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展覧会に関わる仕事は学芸員だけじゃないよ[真の黒子・新聞社文化事業部]

美術に関わる仕事がしたい!

展覧会を企画したい!

だから学芸員になりたい!!

そう考える人がいます。それもいいでしょう。
でも今回は少し目線を変えて、展覧会に関わる職業は学芸員だけじゃないよって話をします。これは、実際にこの世界に入って、いろいろな人と働かないとわからないことだと思うので、ご紹介しようかと。

現在、開催中の話題の展覧会をみてみましょう。
主催・共催に注目です。

「空也上人と六波羅蜜寺」東京国立博物館
主催:東京国立博物館、六波羅蜜寺、朝日新聞社、テレビ朝日、BS朝日

「没後50年 鏑木清方展」東京国立近代美術館
主催:東京国立近代美術館、毎日新聞社、NHK、NHKプロモーション

「ダミアン・ハースト 桜」国立新美術館
主催:国立新美術館、カルティエ現代美術財団
共催:日本経済新聞社

「ミロ展─日本を夢みて」Bunkamuraザ・ミュージアム
主催:Bunkamura、東京新聞、フジテレビジョン

きりが無いので、これぐらいにしましょう。

この規模の展覧会になると、美術館・博物館が独自に行うことはありません。協賛や後援にも様々な企業の名前が連なりますが、まず主催にどこかしら新聞社が入ります。

そこで登場するのが、新聞社の文化事業部です(新聞社によって多少呼び方は変わるかもしれませんが)。

この文化事業部こそ、企画段階からこうした大型展覧会に携わるお仕事です。

文化事業部の担当者のお仕事は、多岐にわたります。

まず、展覧会の企画です。話題になる展覧会、観客動員が見込める展覧会にするにはどういった打ち手が必要か、日頃からアンテナを張っておく必要があります。主要な美術館の学芸員とも情報交換をしなくてはいけません。

トップダウンで、企画が降ってくることも多いです。それを実現するために、奔走するのが文化事業部担当者の仕事です。

こういった大型展覧会は、2年前、3年前から始動します。

会場となる美術館探し、そこの学芸員への協力依頼、巡回展であれば各地方で受け入れてくれるところを探す必要もあります。多くの場合、展覧会の監修をする学芸員を立てて、その学芸員と新聞社の担当者が二人三脚で進めます。

学芸員の方は、展覧会の具体的な企画の考案、出品作品候補の提案、実際の展示作業などを担当しますが、新聞社の担当者の仕事はおおげさに言うと、それ以外のすべてです。

後援、協賛の企業探し。あいさつ回り、お金を集めるのも大事な仕事です。

作品の出品交渉や借用にもすべて帯同します。作品の輸送トラックに同乗することも多いです。

展覧会図録作成のための、作品画像の準備。撮影が必要であればカメラマンの手配。図録に掲載する原稿集め、校正。デザイナーや印刷会社とのやり取り。

展示デザインの担当者の選定、照明や展示設営の業者の手配。

展覧会専用WEBサイトの構築。

広報・マーケティングの検討。プレスリリースの作成。どの媒体に広告を出すかの検討。

内覧会の手配。どんな人を招待するかのリストアップ。

細かく挙げ出すときりが無いですね。言葉を選ばずに言えば、優秀な何でも屋さんです。気配り、目配りが欠かせませんし、学芸員、作家、デザイナー、様々な人をつないで仕事をします。

八面六臂の活躍ぶりをはたで眺めていて、とても自分にはつとまらないな…といつも感心しています。表には名前が出ませんし、真の黒子役ですが、この人がいないと大型展は開催できません。

もし、日本や世界を股にかけて飛び回り、巨匠の名画や話題のアーティストの最新作を集めて話題の展覧会を企画したいのであれば、学芸員ではなく、こうした新聞社の文化事業部に入るという手もありますよ。

学芸員以上に狭き門ですし、希望通りの部署に配属されるとは限りませんけどね。まぁ、そんな道もあるよと知っておいて損はないでしょう。


バックナンバーはここで一覧できます(我ながら結構たくさん書いてるなぁ)。


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