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思い出と、本の感想 紙つなげ!彼らが本の紙を造っている

2011年3月の半ば。
その時私は東京のオフィスに勤めていた。

数日前の東北の震災と、原子力発電所の事故。
TVは心が痛くなるニュース映像と繰り返される同じCMばかり。

数ヶ月前に管理職になったばかりの私は、輪番で出勤して全国の拠点の情報をあつめていた。

1日に何度も緊急地震速報が鳴り、地下鉄でそれが聞こえると特に怖かった。

その地下鉄も一部運休だったため、一駅分歩いたりして出社していた。

コンビニやスーパーからはパンなどなくなっていた。被災地に届けられていたのだろう。

東北に住む家族や友人の心配もしていた。

疲れて帰り、大好きなお酒を飲んでみても美味しくない。


考えると生理も来ていない。

この先どうなるのか、不安な中で、私の試した妊娠検査薬は、初めての+(妊娠している)だった。

結婚して5年、自然妊娠はムリと思っていた時だった。
婦人科で夫婦で検査を受けて、原因は分からず。
その内に予期せぬ昇進があり、忙しく婦人科通いも疎かになっていた。
期待していなかった妊娠。

おまけにその数日後、旦那の関西転勤も決まった。

私は、産休まで、東京で一人暮らしすることを決め、妊娠期間を何とか一人でやり過ごすことにした。

東京の1Rマンションを借りて、単身引っ越し。
産休に入ったら、私も関西に引っ越すつもりで、TVも冷蔵庫も旦那の赴任先に送ってもらった。
妊婦の一人暮らしには、布団と着替えとノートパソコン、少しの雑貨くらいしか持っていくものはなかった。

画して、妊娠発覚から半月ほどで、私の生活は一変した。
当時普及し始めたスマホで、ワンセグを少し見るぐらいで、私はワイドショーやニュースから目をそらしたのだ。
ネットニュースも必要最低限にした。


つわりで仕事以外はなるべく寝ていたかったし、洗濯機もないから休みには手洗いにランドリー。
妊婦生活だけでいっぱいいっぱいだし、お腹の子供の成長に差し障るような気がして、胸が痛くなる報道は見られなかった。



この本、『紙つなげ』は、震災で大きなダメージを受けた、日本製紙石巻工場の再生の物語だ。

この工場のある一台の機械にしか作れない紙が、日本の出版界を支えていると言う。
津波で壊滅的な被害を受けたとき、社員の身に何が起こり、いかに命を守ったか。その後、チームワークで瓦礫撤去から始め、建屋、機械をどう再生させたのか。

そのとき日本製紙本社はいかに判断し、現場を支えたかが、生々しく描かれている。

私が妊婦のとき目を逸らした、被災地で何が起こっていたかを、10年後の今読んで、ゆっくりと気持ちを消化しているところである。


この日本製紙石巻工場の方々は、自分の家族や仲間の身元が分からなくなった方もおられるが、毎日出社され、工場の復興のために懸命に働いた。
大きな被害にあった機械は、驚くべきスピードで、運転して始めの一回目で紙がつながった(安定稼働した)と言う。

震災ではこのように無事再生された方だけでなく、お仕事や生活を諦めねばならなかった方、今も苦しむ方々も多いと思う。
今更ながらにそれらに目を向けたわたし。
今度10歳になる我が子に、あなたが生まれた年、日本で何が起こっていたか、きちんと伝えていきたいと思う。

小学生の時の夢は、物書き・ライターでした。 もし私の書いたことばに誰かか心を動かされたなら、夢の第一歩です。 さらなる勉強やアウトプットのために使わせていただきます。