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守りは堅いと自分に言い聞かせ 11節 アトレティコvsベティス(A) 2022.10.23

勝ち点20で並ぶラリーガ4位5位の対戦。
前回対戦はこちら

当時は怪我人がとんでもなく多かったベティス。そして試合中にもお互い怪我人続出の試合。この日ゴールを決めたおれのクリスティアン・テージョはアメリカでキエッリーニ、ベイルとチームメイトになったそうです。頑張ってください応援してます。ところで新旧エースは共に輝いてないですね。

ベティスのやっているサッカーは先季と大きくは変わらず、引き続きボールを保持してダイナミックに攻撃していくチーム。突き詰めている最中。ボルハ・イグレシアスの覚醒もあり、点が取れるチームだ。対人が絶妙に甘い最終ラインにラツィオからルイス・フェリペを加えたが、おれが見たセルタ戦ではラーセンに背後を取られて退場していたが大丈夫だろうか。はやく最適なコンビを見つけて安心したいところだろう。

今日は残念ながらファンミが怪我で欠場。そしてカナレスが前節カディス戦のロスタイムに抗議かなにかで退場していて欠場。フェキルはようやく戻ってきたがベンチスタート。2列目のスタメンが誰もいないメンバーになってしまった。

ちなみにベティスはもうELの決勝トーナメント進出を決めている。おめでとう。


●スタメン
・アトレティコ

オブラク
モリーナ / サヴィッチ / ヒメネス / ヘイニウド
ヴィツェル / コンドグビア / サウル
グリーズマン / コレア / モラタ

オブラクが復帰。中盤左右をデ・パウル&ルマル→サウル&コレアに変えただけ。
フェリペは久しぶりにベンチ入りメンバーに復帰。全体練習に合流したという話のあったレギロンはまだ登録されていない。

・ベティス
ルイ・シルバ
サバリ / ペッセッラ / ルイス・フェリペ / アレックス・モレノ
グアルダード / ギド・ロドリゲス / カルバーリョ / ロドリ
ルイス・エンリケ / ボルハ・イグレシアス

フェキルは復帰したがベンチスタートになる。2列目は右にルイス・エンリケ、左にロドリ、真ん中はカルバーリョでスタートする。





●前半
アトレティコの守備の考え方は最近の試合を継続。
サイドで数的優位を作らせないようにしましょう、そのための中盤スライド。
真ん中では前を向かせないようにしましょう、そのための前向きの守備。
この2点を徹底。特にこの日は、相手がボールを保持出来るベティスだった事もあり、攻撃は二の次。ハーフコートの守備ブロックを形成する事をまず優先。

ベティスは両CBから配球してくる。
※20分にルイス・フェリペが負傷でビクトル・ルイスに交代

配置上、CH(この日は主にグアルダードだが、ギド・ロドリゲスも同様)と両SBが逃げ道を作る動きをサボらないので、CBからボールを奪取するのは難しい。けっこう大ポカをするタイプのCBが多いチームなので、ずっとやってればたまにポロッとミスするかもしれないが、基本的には保持が安定しているチーム。

アトレティコは中盤の真ん中に立つ相手を捕まえる。4-4-2というか4-5-1というか、4-3-2-1風というか。グリーズマンがギド・ロドリゲスを捕まえたり中盤ラインに収まったり。そもそもこの日のベティスのスタメンが予想出来ていたのか不明だが、ベティスの2CHは片方がCB脇に降りてもう一人がど真ん中にポジションする。普段からこうだったか、あまり自信がない。カルバーリョがCHの時はちょっと違う気がする。
まずはグリーズマンがこのど真ん中に立つ選手(主にギド・ロドリゲス)を捕まえる。ここからの配球、サイドチェンジはさせない。モラタは両CBの方向制限を担当。ベティスはグアルダードが左側に落ちてフリーでボールをもらう形が基本となる。

アトレティコは、このグアルダードの位置にコレアが出ていく。中盤は3枚でスライド。この3枚は、やや低めに設定してライン間にボールを刺されないように構えた。後ろ向きの守備にならないようにしましょうね、という設定。
ベティスの左サイドはグアルダードの前方にアレックス・モレノ、ロドリがポジションしている。アトレティコはヴィツェルが少し釣り出されるような配置にならざるを得ないのであまり使われたくないと思っていたが、ここに縦パスが入ってこない。何故だろう。
逆に右サイドはサバリ、エンリケとダイナミックな選手が並ぶ。アトレティコ的にはエンリケはヘイニウドの対応範囲なので、まあやられる事はないでしょうという感じでやや雑に放置。ライン間でボールを引き出すような選手でもなく、彼が脅威になるのは左からのクロスにファーで待っている時くらい。カウンターも警戒出来ていた。

