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失敗から学ぶことのできない人間~失敗を成功につなげるために~【読書のすすめ♯4】

今回は、「失敗の科学」という本の内容を紹介していきたいと思います。

この本は最近読んだ本の中でも、かなり刺さるものがありました。この記事を読んで興味を持たれた方は是非読んでみてほしいな~って思います!(宣伝費はもらってないので安心してください笑)

「失敗は成功のもと」ということわざがありますが、失敗から学ぶことがいかに重要か、そして失敗から学ぶことがいかにできていないか、という点についてみていきましょう!

1 トップダウン的思考からボトムアップ的思考へ

まずは、失敗がなぜ成長する上で重要なのかについてみていきましょう。

ある会社が、新たな製品を開発するために、工場で用いている機械をアップデートしたいとします。機械をアップデートするためにどのような方法が考えられるでしょうか。

まずは機械工学に秀でた専門家の知恵を借りるということが考えられます。専門家に作りたい機械の性能を伝え、専門家の理論を用いて一つのデザインを考えてもらうわけです。

次に、会社の技術開発チームを用いて、様々な機械モデルを考えて実際に工場で使用し、次々に新しいモデルを考えていくという方法が挙げられます。

さて、この2つの方法のどちらが成功につながるのでしょうか。

ここで、産業革命の例を見てみましょう。産業革命において、ジョン・ケイの「飛び杼」、ハーグリーブスの「ジェニー紡績機」、アークライトの水力紡績機、という形で織物を作るための機械がどんどん進化したという話を覚えているでしょうか。

ここで産業革命期に次々と進化が生じたのは、科学的な知識によるものではありません。どれも熟練した職人の実践知や経験知をもとに、少しずつ改良を重ねることによって完成したものなのです。

私たちが学問を学んでいると、どうしても先に理論があって、その理論の応用によって世界が発展してきたかのような印象を受けます。しかし、実際は順序が逆のことが多く、様々な試行錯誤をする中で徐々に改善がなされていき、その中で理論という形で1つの法則が生まれてくるのです。

つまり、完璧な理論→実践というトップダウン的な思考形式ではなく、理論→実践→新たな理論→実践→新たな理論、、、という形で実践からのボトムアップで徐々に理論が進化しているというわけです。

したがって、最初に挙げた例では、おそらく会社の技術開発チームによる試行錯誤の方がうまくいくでしょう。私たちが生きている世界は非常に複雑なので、頭の中で組み立てた理論がそのまま適用できることはあまりなく、むしろ失敗を積み重ねて仮説を反証していく中で、徐々に理論が精緻化されていくわけです。

2 失敗から学ぶためのシステム

失敗から学ぶ重要性がわかったところで、次に失敗を成功につなげるための方法論について見ていきましょう。

まずは、失敗からの学びを記憶し、それを次世代へと引き継いでいくシステムを構築することが必要です。そうすることで、世代を超えて徐々に改善が進み、より精緻な理論が確立されることになります。

航空業界はこのようなシステムを熱心に構築することで、事故の発生確率をかなり低く抑えています。事故が起きたときには、必ずその原因を丁寧に検証し、データを業界全体で共有します。

例えば、失敗を検証する中で、同じような形をしている2つのレバーが存在しており、これらを取り違えてしまうことによって事故が多数起きていることが明らかになったとします。そこで、そのような情報を共有しレバーの形を変更することで、生じるミスのパターンを1つ減少させました。

こうしてミスのパターンを1つずつ共有して減らしていくことで、安全な空の旅を実現しているわけです。

では、何が失敗・成功の要因なのかはどのようにして検証すればよいのでしょうか? ここで、RCT(ランダム化比較実験)という方法が役に立ちます。これは、ざっくりいうと反事実を検証するということです。

例えば広告を青にすることで、集客力が減少してしまったとします。しかし、集客力の減少は景気の悪化など様々な要因による影響を受けるため、必ずしも広告を青にしたことが集客力減少の原因かどうかはわかりません。

