートに行きにくい環境。これでエンヒッキが内側にドリブルしてイスコがエルモソの背中を取るとか最悪のパターン。
ちなみにこうなった際にコケが爆速のサポートでカラスコに近づいていくシーンを見たことがある人も多いだろう。バリオスも同じシチュエーションを頭に入れておいてほしいところ。その場合にイスコのマークをルマルらが離さないことももちろん必要になる。トップ(イグレシアス)のレイオフでCHが前を向いて全体を中央に寄せられて右大外、みたいな形は警戒したい。左はたぶん大丈夫。

とはいえ、アトレティコの今の守備対応そのものがこの形を警戒するために存在していると言ってもいい。3CBはくさびのボールに積極的に飛び出していく設定であり、特にサヴィッチはこの対応が上手い。アスピリクエタも同様。いないがヒメネスも。アウェーゲームでもあり序盤のイエローは要注意。
そして、相手右SBの持ち上がりでラインを押し下げられることを許容できることも今のアトレティコの強さ、特徴でもある。そうですね、プレス回避です。ここからテストに出ます。

●プレス回避

ボール奪取

今のアトレティコはこういう位置でのボール奪取が多い。
ここで、アトレティコのプレス回避の原則をおさらいする。今日の主題。


アトレティコはボール奪取後、近い位置のCB2枚、WB、アンカーとIHとオブラクを含めた計6人がロンドに参加する
同時に遠い方のCBとWBの2人は逃げ道を準備
グリーズマンが相手CH付近でくさびの可能性を探る
トップのモラタはできる限り近い位置のCBの背後をチラつかせ、なるべく周りから離れる→ロングボールの逃げ道になって1vs1の競り合いをする為

プレス回避

なんとか一枚の図に収めました。保存版。思考の順番を追っていく

まずボール奪取した地点の付近、この場合はエルモソ&サヴィッチ、カラスコ、バリオスとルマルがロンド。オブラクも気持ちは参加する。一人だけ2タッチ禁止の縛り付きで。
相手が3人なら余裕で打開。4人になったら考えもの、5人来ていたら逆に相手がやりすぎ。背後で数的有利が作れる可能性が高いので蹴っ飛ばしていい。

4人で来られた時に次の選択肢が発生する。パターンは3つ。

一番よく見るのはグリーズマンのくさびを使うパターン。図ではマルク・ロカが近くにいるが、相手のプレッシャーの圧力がどんなもんだろうとグリーズマンにパスを入れちゃいけないタイミングというものは基本的に存在しない。すげえな。3人に囲まれてたら別だが。適当にグリーズマンに向かって蹴っておけば何とかしてくれる。先季何度か書いたがコケはこの”グリーズマンに渡しておく”判断が早すぎる程に早い。信頼関係が桁違い。
グリーズマンの選択は主に2つ。中央に留まっているデ・パウルへのレイオフで前向きを作る。あるいはロンドを抜け出して左サイドを駆け上がる選手(場合によってはモラタ)に渡す。このダイレクトプレーをグリーズマンはミスらない。

次の選択肢はモラタと相手CBの1vs1。相手最終ラインを下げるため、基本的には一旦裏抜けをチラつかせる。実際問題ボール保持者はここで裏へ正確なロングボールを送る余裕がない場合が多い(余裕があるならロンドで打開できる)のでアバウトなハイボールがモラタの頭目掛けて飛んでくるパターンが多い。
ここでは別に競り勝つ必要はあまりない。周囲に味方がほぼいないので先に触れたところで基本的に何も起こらない。なのでモラタは大体派手に倒れてファールをもらおうとする。審判に好かれていないのでファールをもらえないことが多いのは周知の通りである。理想は胸トラップしてカラスコとルマルのサポートを待つことだが別にそこまで期待しなくてもいい。仮に相手DFに触られたとしても跳ね返ったところにアトレティコの選手がいる可能性は割と高く、前向きにボールを拾えるのでそれならそれでいい。ポストプレーなんてそんなもん。空中戦勝率なんてそんなもん。

最後の選択肢は右CBアスピリクエタorGKオブラクを使って逆サイドのWBまで逃げる形だがこれはリスクが高いのであまりやらない。オブラクが2タッチする必要が出てくるのもあまり現実的ではない。

