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理路整然と攻め立てる 8節 アトレティコvsカディス(H) 2023.10.1

連戦が続く。今季初の連勝中のアトレティコはカディスとホームゲーム。前回対戦。

カディスはグリーズマン対策(たぶん)の4-1-4-1が全くハマらずアトレティコの圧勝。あまり参考にならなそう。
先季はスコアレスの5連敗からシーズンが始まったカディスだが今季はすでに2勝。7節終了時点で勝ち点9は先季の4を大きく上回る。先季は7試合で1ゴールだったが今季は6点取ってる。1ゴールて。

前節はホームでラージョと0-0。カディスとラージョが試合するといつも見どころの少ない揉め事多めの試合をしてる気がするんですけどね。気のせいですかね。
攻撃のリソースはかなりルイス・エルナンデスのロングスローにかけている。別にロングスローは好きでも嫌いでもないが、相手CBに跳ね返され続けるとCHが攻撃に参加する機会がなくなる弊害がありそうな気がするがどうなんでしょう。10回くらい投げてたし。



●スタメン

・アトレティコ
オブラク
アスピリクエタ / ヴィツェル / エルモソ
モリーナ / ジョレンテ / コケ / サウル / リケルメ
グリーズマン / コレア

アスピリクエタは5節バレンシア戦以来のスタメン。なお、CBでのスタメンは開幕戦のグラナダ戦以来。ヒメネスはお休み。
左WBはリケルメ。リーノが結果を出しているので彼も続きたい。モラタの出場停止で人がいないFWにはコレアが間に合った。
人が少ない環境だがGKグルビッチまで体調不良で離脱とのこと。デ・パウルがベンチに戻ってきた。

・カディス
レデスマ
サルドゥア / メレ / ファリ / ハビ・エルナンデス
ソブリーノ / アルカラス / クアメ / ピレス
クリス・ラモス / ロジェール・マルティ

CBはロングスローマンのルイス・エルナンデスではなくメレ。怪我した様子。右SBはサルドゥアが今季初出場。プレシーズンに出ていたかなどはわからないが、先季10節ベティス戦での膝の靱帯断裂から約1年ぶりの公式戦復帰戦となる。おめでとう。
中盤はフランスのトロワから新加入のクアメが初スタメン。




●前半

序盤に複数回チャンスを作ったアトレティコ。
3分、アスピリクエタの運びからグリーズマンを経由してジョレンテがサイド突破。最後はコレアのフリックでグリーズマンに決定機。惜しくもポスト。4分にも最終ライン手前でボールを受けたグリーズマンが今度は自分で中央突破して決定機。アスピリクエタの運びとグリーズマンのボールの受け方を、わかっているはずだが止められていないカディス。

この日のカディスは4-4-2というよりは左右の大外対応を念頭に置いた配置。5バックというよりはダブルランデヴーなのかなと。右SBサルドゥアがリケルメに、左SHピレスがモリーナに攻守ランデヴーする。
前方はアトレティコの3CBにロジェール・マルティとクリス・ラモスの2トップで対応。ソブリーノがコケ番をやる形に。

この形では抑えるのが難しく、上記のアトレティコの2つのチャンスに繋がったのは
・左右CBの持ち出し
・グリーズマンの捕まえ方
の2点。

アトレティコは「コケを抑えられるならアスピリクエタが持ち運びます。」を実施

簡単に持ち出した。ドリブルでアスピリクエタがずんずん進んでくる間に、対応するアルカラスの背中で動くグリーズマンを捕まえることができず、アスピリクエタ→グリーズマンのパスでスピードアップして決定機を作ったのは必然だった。この時ファリはコレア、ハビ・エルナンデスはジョレンテの対応をしていてグリーズマンが浮くのは構造の穴。クアメはもうカバーエリアが広すぎて頭を抱えている。
そしてアスピリクエタと同じように配球の時間を得たのはエルモソも同様。

