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研究者の生存戦略は、ブログのキーワード選定に近いかも

すいません、今回は誰が読むんだろって内容です。
強いて言えば、大学や大学院に在籍していて、これから文系研究者というけわしき道に向かうことを考えている人向けかな。
まぁ、そうじゃない人にも何かの気づきがあるかもしれませんので、よろしければ。

先に結論を言っておくと、この研究テーマなら自分!と業界で認識されることが大事だよ、そのためには・・・、という話です。

展覧会「琳派の花園 あだち」をみてきた話

Twitterではつぶやいたんですけど、先日ふらっと足立区立郷土博物館へ行ってきたんです。
足立区制90周年というメモリアルを記念して、ちょっと気合いの入った展覧会をやっていたので。
それが「琳派の花園 あだち」展です。ちなみに12月11日まで。

足立区、この展覧会にかなり入れ込んでますよ。
というのは、見たところ共催や後援にメディアが入っている様子もないのに、上記のような展覧会特設サイトをこさえているし、本格的なバーチャルミュージアムも準備しているし、スマホできける無料音声ガイドまでご丁寧に用意されているしで、これは相当足立区が特別予算をつけたものと思われます。
会場も、結構仮設ケースをつくって、本来作品が展示できない場所にも掛け軸や屛風を目一杯展示していました。このケースもかなりお金がかかるんですよ。

会場パネルや展覧会図録でも、足立区長さんが江戸琳派研究の筆頭玉蟲敏子教授と対談している様子がまとめられていて、「足立の琳派」というブランドを大事にしているように見受けられました。

その研究テーマの第一人者になることの重要性

さて、展覧会の内容はここでは本題ではないので割愛しますが、内容の充実したすごく良い展覧会でした。

江戸琳派といえば酒井抱一、鈴木其一というソリッドな美的センスをもった二大トップクリエイターがいるわけですが、その其一の弟子たちがまとまって千住(いまの足立区千住)に住んでいたらしいんですね。だから足立区の旧家の倉には、江戸琳派の流れをくむ屛風や軸がたくさん眠っていた、と。

それが調査の結果わかって、はじめて発表されたのが2011年の「千住の琳派 : 村越其栄・向栄父子の画業」展(足立区立郷土博物館)でした。私、この時のことをよく覚えていて、それまで誰も注目していなかった足立区というエリアから、ぼこぼこ江戸琳派風の作品が見つかった!と業界では話題になったんですよね。

あれから10年以上経って、ふたたび琳派の展覧会が開催されたという形になります。
「千住の琳派」展から後も、さらに作品が発掘されたようで、「そうか、ずっと地道な調査が続けられていたんだなぁ」と感心しました(足立区文化遺産調査という名目で)。地域に根ざした博物館の活動としてお手本とすべきですね。

で、2011年と2022年のふたつの展覧会を並べて思ったのが、呼ばれる人の顔ぶれが変わってないな、ということ。
担当学芸員は変わっているものの、外部有識者として展覧会監修などを依頼されている人を見ると、先ほど挙げた玉蟲教授をはじめとして「千住の琳派」展の時の人たちに再び声がかかった形でした。

当然と言えば当然の話で、ある研究テーマで業界内で成果を出せば、10年単位でその効果が残るんですよね。そんなにボンボンと後から新規の研究者が名乗りを上げてきて、お株を奪われるというのは考えにくい。

ならば、どのあたりを狙うかというのが戦略

ましてや「千住の琳派」なんていうニッチな分野であれば、なおさら新規参入者は現れにくいですよね。

何かに似てるなーと考えていてわかったのが、これブログのキーワード選定と同じなんですよ!

と、ここでまた分からない人には全く訳が分からないであろう話に飛んでしまいます。
私、以前趣味のスポーツに関するブログを運営していたことがあって、一時期そのブログを育てることにはまっていたんです。アメブロとかの無料ブログではなく、ワードプレスを使って自分で作ったブログだったので、見に来てもらうためには基本的にGoogleの検索順位で上位に来る必要がありました。
どういうことかと言うと、野球のブログなら野球に関する語句を、サッカーのブログならサッカーに関する語句を、誰かがGoogleで検索した時に1ページ目に表示されるかどうか、という話です。
何かを知りたくて検索しても、なかなか2ページ目3ページ目って見ないじゃないですか。だからいかに検索上位をとるか、がブログのアクセス数を左右するのです。

で、何が似てるのか、というとその検索上位を取るテクニックと、研究者としてポジションをとるテクニックです。
例えばサッカーブログをやっていたとしましょう。ブログの文中にキーワードを散りばめると、賢いGoogleはそのキーワードを見つけて検索ランキングに組み込んでくれます。
しかし「サッカー」というキーワードをいくら入れても、検索上位は「スポーツナビ」とか「JFA」とか「サンスポサッカーニュース」とか、大手メディアや公式サイトなどの強豪がひしめいているので、まったく刃が立ちません。
そこで「サッカー リフティング やり方」という、もっと絞ったキーワードを狙うというテクニックが必要になってきます。

研究も同じで、やっぱり大先生に大きなジャンルはにぎられています。「琳派」とか「水墨画」とか「中国絵画」とか、そういうやつは。
だからもっと絞って絞って、たとえば「江戸時代末期の大阪画壇で活躍した絵師の研究」とか「室町時代の蒔絵作品にみられる和歌モチーフの研究」とか、まぁこれは適当にでっち上げただけですが、そういう狭い領域で研究成果を挙げることを目指すべきなんです。

ブログの検索アルゴリズムも、ニッチなキーワードで上位がとれると(アクセスが集まり人気ブログと判断されると)、もう少し広いキーワードでも上位に食い込めるようになります。
研究もまず「誰もそんなことやってない」狭い狭いテーマでも、しっかりとした実績を残すことができれば(査読誌に掲載されるなど)、そこから少しずつ研究領域を広げていくことが可能になります。

まとめ

要は、早いところ「このテーマと言えばこの人だよね」と認識されるようになりましょう。その時ただやりたいことをやるではなくて、少し戦略的に研究テーマを選ぶ方がいいですよ、という話でした。


バックナンバーはここで一覧できます(我ながら結構たくさん書いてるなぁ)。