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071.『リノベーションの教科書 企画・デザイン・プロジェクト』小池志保子・宮部浩幸・花田佳明・川北健雄・山之内誠・森一彦 著

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“ ――具体的なリノベーションのプロジェクトに関わる機会のある学生諸君には、それを推進するための参考書として使ってほしい。そして、すでに実務に携わっている方々にとっては、日々の実践の意味を見直し、その位置づけを確認するための手がかりとなれば望外の喜びである“

リノベーションを学び、設計やプロジェクトに取り組むための入門教科書。住宅や学校、商業施設などの建物単体から地域レベルまで、計画手法を事例とともに解説し、調査・設計・現場・運営の実践ポイントも充実。講義テキストとしてはもちろん、学生から実務者まで、初めてリノベに取り組む人の手引きとして最適の1冊。

●はじめに

本書は、建築からまちや地域までのリノベーションについて、その考え方の基本的枠組みから企画や設計の具体的方法までを、多くの事例を通して実践的に説き起こしたものである。

高齢化や人口減少が大きな問題として認識されるようになるにつれ、既存の建物や空間を活かすリノベーションという方法が注目されるようになってきた。そして関連書籍の出版も増えたが、その多くは、国内外の先進的事例の紹介や、それらの背後にある社会的・経済的・建築生産的問題の分析であり、しかも、リノベーションの対象の種類ごとに別の書籍としてまとめられる傾向もあった。

そこで本書では、理論と実践という座標軸、および建築からまちや地域までという座標軸をクロスさせ、さらにそこへ、新築から改修までを時間軸上で連続的に捉える視点を加えることで、リノベーションという方法の全体像を立体的に浮かび上がらせようと考えた。

この方針に基づき、本書は3部から構成されている。第1部「リノベーションの考え方」では、リノベーションという方法の論理的な成り立ちや、それを企画し実践するための基礎的な知識を整理した。第2部「再生時代の計画学」では、住宅、学校、オフィスビルといったさまざまなビルディングタイプの建築から、まちや地域までのリノベーションの仕組みを、多くの具体的な事例を通して分析した。第3部「リノベーションを実践しよう」では、さらに具体的に、リノベーションを実践する際のノウハウを、調査、計画、設計、現場、運営といったステップごとに詳述した。

6人の執筆者は3つの大学の教員であり、しかも建築計画や建築史の研究、そして具体的なプロジェクトの実践を通して、多くのリノベーションに携わってきたメンバーである。本書でも、それぞれが実際に関わった事例をたっぷりと紹介した。したがって、読者の皆さんには、あたかもそれらの現場にいるかのような臨場感も味わっていただけるに違いない。

本書は「教科書」と銘打っているように、まずはさまざまな教育機関での講義や実習のテキストとして使っていただき、リノベーションへの関心を若い世代に浸透させる一助となることをねらっている。さらに本書は、1冊の読み物としても機能するはずで、具体的なリノベーションのプロジェクトに関わる機会のある学生諸君には、それを推進するための参考書として使ってほしい。そして、すでに実務に携わっている方々にとっては、日々の実践の意味を見直し、その位置づけを確認するための手がかりとなれば望外の喜びである。

2018年3月吉日
著者一同

●書籍目次

はじめに

第1部 リノベーションの考え方

第1章 リノベーションという論理

1・1 「すべてはリノベーション」という発想
1・2 リノベーションという論理の成り立ち
1・3 リノベーションによって獲得される世界

第2章 リノベーションの企画

2・1 使い方から発想する
2・2 建築再生がまちに必要なわけ──事業性からの見立て
2・3 さまざまな用途へのリノベーション
2・4 リノベーションの実現に向けて

第3章 リノベーションのデザイン

3・1 リノベーションと場所
3・2 建物の大きさを変える
3・3 使い方を考える
3・4 素材とディテールで表現する
3・5 時間をデザインする

第2部 再生時代の計画学

第4章 住宅のリノベーション──プランニングと事業性

4・1 住宅のストックが増えた背景と課題
4・2 変わる住宅像
4・3 既存住宅を現代のライフスタイルにフィットさせる
4・4 リノベーションがつくり出す成熟社会の住宅

第5章 住宅団地のリノベーション──多様なライフスタイルに呼応した住環境づくり

5・1 住宅団地の変遷と課題
5・2 多様なライフスタイルに呼応する実践例
5・3 団地に新しい価値を創る

第6章 長屋・町家のリノベーション──都市の木造住文化から始めるまちづくり

6・1 木造による建築ストック群
6・2 都市型木造住宅リノベーションの実践例
6・3 都市型木造住宅の魅力を伝える
6・4 長屋・町家の魅力とまちづくり

第7章 古民家のリノベーション──文化的価値への着目とその継承

7・1 古民家の文化的価値
7・2 古民家リノベーションの実践例
7・3 文化的価値の継承に向けて

第8章 学校のリノベーション──学びを通した新たな拠点づくり

8・1 点在する貴重な空間資源としての学校
8・2 学校をリノベーションするときの手がかり
8・3 学校のリノベーションの実践例
8・4 学びを通した新たな拠点づくりを目指して

第9章 産業遺産のリノベーション──特殊な空間への着目とその利用

9・1 産業遺産とは
9・2 産業遺産のリノベーションの実践例
9・3 産業遺産の活用に向けて

第10章 オフィスビルのリノベーション──機能進化か刷新か

10・1 オフィスビルのストックが増えた背景と課題
10・2 大規模オフィスの進化と中小規模オフィスの刷新
10・3 多様化するオフィス改修
10・4 変わるオフィスのあり方

第11章 商業施設のリノベーション──消費の変化と地域拠点化

11・1 商業施設のストックが増えた背景と課題
11・2 建物単体にとどまらない再生
11・3 新たな地域拠点としての再生
11・4 消費の場から地域のコンテンツ創造の場へ

第12章 エリアのリノベーション──多様な実践の重なり

12・1 エリアのリノベーションとは
12・2 都心部のオープンスペース──道路や河川の利活用
12・3 密集市街地の魅力を活かす──取り残された木造住宅の歴史文化的価値の見直し
12・4 工業地の特性を活かす──産業構造の変化に対応
12・5 郊外住宅地の個性を活かす──個別更新によるまちの魅力づくり
12・6 中山間地域における産業創出──多様な活動の連鎖
12・7 主体的活動の重なりとしてのエリア価値の向上

第3部 リノベーションを実践しよう

第13章 リノベーションのための調査

13・1 建物を知ろう
13・2 エリアを知ろう

第14章 リノベーションの計画と設計

14・1 企画を始めよう
14・2 計画を練りあげよう
14・3 プレゼンテーションしてみよう

第15章 リノベーションの現場と運営

15・1 現場に出よう
15・2 運営してみよう

☟本書の詳細はこちら

リノベーションの教科書 企画・デザイン・プロジェクト』小池志保子・宮部浩幸・花田佳明・川北健雄・山之内誠・森一彦 著

体 裁 B5変・172頁・定価 本体2800円+税
ISBN 978-4-7615-2673-3
発行日 2018/04/20
装 丁 UMA/design farm


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