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展覧会ができるまで vol.10【ショップ用オリジナルグッズ編】

美術館で展覧会が開催されるまでの工程を、学芸員の立場からひとつひとつ解説していくコーナーです(前回の記事)。

全工程はこちら(↓)をご覧ください。

16. ミュージアムショップ用のオリジナルグッズを作るか検討する

さて、今回はすこし番外編です。必ずしも学芸員の領分ではないからです。

みなさんは展覧会を見た後、ミュージアムショップをのぞいて帰りますか?
買う気があっても無くても、とりあえず冷やかしでも寄っていく人は多いでしょう。

前回、制作工程を紹介した展覧会図録は、このショップで販売されます。
ま、今はオンライン販売に力を入れている美術館も増えてきたので、必ずしも会場に行かなくても購入できたりしますけどね。

もちろんショップに置いてあるのは、展覧会図録だけではありません。
グッズの充実度は、美術館によって異なりますが、ポストカードやクリアファイルなんかは定番ですよね。

さて、このショップですが、ある程度の規模の美術館であれば業務委託契約で運営を外注します。その場合、ミュージアムショップの運営に長けた会社が、グッズの企画から販売まで手がけることになります。
そういったことを専門とする会社って、実は結構多いんですよ。
公立の美術館だと入札でその会社を決めます。
皆さんが「お洒落なショップだなぁ」「オリジナルグッズのセンスがいいなぁ」と感じるのは、大抵この外注パターンです。
販売スタッフも、その会社から派遣されてきます。

最近はミュージアムグッズを紹介する本を書店で見かけます。そういう魅力的なグッズを作っているのは、やはり専門の会社が入っている美術館が多いですね。

で、このパターンだと、多彩なグッズ展開が繰り広げられますが、そこに学芸員が関わることはあまりありません。なかには学芸員がグッズ企画担当者と二人三脚で商品展開するようなところもあるのでしょうが、あまり聞きませんね。

しかし、全部の美術館がショップ運営を外注できるわけではありません。
その場合は、細々と自分たちでできることをやります。

これも見覚えがあると思いますが、ショップといえるほどのコーナーを設けているわけではなく、受付窓口の横のスペースで、ポストカードだけ売っているような美術館ありますよね。入館チケットの販売もグッズの販売も、受付の人が兼ねているパターンです。あれです、あれ。

この場合、どんなグッズを作って販売するかを考えるのは、学芸員しかいません。

ですので、展覧会にあわせて新しいグッズを作るか。
作るなら、ポストカードか一筆箋かクリアファイルか。
他に新しい展開をするのか。
印刷会社に発注したらどれぐらい費用がかかるのか。
見積もりをみて、制作ロットをどれぐらいにするのか。
どの作品をグッズ化するのか。
著作権をクリアする必要があるのか。
デザイナーにグッズのデザインを発注するか。

そんな諸々を検討し、予算と照らし合わせながら、グッズ製作を行います。
図録制作や展覧会準備などが本業なので、どうしてもそこまで注力することはできないというのが正直なところですが、アイデアマンタイプの学芸員だとはりきって面白いグッズを作ることがなきにしもあらず。

まぁ、そんなわけで今回はちょっと番外編でした。

せっかく展覧会を見に来たんだから、図録はちょっと敷居が高いけど、ポストカードぐらいは買いたいって人は多いので、最低限それぐらいは作りたいなとは思っています。


つづく>>

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