ここ数戦は警戒されていたこともありビルドアップに参加できなかったエルモソもこの日は十分すぎるスペースを得て配球できる環境だった。良いロングボールも出てきた。アトレティコは決定機をいくつも作りながらも、得点が入らなかったこともまた事実。
そして先制したのはカディス。サッカーとはよくできている。12分、GKレデスマからのロングボールをヴィツェルが回収。コケからサウルにパスを出したところで再奪回されてクリス・ラモスのクロスに大外でルーカス・ピレスが合わせた。リケルメがアフターチャージを受けていてファール疑惑があったが。とはいえ止まるなよあんなプレーで。
27分に2点目。ゴールキックにアスピリクエタが被って、ロジェール・マルティが抜け出しループシュート。見事だったがアトレティコは淡白な対応。押し込まれることなく0-2とされてしまった。

2失点とも試合の流れと無関係に生まれたゴールで、これで慌ててしまうのか、自分達の狙いを繰り返すのかが問われる面白い展開となった。難しい展開だったが、アトレティコは前半のうちに1点を返す。要因となったのはコケの配球であり、コケから配球する形に変わったのはまた、カディスの配置であった。

カディスは先制点以降から非保持配置を5-2-3(5-4-1)に変える。リードしておきながら形を変えたのは、カディスもまた、先制点は試合の流れと無関係である自覚を持てていたからであり、これも面白いポイント。
カディスはさすがにアスピリクエタにボールを持ち運ばれすぎてこれじゃ試合にならんという判断だったと思われる。ソブリーノがアスピリクエタ付近、クリス・ラモスがエルモソ付近の対応をし、ロジェール・マルティがコケ&ヴィツェルを見るように変えた。主題とはズレるが最初からクリス・ラモスがエルモソと駆けっこするロングボールを狙うものだと思っていたんだが、結局一本だけかな、出てきたのは。

これでカディスはアトレティコのビルド隊4人の前進を3人で見張るようになり、アトレティコは前進にもう一人欲しくなる。その一人役をWBがやるのか、サウル&グリーズマンが経由地点となるのか、を探っている間に2点目を取られた格好。そう考えるとカディスベンチはめちゃくちゃ嬉しかっただろう。アトレティコは"どうやって同点にするか"を思案している中でゴールキックからやられた失点で、看過できない失点。でも忘れたい失点。

そしてアトレティコは32分にようやく一点を返す。コケからの配球が回答を得た。

アスピリクエタとヴィツェルのサポートを受けながら前向き。正確なスルーパスをコレアに配球した。最初のシュートはGKレデスマが止めたが、アスピリクエタ得意のハーフスペースからのアーリークロスにもう一度コレアがピンポイントで合わせてゲット。この前半コレアは相手DFとの駆け引きが完璧だった。見事に仕留めてみせた。
まあカディス側の3CBが急造だなという感じはあり、ハビ・エルナンデスがあまりにもジョレンテに引っ張られすぎていてCB間がガラガラだったなどのエクスキューズはある。アトレティコや2季前のエルチェも通った道である。これは5バックというよりもピレスはモリーナのポジショニングによって配置が決まるという曖昧さに原因があり、彼が全然最終ラインにいないことでハビ・エルナンデス自身がSBなんだか左CBなんだかわからなくなってしまう現象が起きていた。過去にアトレティコがヘイニウドの気合いで解決し続けてきた箇所である。

