実際に企画を立ててみよう
がくちょうです。
では、今日は実際に新作ゲームの企画を立ててみましょう。
先日下記で紹介したBMAの考え方に沿って、企画書を作ります。
https://note.com/gakuchougames/n/n4a5bcb04f3fc
①BMA要素のB
まずはBからです。
今回は、息子が「これやってみたい」と言ったので、ヒカキンの顔が追いかけてくるゲームをやってみました。
この「ヒカキンがおいかけてくるゲーム」をプレイしてみて、自分なりにイマイチだと思う部分を改善して、自分たちのゲームとして出すのが今回の基本ワークフローとなります。
要素を抽出するために、ヒカキンのゲームがどういうものだったかを箇条書きしていきます。
・でっかいヒカキンがウロウロしていて、当たったら死ぬ
・迷路になっていて、ひっかけや騙しトラップなどがある
・アスレチックの場所もある
・ステージ背景や壁のOBなどがオリジナルの素材やテクスチャになっている
・コインが落ちていて集めることができる
・コインで役に立つアイテムを買える
・コインでスキンも買えて見た目も変えられる
・ステージは最後まで進むとクリアになって次のレベルに挑戦可能になる
・最初はロビーにいて、レベルの入口に入ると、迷路の入口にワープする
・信号リモコンでいつでもロビーに帰れる
・途中でセーブポイントがあって死んでもそこからやり直せる
・ステージを最後まで進むと、ボス戦に挑戦できる
・購入した武器やガチャで引いた武器でボス戦に挑戦できる
・みんなで協力プレイでボスを倒す
・裏ステージにも進めたり、裏ボスがあったりする
こんな感じで要素を抽出しました。
ここに対して、自分がプレイして感じたフラストレーションなどを書き出すことで、Bの要素を抽出し、新作ゲーム企画の起点にします。
私が感じたフラストレーションは、
そもそもヒカキンの顔に追いかけられる、というポイントが、ホラーなのかデスランなのかアスレチックなのか、どうもはっきりしない。追いかけられている感覚も少ないし、どちらかといえば避けて通っているだけ、という体験になってしまって、ぼやけている。
⇒個人的には、例えばステージ全体を暗くして、もっとハラハラする感じで、追いかけられたり、隠れてやりすごしたり、隙を見てダッシュで通り抜けたりするようなゲーム体験に強化した方が面白そう。
移動手段が少なく、基本的に歩いて移動するだけになっていて、爽快感に欠けるし、単調に感じてくる
⇒個人的には、グラップラーなどのアイテムを使って移動できるようにした方が、もっと移動すること自体で爽快感を味わえるし、移動手段と移動できる場所も増えるから面白そう。
1つのステージが長い。セーブがあるものの、終わりが分からないし、見えているわけでもないし、進捗があるわけでもないので、途中で何となく達成感を味わえなくなってきちゃう。
個人的には、1つのステージはもっと短くして、時間制とかで終わりも分かるようにして、時間内にできるだけ多くのコインを集めつつ、脱出できたらさらにボーナスがたっぷりもらえるような、達成感を味わいやすいものの方が面白そう。
最後にボス戦になるのは、悪くはないけど、なんだかんだですぐ飽きそう
⇒個人的には、ボス戦よりもPVPの方が燃えるし、継続性もあって面白くなりそう
という感じになります。
このフラストレーションと、【個人的には】どうした方が面白くなると思うか?という改善案が、新作ゲームの方向性になります。
実は、同じゲームをやった時に、人によって「何にフラストレーションを感じるか」「個人的にどう変えたいと感じるか」というのは、本人の価値観やこれまでのゲーム体験に大きく左右されます。
なので、5人同時にこのワークを行ったとしても、全く違う新作ゲームの方向性が出てくると言う事です。
このように、「新しいものを生み出す時に、既存の人気なものに、個人の価値観をミックスさせる」という手法を使うことで、迷ったり考えたりする時間を極限まで圧縮し、爆速で企画を生み出すことができるようになります。
②BMA要素のM
これで大きな方向性は決まったので、上記を実装できそうなメカニクスについて大雑把で良いのでまとめておきます。
ジャンルは「ホラー調のアスレチックを混ぜたデスラン」「効率化」「ハクスラPVP」に整理。
迷路とアスレチックの組み合わせでホラー調のデスラン要素
コインの収拾によって移動を強化でき、それによって収拾効率がさらにアップする効率化要素
コインで武器ガチャやステータス強化ができ、生き残りをかけたPVPで活躍できるハクスラPVP要素
上記の3つのメカニクスを中心にファンクションを設計していくことに決めます。
③BMA要素のA
最後に、A要素として、このゲームを体験している時の気持ちについて描写しておきます。
ドキドキしながら動きの読みづらい敵の注意をかいくぐって、大量のコインを集める!結構シビアだし、ホラー調でデスランのドキドキ感を味わえる!
最初から持っているグラップラーを活かしたアクションで敵を回避したり、隠しコインを見つけるのも楽しい!