グアルダードは縦パスを狙わないので、展開は右大外で待つサバリへのロングフィード

5回くらい見たボール。オープンスペースが開けているが、アトレティコはここの対応をサウルが担当する。この1vs1で後手になるとズルズルと押し込まれそうだが、ほぼ100点満点の対応で止めた。中盤3CHとしてスライドに参加し、サバリにボールが出てきたら対人で止める、というカラスコではなくサウルだった理由をプレーで表現した事は高く評価したい。前半のベティスに決定機を作らせなかったのはサウルの仕事による部分が大きかったと言える。

ハーフウェーライン付近までじわじわ進まれるとグリーズマンは中盤ラインを補強する。

グリーズマンが中盤ラインに入る事でCH3枚のスライド幅を短くしてあげる。この前半はあまりなかったが縦パスを刺せるコースを減らす効果も
コレアが前に出ている分ヴィツェルが大外へ出張する準備が必要で、そのためのサポートでもあった。

あとはベティスの前線2人。ボルハ・イグレシアスはそもそも、体格の割にはDFを背負ってボールを引き出してどうこう、というタイプのFWではない。もっと背後へのボールとか、狭いエリアのフリックとかそういう仕事が上手い。相手を背負う仕事は、このチームは普段フェキルがやっている。この日はトップ下にカルバーリョが入っている構成上、ボルハ・イグレシアスはサイドに流れてボールを引き出す動きも制限し、なるべく真ん中にいる事に拘っていたように見えたがサヴィッチ&ヒメネス相手にはさすがに優位を作れず、前半はノーインパクト。カルバーリョも、直前に決まったトップ下起用だったのかなという感じで、効果的な関わり方は限定的だった。

カルバーリョが左側に降りてきてボールを引き出すシーンが何度かあったが、ちょっと後ろに重い。アレックス・モレノorロドリがボールを引き出してカルバーリョがトライアングルを作りにいくような形を使われると怖かったが、あんまりやらなかった。

・シュートゼロのアトレティコ
一方でアトレティコの攻撃はこちらもかなり限定的。可能性のあった攻撃はグリーズマンとコレアにモリーナが関わる右サイドのみ。ここにヴィツェルから良い配球が出るとどうにかラストサードへ、という様子。ゴール前にモラタとサウルが入ってくる形。前半はシュートゼロに終わっている。

前進のルート

ただ、とりあえずプレス回避は安定したなという印象。ベティスの前線の守備強度が高かったわけではないが、とりあえず。
サウルは得意のFWポジションまで移動していくタスク。コレアも高い位置を取りに行くのでグリーズマンが自由に中盤へ落ちる。ここで右サイドのトライアングルを使って侵入を狙う。モラタの関わりなどは本記事終盤でまとめる。


●前半終了
0-0で前半終了。
まずはベティスに、"このままじゃ点は取れないですよ"を突きつけた45分となった。ここで"じゃあ引き分けでいいです"という相手だと話は変わってくるが、ホームのベティスは3ポイントを求めてくるはずで、そういう相手はシメオネ的にも与しやすいと思われる。
なんとなくこういうチーム相手だとどうにか1点取って勝てるイメージがあり、逆にベティスはこういう試合で勝ち切れないイメージがある。そんなこんなで、後半戦。


●後半
ややペースが上がった後半。先制点はアトレティコに入る。アトレティコ側にペースを上げられる要素があまりなかったのでおそらくベティスがトランジションを望んだものと思われる。試行回数と局面のスピード。
そんなこんなで、この試合ポイントになっていたサウルがサバリを引っ掛けて速攻。色々あって何度かCKを得て、グリーズマンが直接ゴールに放り込んだ。

ベティスはカルバーリョが低い位置で関わるようになってボールの循環が良くなったりと狙いは見られたが、その結果ロスト位置が低くなるリスクも負っていた。少し難しい時間帯だったと思われる。ネガトラの間延びも少し気になった。アトレティコからすると前進出来ない前半と比べると楽に敵陣に入れた。流れが向いたのはアトレティコの方。