そこで、広告の色という要素だけを変えて検証ができるように、同時に青色の広告と以前の広告がランダムに表示されるようにして、それぞれの集客力を検証するという方法が考えられます。これで、実際に青色の広告の方が集客力が減少しているのであれば、青色にしたことが失敗の原因であるとわかるわけです。

このように、ある要素がなかったとき(=反事実)と比較することによって、本当に失敗の要因となっているのかどうかを検証することができます。

3 失敗から学べない人間①~認知的不協和~

さて、ここまで失敗から学ぶ重要性、そして方法を見てきましたが、中には「こんなの当たり前やん!」って思っている人もいると思います。

しかし、実際私たちは中々失敗を受け入れられず、また失敗をすることを恐れて、成功につなげることができていません。ここからは、失敗から学ぶことができない人間の心理について検討していきましょう。

本書では次のような例が挙げられています。強制性交の罪を犯したとして逮捕された者が、その後DNA鑑定が発明されることによって、実は無実であったことが証明されました。

しかし、検察官は頑なにその者が犯人であると主張し続け、挙句の果てには「その者はDNAを2つ持っている(わずかにそのような例は存在するらしいです)」「実はその場に第三者が存在し、その者の精液がついていたからDNAが合わないだけだ」、というようなほぼありえないような主張を繰り返すようになりました。

これがまさに、認知的不協和から生じる現象で、認知的不協和とは、人が自分の信念と相反する事実を突きつけられると不快感を感じるというものです。そして、自らの信念を変更するのはとてもストレスがかかるので、事実を信念に合うように解釈することで、間違いを認めないという態度をとってしまいます。

何か自分の考えている理論と整合しない事象が生じたとしても、事実を解釈し直すことで私たちは「自分は間違っていない」と思い込むわけです。他人に何か指摘されても「いや、実は~~で、、」という形で、頑なに失敗を認めないというのはよくある態度なのではないでしょうか。

4 失敗から学べない人間②~失敗を非難する~

認知的不協和に加えて、「失敗を非難する」という人間の心理は、余計に失敗から学ぶことを困難にさせます。

例えば、交通事故を起こしたときでも、私たちは真っ先に「運転手の不注意だ!」って結論付けると思います。しかし、実際に車を運転したことがある人ならわかると思いますが、運転中には様々なハプニングが生じる可能性があり(この部分が死角になっている、突然視界が悪くなった等)、単純にその人の不注意で片付づけることのできる事故ばかりではないと思います。

このように非難は「本来様々な要因によって起きている事象を、その人の責任という1つの要因だけで起きたものと単純化する」現象と言えます。

非難をして1人の責任という形で単純化してしまうことによって、まず、本来の失敗の要因が検証されないという問題があります。

そして、それより深刻なのが、非難されることを恐れて失敗を隠そうという心理が生まれ、そもそも失敗という貴重な情報を得ることができなくなるという問題があります。

私たちは、何か失敗があるとすぐに「誰に責任があるか?」という思考になってしまいますが、責任ではなく原因を検討する文化作りが重要と言えそうです。

5 最後に

さて、今回は失敗から学ぶ重要性と、それを阻む人間の心理について見てきました。

事実の解釈を変えたり、失敗した者に非難を向けるという人間の傾向は、ある程度人間に備わった傾向かもしれず、このような心理を乗り越えることは難しいかもしれません。

しかし、失敗から学ぶ重要性を知り、さらにそれを阻む人間の心理パターンを知っておくことで、自分が失敗してしまったとき、あるいは他人が失敗したときの向き合い方が変わってくると思います。

僕も、積極的に失敗しようと思い、解けなくて凹むのが嫌で避けていた司法試験の過去問を積極的に解いて、自分の勉強方法を見直すようにしています。失敗から学ぶという姿勢は、日々の生活の中でかなり活きてくるなと思いました。

というわけで、今回の【読書のすすめ】はこのあたりで終えようと思います。過去の記事も下に貼っておくので、良ければ読んでみてください!

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①前回の記事

②前回の読書のすすめ



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