コインが増えると、コインを回収しやすくなる移動系アイテムを充実させられて、同じステージに入っても回収できるコインが増えるのが楽しい!
一定時間で開催されるPVPで、コインの力を活かして武器やステータスを強化して、無双するのが楽しい!
④病みつき行為の定義
ここまでBMA要素を書き出した時点で、大まかには新作ゲームの方向性は決まっています。
ただし、ゲームを設計している時の「論理的な面白さ」と、実際にゲームを体験した時の「体感的な面白さ」というのは、少し別です。
あくまでゲームとは「体験」であり、脳内だけで行うものではないからですね。
そこで、「病みつき行為」という言葉で、このゲームの中心となる行為で、最も多頻度に行われ、ゲームの設計の中心となっている行為について定義しておきます。
今回は、病みつき行為を
【移動系アイテムを使った軽快なアクションに成功して、高難易度の動きをする敵をかわしてコインを拾った瞬間】
という風に定義します。
この「病みつき行為」が、そもそも体験として感覚的に「気持ちよい」ものでないと、ゲーム体験の全体が気持ち良いものになりません。
つまり、このゲームでは、コインを拾った瞬間を「気持ちいい~!!」と感覚的に感じるように作らないといけない、という事になります。
⑤AHA体験の定義
さて、次にAHA体験を定義します。
これは、初めてこのゲームを体験した人が、どのタイミングで「このゲームの面白さ」を感じるか?について考え、言語化しておく作業です。
このAHA体験を定義することで、
そのゲームの本質的な面白さがどの部分かを1つに絞って明確にしておける
AHA体験を実感させる場所を意図的に早めることで離脱を防げる
という効果があります。
今回の企画では、
「苦労して集めたコインを使ってアイテムを購入して、そのアイテムを使ったら、より楽に、より多くのコインを集められた時」
という風に定義しました。
この定義によって、このゲームの本質が「コイン収拾を効率化するために周回する」という部分だと決まりました。
そして、このAHA体験をできるだけプレイの初期に味わえるようにユースケースを設計することで、このゲームの面白さが何なのか、どう楽しむものなのか、についてプレイヤーにも正しく伝えることができるようになります。
⑥AHA体験までの詳細でリアルな体験描写
次に、上記のAHA体験までのユーザーの動きや体験と、それに伴う心理的な描写をリアルにイメージしながら言語化しておきます。
先にゲームを頭の中で創って妄想で体験しながら、感想を作っていくようなイメージです。
これを行っておくと、最後の企画工程である「ユースケースの作成」にスムーズに繋げることができ、そのまま爆速で制作フェーズに移ることができます。
今回のゲームでは、下記のように描写しました。
こんな感じで、病みつき行為を中心にした体験が、そのまま繰り返せばAHA体験に接続するようにします。
言い換えれば、「感覚的な気持ちよさを繰り返しているうちに、論理的な気持ちよさに到達してしまった」というユーザー体験を設計する感じになります。
⑦MVPに必要なユースケースの記述
さて、企画フェーズはこの⑦を埋めたら終了です。
最後に、ここまで書いてきた企画書をイメージしながら、新作ゲームの面白さをユーザーが味わっていくために必要なユースケースを列挙していきます。
MVPというのは、「ミニマムバイアブルプロダクト」(Minimum Viable Product, MVP)の略で、プロダクト開発の初期段階で、最低限の機能や価値を備えた製品を指す、ビジネスやスタートアップの界隈で使用されている言葉です。
めっちゃ平たく言えば、「超最低限でいいから、大事な体験だけできるようにしたものを創っちゃって、出しちゃいましょう」みたいな考え方ですね。
そのあとは、実際に使ってみてもらって、感想もらったり、改善していけばいいじゃん、という感じです。
なので、必要最低限のラインがどこか?を見極めながら、ユースケース(プレイヤーが体験する行動設計みたいなもの)を書いていきます。
すごくザクっとですが、ユースケースとして最低限のものをかきだしてみました。
この時点で書いたものは、全て実装する必要はありません。
むしろ、制作フェーズでいかに必要なユースケースを残し、不必要なものはカットできるか?が重要とも言えます。
さぁ、ここまでで企画フェーズは終了です。
慣れれば、ゲームを遊ぶ⇒企画書を作る、という全体工程を合わせても、2時間くらいで終わるようになるはずです。
逆に、1本の新作ゲームの企画書を作るのに、3時間以上もかけているようでは、「爆速ゲーム開発」とは呼べません。
そして、そういった(結果として無駄な)時間の積み重ねを、クリエイティブだと思ってしまうから、何年もかけて1本しかゲームを作れなくて、出してみたら評価されなかった、、、ということが起こります。
これは、ビジネスでも同じことが起こっていて、そういう馬鹿な事故を防ぐための技術が「リーンスタートアップ」や「顧客創造」というもので、このビジネスの現場で成果を出している開発モデルを、ゲーム開発に応用したのが私が提案している「爆速ゲーム開発」というモデルになります。
是非、上記の考え方や企画書フォーマットを活かして、あなたも爆速ゲーム開発に挑戦してみてください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?