2点目もグリーズマン。リスタートでふわっとライン間を空けてしまったベティス。グリーズマン、コレア、モリーナのユニットにクーニャが絡んで崩し切った。ちょっと隙があったかな。この時のクーニャの関わりも、モラタと一緒に終盤にまとめる。


・フェキルの投入で空気が変わる
展開が変わったのは75分、復帰戦となったフェキルの投入だった。やはり圧倒的な能力。ラリーガ有数の技術で試合を変える。
このフェキルにホアキンとカルバーリョが関わる事で、ベティスは簡単に侵入し始める。ボルハ・イグレシアスが欲しいのはこういうパスだよと教えるかのように、何本も簡単にPA内にパスを通す。

簡単に通る。アレックス・モレノからシュート性の強烈なくさび。サヴィッチのハードな寄せも問題にしない。あれだけ後ろ向きの守備をさせられないように、と言っていたのにたった一人の選手にチーム全体が後ろを向かされる。サッカーって面白いよなあ。
フェキルにボールが入るところをスイッチに全体がアトレティコゴールに迫る。と同時に、アトレティコはグリーズマンがベンチに下がっており、逆にこちらのスイッチが無くなった。押し込まれる展開こそ必要だったポジトラの逃げ道をチームで共有出来なくなり、プレスを回避出来ず中盤で変な失い方をする。これでゴール正面でFKを与え、フェキルが決めた。
CLもあるのでグリーズマンとコレアを90分引っ張れとはもちろん言わないし、想定された苦しみだったかもしれないが、かなり隙を見せた。ロスタイムには右サイドからの放り込みにアレックス・モレノがフリーで合わせてクロスバー直撃。ひやっとした。


ここに、今のアトレティコのベンチメンバーの難しさが見える。このシステムではグリーズマンとコレアがファーストチョイスになるのは誰が見ても明白で、ゴールという結果を出しているのもこの2人だ。その中で途中出場のフェリックスとクーニャは今季無得点で、カラスコはポジションそのものがピッチから消えている。彼らがチームよりも自分の事を考えてプレーしているのは当然の事であり、決して悪い事ではないとおれは思う。彼らはゴールを目指すべきだ。ただ、全員同時にピッチに置くと機能するのは難しい。でもCLを考えたらグリーズマン、コレアを休ませたい。状況的にも、スケジュール的にも、怪我人的にも、クローズを優先した選手交代をするのが難しい試合であった。この試合の苦しみは当然生まれる苦しみであって、今のアトレティコなのだと思う。
その意味で、最後に守備強度、落ち着き、そしてフェリックスに得点機をプレゼントする思いやりのあるデ・パウルを投入したのは的確だった。そしてダメ押しのゴールを決めきれないのも、このユニットの現状であろう。いくつもの側面を見せた試合は風呂敷を開きっぱなしのまま、タイムアップとなった。


●試合結果
バタついたが、なんとか勝利。
アトレティコの先制点は、直接CKという意外な形だったが、まずセットプレーで。今季まったく得点の匂いがしなかったセットプレーで取れたのは良かった。この調子でCLもセットプレーで簡単に先制点を取ってほしい。

ベンチ事情で選手交代の選択肢が少なかったベティスは、押し込みに苦労した。結局試合展開を変えるのは75分、怪我明けのフェキルを投入するところまで待つ必要があった。彼が縦パスを引き出し始めると全体がどんどんスピードを上げてゴール方向に向かっていく迫力のある攻撃が出来た。そのフェキルが直接FKを決め、ロスタイムには人数をかけた放り込みからクロスバー直撃の決定機も作っている。つくづく2失点目が余計になってしまったが、出来る事はやった試合だっただろう。

アトレティコからすると、フェキルやカナレスがスタメン出場出来る試合だったらこの日の守備は通用しただろうか、という疑念は残る。
前向きに守備が出来る4-4-2、と何度か書いたが、フェキルの存在で中盤が後ろを向かされると一気に押し込まれてピンチを招いた。前線からの限定が悪かったのか、中盤にコケがいて縦パスを制限する事が出来れば違っていたのか。この日のフェキル投入以降の時間帯は今後へ向けてのサンプルになる。

終盤に失点した事は前節ラージョ戦と同じ。ただこの日は、2点目が取れていた。攻勢に出た時間帯に決定的な2点目を取れた事が勝敗を分ける事となった。そのゴールを生んだグリーズマン、コレア、クーニャはこのシステムで重要な役割を担う事になるだろう。