このゴール後にファリの太腿アクシデントでエンバイェを投入している。ファリは今季ここまで全試合でフル出場中。欧州のないカディスにとっても厳しいカレンダーである。


●前半終了

1-2で折り返し。サッカーは全てに意味があって、何もかもが繋がっていると実感する45分だった。

まずカディスの序盤の配置。アトレティコの右CBは引き続き誰が起用されるのかいまいちわからず、この日はサヴィッチがベンチ外だったのでヴィツェルorアスピリクエタと予測はできた。カディスとしては前節オサスナ戦でフリーでボールを持たされたが良い配球ができなかったヴィツェルの起用を予想していたか、期待していたか。コケを自由にしない方向性を選んだが、結果的にはアスピリクエタにドリブルで運ばれ続けた。
しかし先制点はカディスに入る。明らかにアトレティコのペースだったが、流れと無関係に得点は生まれた。
そしてこの得点後、カディスのセルヒオ・ゴンザレス監督は潔く非保持配置を変える。先制したし、中央のヴィツェルに圧力が掛からずとも左右のCBを警戒できる形の方がメリットがある、という判断を早めにできたのは素晴らしい決断である。さすがの変更の早さ。
アトレティコはここからコケ&ヴィツェルで前進のパターンを探る。サウルが参加したりグリーズマンがもう一列降りてきたり、という工夫を見せる中で、カディスの2点目が生まれてしまった。ゴールキックから一発で決めてしまったので狙ったも何もないが、面白いものである。ここからカディスは60分に渡るクローズ作業に着手することとなる。
しかし、アトレティコは愚直にコケが前を向く形を探し、32分にコレアへスルーパスを通すことで回答を得た。これがこの試合でカディスから点を取る正しい形である。これを前半のうちに示せたことは、2失点とは全く無関係にアトレティコの強さであり、後半への可能性だった。

カディスとしてはまだ1点のリードがあるものの、中央を抑えれば左右から持ち出され、左右CBを警戒すればコケから決定的な配球をされるという2本のナイフを喉元に突き付けられた45分である。残り45分、いかに守るのか。リードしているとはいえ決して簡単ではない決断を迫られる格好になった。


●後半

カディスは2人交代。4-4-2ブロックに変えるかなと思ったが配置は継続する。
ロジェール・マルティとアルカラスを下げてアレホとエスカランテを入れた。アルカラスってこういう展開で替えられちゃう選手なんだな。そして開始46秒で同点ゴールが生まれる。

カディスの配置を再度整理するが、両SHのアレホ&ソブリーノはアトレティコのHVエルモソ&アスピリクエタを監視する。そのためワントップのクリス・ラモスはヴィツェル&コケに対応する。
後半開始からアトレティコが行った工夫は2つ。コケがヴィツェルと並列に立ってフリーになることと、サウルの列落ちでポイントを増やすこと。
サウルは当初5レーン埋めの左ハーフスペースを担当しグリーズマンを自由にすることを優先していたが、後半開始から徐々に中盤へ降りて前進をサポートするようになる。これでアレホのマークを困らせてエルモソがフリーになるか、そうならずともリケルメへのパスコースを開けることが出来れば良い。サウルの凄いところはボールが前進すると平然と左ハーフスペースへポジションを戻すこと。タスク理解と体力が共存している。

さて得点シーンは、コケがヴィツェルと並列になって配球先を探したところで、後半から出てきたエスカランテがコケのところまで出てきてしまった。試合に入ったばかり、普段と違うシステムで違和感があったのか、コケの配球を止める必要がある、という断片的な指示が頭に入っていたか。

同点シーン

これでモリーナからコレアへのクリーンなパスルートが空き、一気に侵入。ジョレンテの突進はレデスマが止めたがモリーナのシュートが決まった。いきなり同点。カディスとしてはハーフタイムに準備していたであろう勝ち逃げへの手順を確認することも出来ない間に、というかボールに触ることも出来ない間に同点にされてしまった。

その後もグリーズマン、コレアに決定機があり、61分にリーノ、ヒメネス、復帰のデ・パウルを入れて3点目を狙う。outはリケルメと休養目的のコケ、そしてジョレンテとなった。同時にカディスは復帰のサルドゥア→イサを替えた。まずは無事に60分プレーできた。よかった。

ここから、カディス側の考えとしては当然3点目を取りに行くよりも2-2で終える方が可能性が高く、そちらを目指すことになっていく。しかし66分、右サイド後方のプレス回避でグリーズマンの頭を使ってモリーナが突破。逆サイドでリーノとサウルが絡んで最後はコレアがこの日2発目。試合をひっくり返してみせた。

残り20分、カディスはメレを下げてFWマキシ・ゴメスを入れる。突如追いかける側になってしまった。4-4-2に変える。アトレティコはハビ・ガランを入れて5-4-1でクローズへ。

