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032.『ローカルメディアの仕事術 人と地域をつなぐ8つのメソッド』影山裕樹 編著


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“ ―― マスメディアと違って読者との距離が近いローカルメディアは、取材先に対しても慎重にアプローチしなければならない。取材したら終わりではなく、今後も長い時間をかけて関係性をつくっていく同じ地域に暮らす大事なパートナーだからだ “

地域に根付き、多様な人をつなぎながら、継続するための考え方とノウハウ。全体像からディテールまで、1:プロデュース、2:編集、3:チームづくり、4:デザイン、5:ウェブサイト運営、6:取材&インタビュー、7:文章の書き方、8:写真の撮り方を、エキスパート達が実例で解説する。初めてつくる人にも経験者にも、必ず気づきのある現場からの学び


●はじめに

前著『ローカルメディアのつくりかた―人と地域をつなぐ編集・デザイン・流通』を二〇一六年に発行して以来、地域に根ざした印刷会社、ローカル出版社、自治体、文化施設、NPOなどの中間団体他、多様な人々と出会う機会が増えた。これほどまでに「ローカルメディア」が注目されているのかと、びっくりしているところが正直ある。

同時に、それぞれの人たちにとって、「ローカルメディア」の捉え方が違うこともわかってきた。紙やウェブといったわかりやすいメディアを立ち上げたい人たちのなかでも、メディアがもたらす成果と目標をどこに設定するか(売り上げなのか、地域課題の解決なのか)がバラバラなのだ。そもそも、メディアという概念も広すぎる。

でも、マスメディアが衰退している現代、ローカルな情報発信が価値をもち始めているのも確かだ。では、現代におけるローカルメディアとはなんなのか? どこにゴールを見定め、それぞれの地域にふさわしいメディアを生み出せばいいのか? 本書はそんなノウハウを「実践編」として収録した。

まず、ローカルメディアづくりにおいては、これまでのマスメディアや商業出版とは異なるスキル、考え方が必要とされている。出版取次や大手ネット書店の流通網を通して、全国に均一に届けられた本だけが必ずしも多くの人に読まれるわけではないし、地上波を通して全国に届けられるテレビ番組を多くの人が同時に見る時代でもない。

だから、メディアのスタートからゴールまでの全体像を考え、流通の仕方を設計し、マネタイズをするところから始めなければならない。そこには従来の編集とは違いプロジェクト全体を眺めるプロデューサー的視点が必要になる。

もう一つは、メディアのかたちにしたがって適切な人材を集め、チームをつくる。出版社やメディア企業のような、専門職種がそれぞれ専門性を発揮して事業を継続するものと、地方で出版やメディアを生業とすることでは条件が違いすぎるからだ。専門性を飛び越えた働き方が必要になってくる。デザイナーは単にデザインしているだけではダメだ。ウェブメディアを立ち上げるなら、バナー広告やアフィリエイト以外のお金の集め方を編み出す必要がある。

そして最後に、ディテールを詰める作業が必要だ。マスメディアと違って読者との距離が近いローカルメディアは、取材先に対しても慎重にアプローチしなければならない。取材したら終わりではなく、今後も長い時間をかけて関係性をつくっていく同じ地域に暮らす大事なパートナーだからだ。文章を書いたり、写真を撮ったりする際にも、よそ者として関わるのではなく、当事者とジャーナリストという二つの立場を行き来しながら、地元に巻き込まれていく覚悟が欲しい。

そんなローカルメディアならではの仕事術について、二章では講座形式で各地で活躍するメディアづくりのプレイヤーに各論を執筆していただいた。

本書ではまた、前著でとりあげきれなかったローカルメディアのプレイヤーに新たに取材している。そこで、僕がいま考えているローカルメディアの可能性について改めて考察したいと思う。企業、行政、個人、NPOなど多様なプレイヤーがメディアづくりに参入している今、ローカルメディアの動きは、単に地域活性化や地方創世の文脈に乗っているからブームになっているのではなく、地域課題を解決するという名目でさまざまなチャレンジができる新しい実験場になっていることを示していきたい。

地域でメディアを発行したい行政や企業、個人、団体の人には、本書を手にとってローカルメディアが広がる多様な各地の事例を知ってもらいたいし、可能ならば実践者として名乗りをあげてもらいたい。

2018年4月 影山裕樹

●書籍目次

1章 ローカルメディアを始める前に


2章 ローカルメディアの編集術


1 全体像をつくる

1 プロデュース術── 最後まで緻密に関わる  幅允孝/ブックディレクター
2 編集術── 関係者に揉まれながら一番よい解決策をみつける  影山裕樹/編集者

2 枠組みをつくる

3 チームづくり── ともにつくる一〇カ条  多田智美/編集者・MUESUM代表
4 デザインの方法── 魅力的な誌面をめぐる考え方  原田祐馬/UMA/design farm代表
5 ウェブサイト運営術── 収益をめぐる試行錯誤から  原田一博/『枚方つーしん』

3 ディテールをつくる

6 取材&インタビュー術── 街の人の素の声を聞きとるには  成田希/星羊社・『はまたろう』編集長
7 文章術と心構え── 誰かではなく「私」が書く  小松理虔/ヘキレキ舎代表・フリーライター
8 写真の撮り方── 撮り溜めのすすめ  山崎亮/コミュニティデザイナー・studio-L代表


3章 メディアの編集からまちの編集へ

1 NPOがつくるメディアとまち──事業を掛け合わせるフットワーク

──『ヨコハマ経済新聞』(横浜市)/『おへマガ』(岐阜県恵那市)

2 企業や産業がつくるメディアとまち──価値を再発見する、地域密着の方法

──『三浦編集長』(島根県大田市)/『にんじん』(石川県七尾市)/ヘキレキ舎(福島県いわき市)

3 市民がつくるメディアとまち──本当の担い手はいつも個人

──『右京じかん』(京都市右京区)/『谷中・根津・千駄木』(東京都文京区・台東区)/サーキュレーション キョウト(京都市)


☟本書の詳細はこちら

『ローカルメディアの仕事術 人と地域をつなぐ8つのメソッド』影山裕樹 編著

体 裁 四六・252頁・定価 本体2000円+税
ISBN 978-4-7615-2679-5
発行日 2018/05/10
装 丁 UMA/design farm

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