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学芸本の読み方

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学芸出版社の本や会社について書かれたnoteの記事を集めています。
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#書評

城山文庫の書棚から024『エリアリノベーション』馬場正尊 2016年 学芸出版社

大学の1期先輩、馬場さんは学生時代からAという建築雑誌を手掛け、博報堂に就職するも都市博中止を受け退社して大学に戻り、その後こだわりの住宅物件を集めたウェブサイト「東京R不動産」を立ち上げた人。ブルースタジオの大島芳彦(中学高校の同級生)と共に、リノベーションブームの火付け役のひとり。  本書ではエリアリノベーションとは何かを概説した後、彼自身の実績を含むいくつかの先進事例を紹介。長野市の善光寺門前、北九州市小倉・魚町、岡山市の問屋町など、リノベーションまちづくり界隈ではいず

城山文庫の書棚から022『リノベーションまちづくり』清水義次 2014年 学芸出版社

リノベーションまちづくり界のゴッドファーザー、別名ヨーダと呼ばれる清水義次さんは、アフタヌーンソサエティの代表として商業系のリサーチやマーケティングを手掛けていたが、青山の遊休地で自ら店舗を経営した経験を活かし、まちづくりの世界へダイブ。後輩たちから慕われ、常にこの業界を先導してきた先駆者だ。  本書では、リノベーションまちづくりとは何か、フィールドワークに基づくエリアマーケティング、まち再生のマネジメントを担う「現代版家守」について解説。公判では自ら関わった北九州市小倉家守

読書メモ『神山進化論 人口減少を可能性に変えるまちづくり』

『神山進化論 人口減少を可能性に変えるまちづくり』(神田誠司著、学芸出版社、2018)は、朝日新聞の記者である著者が2016年から2年間かけて徳島県の神山町を取材し、その町おこしの取り組みをまとめたものだ。 徳島県の山間にある神山町は、人口5300人(2015)で高齢化率も48%に達するという、消滅可能性の高い自治体のひとつだ。 その一方で、2008年からの8年間にかけて、91世帯、161人もの人が移住した町でもある。 また、特にIT企業のサテライトオフィスが多くあるこ

『マーケットでまちを変える~人が集まる公共空間のつくり方』(鈴木美央著/学芸出版社)

『マーケットでまちを変える~人が集まる公共空間のつくり方』(鈴木美央著/学芸出版社)を拝読しました。 いや、これはすごいです。誤解を恐れずに言うと、さくっと簡単に読める本ではありません。俯瞰して観察し論考するために一度深く潜ることによって、マーケットがあらゆる人(つまり町)にとってポップな存在になりうるという証明を行った記録。 あるいは、 数多くのフィールドワークと定量データを盛り込み、自らの実践(鈴木さん自らマーケットも運営してしまった)を踏まえて、情熱と執着をエンジン