最終型

リーノが後ろ、ガランが前なの面白かった。リードした後もコレア、グリーズマン、リーノに決定機が来たが3-2のまま試合終了。3連勝となった。


●試合結果

勝った。この試合の感想を、良かった点を中心に。

セルヒオ・ゴンザレスは前回対戦でも普段と違うことにチャレンジした。あの時は4-1-4-1でグリーズマンを警戒する形だったが、今回は両WBにマンツーマンをつける対応で試合に入る。そうなれば当然アトレティコのビルド隊に圧力が掛からなくなり、配球が容易になる。まずはHVがドリブルで持ち上がれることから、アスピリクエタが起点となりチャンスを複数作った。HVが自由になればグリーズマンが自由になる、という流れを生んだのはIH(ジョレンテ&サウル)の流動的なポジショニングも大きかった。アルカラス、ハビ・エルナンデス周辺でジョレンテを誰が捕まえるのかが曖昧になったのはカディス側のミス。
途中からカディスの配置が変わり、HVの前進を止める。ここでヴィツェル&コケから急所を突く配球を狙い始めたのはこの試合のキーとなった。得点には直結しなかったが、後半途中からヒメネスが入ることで一気にWBまで正確なロングボールを届けるパターンを得たのも良かった。ソユンジュはこういうボールは蹴れるのかな。

アトレティコは相手の配置を見ながら、誰がビルドアップに参加し誰が相手最終ラインと勝負するのかを見極めて攻撃を続けた。その中でサウルが両方の役割を担当できる強みも色濃く出ており、ポジション争いで差別化するポイントになる可能性がある。右IHでジョレンテは最終ラインと勝負、デ・パウルはビルドアップ参加と完全分業していたのとは大きく異なった。サウルは最近よく完全復活という文言を見るが彼は先季のパフォーマンスも特に現状と大きな違いはなかった。今季は得点に直結するプレーが出来ているのが良い点で、細部の質は間違いなく上がっているだろう。

他の試合でもサッカーはそういう場合が多いが、この日アトレティコが3点取った事と先に2点取られた事にあまり相互関係はない。2失点はどちらも偶発的で、それによりアトレティコの振舞いが変わったわけでもない。カディスの選手達の精神状態に変化はあったかもしれないが。それもサッカーの一面である。この試合を評価する時に0-2からの逆転という話に終わるのではなく、あくまでも相手の配置を見ながら70分付近まで圧倒的にゲームを支配し、3得点に繋げたという評価をしたい。何度やってもアトレティコが勝ちそうという意味で今季ここまでのベストゲームだった。

カディス側で気の毒だったのは、前半途中にファリが負傷交代した時にルイス・エルナンデス、チュストが離脱中のため今季まだ出場のないエンバイェしか選択肢がなかった事。球際の判断やボールの処理に試合勘の無さが見え見えで、しかもこの日は急造の3CB。可哀想な結果になった。案外最終ラインの選手層が薄いことに気づいてしまったが、誰が救世主になるか。

アトレティコは3連勝でCLフェイエノールト戦に向かう。過密日程に加えて怪我人続出だが、各選手の特徴も出揃ってきた様子。フェイエノールト、ソシエダまで勝って代表ウィークを迎えたい。


10/1
シビタス・メトロポリターノ
アトレティコ 3-2 カディス
得点者
【アトレティコ】'32 ’66 コレア ’46 モリーナ
【カディス】'12 ピレス '27 ロジェール・マルティ


●ピックアップ選手

コレア
まだ足首が完治してないという話だが、モラタの出場停止でFWが足りなくなるタイミングで復帰し圧倒的なパフォーマンス。2得点以外にも最前線で正確にボールを収めて攻撃を活性化させた。スタメンで見たいと言われ続ける男だが、これはさすがに"スタメンで見たい"

アスピリクエタ
前節泣き所となった右CBで前進を先導。得意のアーリークロスでコレアの得点に繋げた。守備対応もパーフェクトでこのポジションで一歩前に出た。

サウル
前線のサポートとビルドアップのサポート両方を担当し、最後は長いランニングでコレアの決勝点をアシストした。心身ともに充実している。

コケ
縦パスのポイントを探しながら決定的なスルーパスを通した。0-2の環境でも冷静にビルドアップをリードし、チーム全体の戦い方を整理したのはさすが。早めの同点ゴールは結果的に自分自身を休ませる事にも繋がっている。

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