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新時代の文化(2020年度弁論大会入賞)

こんにちまでの日本文化の歴史を紐解いていくと、文化の担い手は時代とともに様々に変化してきたということがわかります。

平安時代は公家中心の文化で、かな文字や和歌、日記文学が生まれました。
鎌倉、室町時代では武士が時代の中心となり、流鏑馬や犬追物などの武士特有の文化が栄えました。
江戸時代になり平和な時代が長く続くと、町人が文化の担い手となり、大相撲、歌舞伎、浮世絵などの世俗的な文化がにぎわいを見せました。
近代以降は洋風の文化が浸透していき、大衆文化が生成されていきました。
戦後は、アメリカの近代的な文化を日本的な形に昇華させ、さらに、漫画やアニメなどをはじめとする新しい文化が誕生しました。

それでは、現代の、この令和時代の文化の担い手は一体誰なのでしょうか?

今の時代、誰もが一人一台スマートフォンを持ち歩き、いつでも、どこでも、インターネットを通じて世界中の人々と繋がることができます。
SNSを使えば、簡単に情報を発信したり、収集したりすることができます。

そう、現代を生きる僕たちは、一人ひとりが文化の担い手なのです。
僕は今年、ある出来事によってそれを強く実感しました。
それは、「Swift Student Challenge」という、Appleが開催した学生アプリ開発者向けのコンテストへの出場です。

僕がコンテストに出した作品は、福笑いを楽しむことができる、「Face Make!」というゲームです。
福笑いとは、皆さんご存知、お正月によく遊ばれる日本の伝統的な遊びで、目を閉じたままパーツのない顔の上に目・鼻・口を置いていき、出来上がった滑稽な顔を見て楽しむ、という遊びです。
この福笑いを、ドラック&ドロップの操作で再現しました。

僕がこの福笑いをゲームのテーマにしたのには理由があります。
このコンテストには、「すぐに体験できる英語のコンテンツ」という条件がありました。Appleはグローバルな企業なので、このコンテストの審査員も外国人の方が多いはずです。そこで、外国人の方には日本の伝統的な遊びが新鮮なものとして映るのではないかと考え、直感的に誰でも楽しむことができる福笑いを選びました。

その結果、僕は日本人で唯一、Swift Student Challengeに入選することができたのです。

僕のゲームはなぜAppleにとって魅力的に映ったのでしょうか。
それはやはり、「福笑い」という日本古来の遊びが、外国人の審査員の方々に目新しく映ったからだと思います。
福笑いをゲームという形にして発信することで、文化圏の違う、今まで日本文化と触れたことがないような人々に、その面白さを伝えることができたのです。

このように僕は 自分の得意分野である「アプリ開発」を通じて、外国人という、普段日本文化と関わりがない人々と文化的交流をすることができたのです。
そして、令和時代の文化は、このような個人の発信した文化が集まることで形成されていくと考えます。

過去のインターネットがない時代では、何か自分の持っているものを発信しようとしても、テレビ局や出版社に赴いたり、オーディションに出たりなど、世に出すまでにたくさんの労力がかかりました。しかも、多くの人に受け入れられないと判断されると、そのままお蔵入りになってしまいます。
しかし、インターネット普及した現代、SNSやYouTube、ブログなどを活用すれば、すぐに、簡単に発信することができます。
発信することで、それに共感してくれる人と繋がり、多種多様な新しい文化を形成していくのです。

誰も興味がないと思うようなニッチな分野のものでも、自分の好きだというその分野に対する思いがあるのなら、とりあえず発信してみましょう。
そうすることで、発信しなければ出会えなかったような、その分野に共感する人と繋がることができます。そして、想像も出来なかったような化学反応が起きるかもしれません!

自分の持っているものを世界に発信するということは、小さな新しい文化の芽を生やすということなのです。
インターネットには、その小さな芽を成長させ、花開かせるような無限の可能性があります。
そして、誰も思いつかなかったような、多様性に富んだ面白おかしい令和文化が形成されていくのです。
わくわくしませんか?

僕たち中高生は、この、個人が文化を形成していく令和時代の最初の世代です。
まずは、勇気を持って、自分の持っているものを発信していくべきです。
誰も興味がないと思うようなことでも、自信を持って発信していきましょう。
令和時代の文化の担い手は、私たち一人ひとりなのです。
ご清聴ありがとうございました。

弁士コメント

今回僕が弁じた「新時代の文化」は、聴衆の皆さまに、自分たち一人ひとりが文化の担い手であるということを実感してもらい、新たな文化を創造して欲しいという思いで書き上げました。
僕がAppleのコンテストに入選したことによって実感したこの考え方が、聴衆の皆さまの考え方に影響を与え、新たな文化の創造のきっかけになってくれたら嬉しいです。

今回の弁論大会では、惜しくも入選は叶わず、5位という結果になってしまいました。敗因は明確で、弁論が5分を1秒オーバーしてしまったためです。
弁論大会のルールでは、制限時間を過ぎると1点×審査員の人数分点数が引かれます。今回の弁論大会の審査員の人数は44人なので、44点減点されたことになります。これは、弁論の満点の880点のうち5%にあたります。
しかし、もし僕がしっかり5分以内に弁論を終わらせ、44点の減点がなかったとしても結果は準優勝でした。
制限時間を1秒オーバーして入選できなかったこと、オーバーしていなかったとしても準優勝だったことがとても悔しいです。
もし来年も出場することになったら、今度は優勝を飾りたいです。

最後になりますが、コロナの影響で弁論大会開催が難しい中、YouTubeLiveという方法で開催してくださった弁論担当の先生、審査員の生徒や先生、弁論にフィードバックをくれた親や友達など、本当にありがとうございました。

参考資料

Swift Student Challenge - WWDC20 - Apple Developer

WWDCのSwiftプログラムコンテストに入選 日本人高校生の横顔

WWDCのプログラミングコンテストに入選!楽しく仲間と刺激し合える環境で学ぶ、高校生の杉山丈太郎さんにインタビュー

(高校2年 杉山 丈太郎)

Photo by Kipras Štreimikis on Unsplash

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