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学芸本の読み方

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学芸出版社の本や会社について書かれたnoteの記事を集めています。
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#建築

おすすめ構造設計関連書籍の紹介01

ここでは、建築構造関係の書籍について紹介します。 私の持論ですが、「学生時代や若手社会人時代に建築関係書籍への無駄使いを気にすることは不要」だと考えています。得た情報はいずれ役に立つモリモリな知識となり、将来必ずペイできます。無駄使いと思うのなら、全力で本に無駄使いしましょう!本を読みましょう! 1.直感で理解する○○の基本シリーズ (著:山浦晋弘、出版:学芸出版社) 「直感で理解する!構造設計の基本」「直感で理解する!構造力学の基本」 「直感で理解する!建築デザイナーの

めくるめく『超建築パース』の世界 1

2021年8月10日に刊行する『超建築パース 遠近法を自在に操る26の手描き術』。超建築パースとは「CADやCGが普及し、建築パース表現がデジタルも含め多様化するなか、手描きでしかできない技をさらに伸ばすために追究したパース術」のことです。 『超建築パース 遠近法を自在に操る26の手描き術』田中智之 著 臨場感や雰囲気を伝える図法の飽くなき探究 ――― 伸びやかに湾曲する地平、効果的な省略や誇張、透視など、手描きパース最大の魅力はCADでは表現しえない“適度な補正”を含ん

あまり読書習慣がなくても読める「建築学生さん向け推薦図書リスト」

あまり読書する習慣がないという建築学生さん向けの推薦図書リストをつくってみました。 外出を自粛せざるをえない今、自宅にいながら視野を広げるのに本はもってこい。おうち時間を楽しくしてくれる読書。いつでも自分のペースにあわせて知らない世界について語りかけてくれます。 これまでにも、いろんな方々が建築を学ぶにあたっての推薦図書をリスト化してくれています。そこで掲げられた本を手に取って読み、そして歯がたたなくても、わかることからこじ開けていくことで、あるときパッと視界が開ける。そ

日曜大工デモクラシー|素人の玄人化、そして玄人の素人化

建築家・清家清(1918-2005)のたくさんある著書の一つに『素人大工:基本・コツ』(ひかりのくに、1975)があります。まさか清家さんが全部書いたとは思えないけれども、たぶん書いたであろう「はじめに」には次のように記されています。 日曜大工ということばも、私たちの生活の中にすっかり定着し、余暇に腕をふるうアマチュア大工も年々増えているようです。ところが、日曜大工というと大多数は男性です。(中略)この本のねらいは、女性にも大工の仕事を解放することにあります。家を建てるとい

建築史家・内藤昌と木割のモダニズム|1950年代、建築モデュール研究と建築史学の復権

『モデュールと設計』という小冊子があります。 日本建築学会が1961年に出版したもので、建築生産の工業化で鍵となる「モデュール」について解説したものです。この小冊子をパラパラめくっていくと、唐突に「日本の木割」と題し、書院造のお屋敷の断面図(図1)が登場します。 図1 「日本の木割」の図 ここにでてくる「木割」とは「建築に必要な寸法を原木にスミツケする技術」。建築工業化に関するゴリゴリの専門的冊子(出版元は建築専門出版社である彰国社)が突然、日本建築史コーナーに変わる不

モクチンメソッド 都市を変える木賃アパート改修戦略【学芸出版社】

モクチン企画/連勇太朗・川瀨英嗣 著 A5判/ 192頁/2,200円+税 木造賃貸アパート(モクチン)は戦後大量に建てられたが、今老朽化と空き家化が著しい。建築系スタートアップ・モクチン企画はその再生をミッションに、シンプルな改修アイデア・モクチンレシピを家主や不動産業者に提供する。街から孤立した無数のモクチンを変えることで豊かな生活環境、都市と人のつながりをとり戻す試み。 都内を拠点に木造賃貸アパート(モクチン)の改修・再生を行うNPO法人モクチン企画による本書.