疑問点を残しつつも、まずは堅く守るという箇所に納得感を作ってきたここ一ヶ月。辿り着いた4-4-2が、CLグループステージ突破への基軸となる。あとはレヴァークーゼンからどうやって点を取るか。直接CKはそう何度も決まらない。シーズンの行先を左右する試合が迫る。ワクワクしていきましょう。

ちなみにあえて触れなかった後半開始早々のヘイニウドのチョンボは「気にするな」とだけ言っておく。絶対気にしてないが


10/23
べニート・ビジャマリン
ベティス 1-2 アトレティコ
【ベティス】'84 フェキル
【アトレティコ】'54 '71 グリーズマン


●ピックアッププレー〜モラタかクーニャか〜
プレー、ではないがモラタとクーニャどっちがいいでしょう、の話。
前節ラージョ戦同様、インパクトなしに終わったモラタ。一方でチーム2点目に効果的に関与してアシストを記録したクーニャ。

まず、今のアトレティコの4-4-2での攻撃において、ストライカーは割と孤立する。グリーズマンとコレアがコンビネーションを使うために近づくので、必然的にもう一人のFWは周囲と距離が出来る。
例えばこの試合で顕著だったのは、右サイドでグリーズマン、コレア、モリーナの3人がトライアングルを作った時の挙動。これをサンプルに2人の違いを見ていこう。

モラタは基本的にファーサイドでボールを待つ。それがストライカーの仕事だと言わんばかりに、ファーで待つ。

モラタのポジショニング

そのため、相手チームのボールに近い方のCB(ビクトル・ルイス)はマーク対象を持たず、カバーポジションを取って陣取っている。右サイドのトライアングルは内側への侵入を目指す事があまり出来ない。
一方でクーニャはニアへ、というかボールへ近づく。パスくださいと。

クーニャのポジショニング

ビクトル・ルイスは背後からマーク対象が現れ、位置取りの基準がブレる。それによりコレアとモリーナの選択肢が増える。相手の背後を取りに行く可能性が広がる。
ここで一度クーニャにボールを当てて侵入していく、というパターンが作られていく。これがゴールに繋がったのがこの日の2点目。

どちらが優れているという話ではないが、今のメンバーと侵入パターンにフィットするのはクーニャのプレーだ。まず、ファーサイドで待っているモラタが点を取った場面があまり記憶にない。というか全くない。彼の得点パターンは裏抜けか速いクロスかこぼれ球かのどれか。狭いコースを抜くシュートの上手さで点を取るタイプで、ドンと構えるストライカーではない。それなら、グリーズマンとコレアによる崩しのパターンにバリエーションをもたらすクーニャのプレーの方が期待値は高い。

アトレティコのFWは、前線の守備タスクがあまり明確に指示されておらず、個々人のセンスに任せている部分が大きい。大きすぎる。なんとかしてほしい。結果的に、献身的でタイミングも抜群に良いグリーズマンとコレアの良さが目立つ。クーニャは、とりあえずボール保持者に全速力で突っ込んでいけばいいと思っている節があり、結果として自分の後方に空けたスペースを頻繁に使われている。けっこう勘弁してほしい。ここの改善と、アバウトなロングボールをマイボールにする仕事が出来ればスタメンでも面白そうだ。あとはとりあえず1点取ってほしい。終盤追い上げられている時間帯に無得点コンビが前線にいるのはけっこうハラハラする


●ピックアップ選手
グリーズマン
突破口のない展開を直接CKでガラッと変えた。2点目はグリーズマンらしいユニットでの崩し。文句なし

コレア
プレス回避とゴール前の崩しどちらの局面でもグリーズマンをサポートしながら自らも脅威になった。毎季の事ながら自身の能力でスタメンを手繰り寄せていく。

ヴィツェル
距離感やタイミングが周囲と合ってきた感覚がある。特にプレス回避で大きな信頼を受けて前進をサポートした。ストレスのかかる中盤の攻防も引かなかった。

サウル
前半からサバリと広いエリアでの1vs1が多くなったがほぼ封殺。セカンドボールの拾い役としても機能した。タックル成功11回。出来る事を一つ一つ積み重ねる彼らしさが出た。危険なスライディングもいつも通り。

モリーナ
ベティスのビルドアップも崩しも左サイドに偏る中、攻撃でもグリーズマン&コレアの外側を駆け上がらないといけないタスク過多。オールラウンドな能力を発揮して勝利を手繰り寄せた。

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