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城山文庫の書棚から024『エリアリノベーション』馬場正尊 2016年 学芸出版社

大学の1期先輩、馬場さんは学生時代からAという建築雑誌を手掛け、博報堂に就職するも都市博中止を受け退社して大学に戻り、その後こだわりの住宅物件を集めたウェブサイト「東京R不動産」を立ち上げた人。ブルースタジオの大島芳彦(中学高校の同級生)と共に、リノベーションブームの火付け役のひとり。
 本書ではエリアリノベーションとは何かを概説した後、彼自身の実績を含むいくつかの先進事例を紹介。長野市の善光寺門前、北九州市小倉・魚町、岡山市の問屋町など、リノベーションまちづくり界隈ではいずれも著名な成功事例だ。馬場さん自身は長く東京都心の東側にこだわり、神田・日本橋CETエリアのリノベーションを手掛けてきた。
一棟丸ごとクリエイターのアトリエやギャラリーの入った雑居ビルや、感度の高いライフスタイルショップの東京発出店を仕掛けたのも馬場さんだ。大規模な再開発をしなくても、新しいビルを建てなくても、既存の建物に新たな付加価値を与え、エリア単位でブランディングをすることで、時間を掛けて地域の知名度を上げ、価値を高めることが可能であるということを、CETでは具体的な形で示してくれている。
先日、コロナ禍を縫って開催されたリアルのイベントで久しぶりにお会いしたが、相変わらずユニークな視点を持ち、新たな仕掛けを考えているようで刺激を受けた。リノベーションをテーマにした書籍も学芸出版社からシリーズでコンスタントに出版している。今も大学で教えるかたわら全国各地で街のリノベーションを手掛ける、目が離せない先輩だ。