建築家のためのウェブ発信講義【学芸出版社】

四六判/224頁/2,100円+税 ゼロから仕事をつくるためのプロモーション、社会を巻き込む建築理論の構築、施主候補との信頼関係を築くコミュニケーション。建築家9名がウェブ上で打ち出す個性的な実践を手掛りに、読者各々の目的に合った情報発信の方法を丁寧に指南。建築メディアに精通する著者によるSNS時代ならではの新しい「建築家」行動戦略! TwitterにFacebookにinstagram,といったSNSが発達し,個人でも世界に声を届けられるようになった現代. そんな

建築学者・延藤安弘【2】|1964年、絹谷助教授の死が京大西山研にもたらしたもの

東京オリンピックを翌月に迎えた1964年9月、京都大学西山夘三研究室に一大事件が起きます。西山の後継者として将来を嘱望された助教授・絹谷祐規(1927-1964)が遥かオランダの地で不慮の事故により客死したのです。 そのショックと悲しみがどんなに大きなものだったのかは、絹谷の死の翌年に刊行された遺稿集『生活・住宅・地域計画』(勁草書房、1965)に収録された西山夘三(1911-1994)による「あとがき」を読むとヒシヒシと伝わってきます。西山は50頁弱にもおよぶ、愛情と無念

ウェブの時代に建築家が発信することの意味

こんにちは、ロンロ・ボナペティです。 noteをはじめてから、早半年が経過しました。 はじめる前は想像もしていなかった良いことがたくさんあったのですが、ひとつ釈然としないことがあります。 それは…… なんでもっと建築系の書き手が増えないんだろう!? ということです。 これまでの建築とメディアの関わり方の歴史を考えていくと、いまnoteで発信していくことは建築に携わる人にとってすごいチャンスが広がっているんじゃないかと思っていて。 Twitterでこんなつぶやきをした

建築をつくるより、場所を使う時代の公共空間を考える。〜公共R不動産プロジェクトスタディ〜

先日、公共R不動産の新刊『公共R不動産のプロジェクトスタディ』の刊行記念イベントに行ってきた。 どういう想いを持ち刊行するに至ったか、どのように数多のプロジェクトを分類し、編集したかという裏話、制作秘話といった内容だった。 公共R不動産のディレクターである馬場正尊が語る「日本の公共空間の変革」に関する面白い話を聞くことができた。 建築空間デザインを「かっこよくつくる!」想いを大切にしながら、公共空間の活用の最前線にいる彼の言葉は、 今、変わろうと動き出している社会の波

日本中にあふれる余剰公共空間をどう活用するか

日本の基礎自治体の数は1700あり、そのうち約1300が事実上の破産状態にあるそう。福祉や医療費の増大でますます公共施設への再投資は厳しい。今後急速に民間へ開放されると言う。 日本中に余剰公共空間が溢れ、地域金融機関は融資先の低迷、つまりモノとカネは揃っている。地元の有力企業にはヒトもいる。あとはそれらをマッチングし動かす潤滑油的な存在を待つ状態。 ここにはすでに素敵な実例がたくさん掲載されています(以下はほんの抜粋です)。 タイムズスクエアの歩行者空間化は社会

水面下で脚をばたばた

いまから特急わかしおで、千葉の外房に行ってきます!半年前はまさか地方で支店をつくるなんて、思いもよらなかったですねー(2018.6現在 準備中)。企業って、変わらない部分と、変わっていかなければならない部分、2つあると言われます。でもこれをコントロールって、できないです。 ぼくたちは「建築と不動産のあいだを追究する」ってのが会社のコンセプトであると同時に、経営理念でもあるという変わった会社です(詳しくは緑の本『建築と不動産のあいだ(学芸出版社)』を見てね)。 これがぼくら

青山ブックセンターでトークイベントを行いました。

皆さんいつもご覧くださりありがとうございます。 アーキテクチャーフォト後藤です。 昨日、弊書籍『建築家のためのウェブ発信講義』の出版記念イベントをおこなりましたので、その様子を書いておきたいと思います。 日曜日で、雨の中多くの皆様にご来場いただきました。誠にありがとうございました! 今回のイベントでは、本書にも登場いただいた建築家の連勇太朗さん、川辺直哉さんと3人で、これからの建築設計事務所に必要なメディアスキルを語るというものでした。 私自身、一度お話を伺った方々

実用性を保ちながらいかに継承していくか─村野藤吾設計「近三ビルヂング(旧 森五商店東京支店)」を支えてきたオーナーに聞く|森隆(近三商事3代目) 森正隆(近三商事4代目)

『新建築』2018年4月号はリノベーション特集です.特集にあたり村野藤吾氏設計の「近三ビルヂング(旧 森五商店東京支店)」を87年(2018年現在)に渡り,歴史的建築ではなく,現役のテナントビルとして活用し続けてきたオーナーにお話を伺いました.(『新建築』2018年4月号では作品紹介と共に収録しています) 目次 ●度重なる改修 ●実用性と保存をどう考えるか ●テナントビルとして持続させていくために 度重なる改修──近三ビルヂングは所有者である森隆さんの一族,設計者である村