ちなみに、じゃあグラナダ戦の失点シーンは何人再奪回に来てたの?となる。ので図解する。

グラナダ戦失点シーン

正解は4人。ボール奪取直後カラスコの体勢が後ろ向きだったこともあり、アトレティコはソユンジュ、デ・パウル、バリオスが相手DFの篭の内側に入ってしまいパスを受けられる環境ではなかったことがカラスコにドリブルを選ばせてしまった。ソユンジュがウズニの前に出てきた選択も間違いではない。ちなみにカラスコがカジェホンのマークを外した瞬間に外へ逃げたバリオスの選択は100点。もしビジャールの対応が悪ければ一気にカウンターに出られる好判断であった。グンバウがここまで寄せてきたのは得点が欲しいグラナダの焦りもあっただろうし、アトレティコからすると相手MFの配置が変わったばかりで手探りであったことなど、色んなタイミングが悪いプレーであった。とはいえおれは全てひっくるめてカラスコのチョンボと言っていいと思っている。プレス回避とはそういうもの。


●ロングボール対応

ベティスの話に戻る。もう一つ、ベティスといえばロングボール一発で背後を取る攻撃に特徴がある。グアルダードやギド・ロドリゲスが特に上手いが、2CB+2CHで協力してプレッシャーから解放された前向きを作って精度の高いロングボールを送り込む。

本来はこのボールの受け手になるのはファンミが抜群に上手く、曲芸的1stタッチで一発で背後を取ってくる。アヨセ・ペレスにあまりこのイメージはないので大外に蹴ってくるか、エンヒッキが斜めにゴール前を目指すか、みたいなパターンはあるかも。開幕戦ではあまりなかったな。プレシーズンのセビージャ戦でロングボール対応のチョンボがあったサヴィッチは汚名返上の機会があるかも。


●保持

ではアトレティコの保持についても少しだけ。

ベティスの非保持配置はイスコがトップと並列になる4-4-2。このチームの守備でありがちなのが大外のマークをSHとSBで受け渡すこと。アトレティコは普段通りエルモソ側から進む

こうなった時のエンヒッキの判断が軸となる。この場合の正しい判断とは何なんだろう。何らかの判断基準を準備してくるはずなのでそれをルマルとバリオスあたりが確認していく序盤になるだろう。
エルモソはカラスコ、ルマルへの2つの選択肢を持ち、ルマルの対応にギド・ロドリゲスが寄ってくればその向こうのグリーズマンが、の形は容易に想像できる。ペジェグリーニはこういう一つ一つの事象にはあまり個別の対応をしないイメージ。だからこそ最後に跳ね返すCBの強度が求められ、それが心許なかったのが先季。メンバーは変わっていないが改善はあるのだろうか
アトレティコはグラナダ戦同様、空いたエリアを探しながらじっくり保持していく形が予想される。たぶん押し込んだ状態でジョレンテ&デ・パウルで対応に困ったヴィニシウスの背中を取ってマイナスのクロス、みたいな結末になりそう。リケルメは得意な仕事があるかもね。


●まとめ

ベティスは開幕戦、ビジャレアルにも勝っているように引き続き能力値の高いチームであるが、弱点を挙げるとすればスイッチを入れるような選手交代の選択肢がないこと。FWはボルハ・イグレシアスとウィリアン・ジョゼを単純に入れ替える選択肢しかなく(ジョゼをトップ下で使う形もある)、ファンミとフェキルがいないので前線の選択肢はロドリとフアン・クルスくらいなもの。あとは右サイドにルイバルを置くくらい。ウィリアム・カルバーリョのいるいないで判断は変わるだろうが、終盤にラッシュをかけるような選択肢はグラナダよりも少ない。ビジャレアル戦もバランス調整したらなんか大外空いてジョゼの頭に合わせて決勝点取れちゃいましたみたいな結末は、おそらくベティスも狙ってはいなかった。アトレティコとすれば前半のうちの先制点で得意な逃げ切りの展開に持ち込みたい。そして終盤ラッシュの形を持っているのはアトレティコの方。0-0のまま進んでも焦れることなく、90分かけた切り崩しを期待する。

以上、今季最初のアウェーゲーム。まずは連勝スタートといきましょう。


8/20
ベニート・ビジャマリン
ベティスvsアトレティコ

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