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Relux創業者がたった1週間で始めた「宿グルメ通販サイト」がすごい! withコロナ時代のスタートアップのカタチとは?

禍い転じて福となす――。5年、10年経ったときにこう思えるように、withコロナ時代を乗り越え、チャンスに変えて、より良い未来につなげたい! 

そこで今週は、Loco Partnersの創業者・篠塚孝哉さんにインタビュー

篠塚さんは、上質な旅を求める人へ旅館やホテルを紹介する、会員数200万人の宿泊予約サイト「Relux」の創業者で、今年3月末に代表取締役社長を退任。その直後の4月10日に、旅館やホテル、飲食店で提供されている料理や食材をオンラインで購入できる「TASTE LOCALを立ち上げました。

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サービスを開始した4月10日とは、全国7都府県を対象に発令された緊急事態宣言(4月8日)の直後で、先の見えない不安感に世の中全体が包まれていたころ。退任したばかりの篠塚さんも、「コロナで困っている宿を何とかしたい」という切実さから、約1週間というスピード感でサービスを開始しました。

ECサイト「TASTE LOCAL」のオープンから約2か月、創業の経緯や売上げや課題、オンラインだけでサービスをスタートし、SNSでスタッフを募った方法や、オンラインだけで組織運営する際の大切にしていることなど、withコロナ時代のスタートアップの始め方やヒントを、大松雅和(オーマツ)チーフディレクターが詳しく話を聞きました

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篠塚孝哉(しのづか・たかや)
TASTE LOCAL代表取締役社長。2007年に株式会社リクルートに新卒入社、旅行カンパニーに配属。2011年9月に株式会社Loco Partnersを創業し、代表取締役に就任。2013年3月、宿泊予約アプリ「Relux」をローンチ以降、毎年約250%の成長を実現。2015年4月よりグローバル展開を開始し、2017年2月にはKDDIグループに参画。流通額200億円のサービスに成長させる。2020年3月同社を退任し、2020年4月、TASTE LOCALを創業。スタートアップ経営や中国ユニコーン企業分析ブログがバズり、経営相談を受けるほか、千葉道場の顧問にも就任。


「宿の名産品セレクトショップ」のアイデアを形に

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大松雅和(以下、オーマツ): 「地域のごちそうを、食卓で」がコンセプトのお取り寄せECサービス「TASTE LOCAL」を始めた経緯から、改めて教えてください。

篠塚孝哉 TASTE LOCAL代表取締役社長(以下、篠塚):
3月後半にReluxの退任を発表し、何社かの宿泊施設さんと連絡をとっていました。ほとんどが、新型コロナによる影響で旅館やホテルが休業状態となり、悲惨な状況であるという話題でした。飲食店と宿泊施設は損益構造が似ていて、飲食店よりもさらに規模を大きくしたのがホテルや旅館です。

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苦しくない宿泊施設は、ひとつもありませんでした。何か出来ないかと考えたところ、旅館ホテルのお土産で販売されている名産品を集めて、セレクトショップのようにオンラインで販売することを思いつきました。具体的な商品として最初に思い浮かんだのは、伊豆稲取温泉・食べるお宿 浜の湯さんの『金目鯛の姿煮』(5600円税込)。宿で食べてもすごくおいしいし、お土産もやっていました。僕が訪れたことのある旅館・ホテルだけでもかなりお土産はいっぱいある。それらを集めよう。そう考えたんです。

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サイトをオープンした初日から、浜の湯さんの『金目鯛の姿煮』が最初の10日間でバンと売れ、TASTE LOCALを引っ張る商品になったのも幸運でした。現状の取り扱い商品数は106商品、取引先の数は40(6月10日時点)で、飲食店さんもあります。宿泊施設だけに限定せず、ローカルで名店といわれるところを扱っていくつもりで、6月1日からは、出荷するはずが行き場を失った黒毛和牛の販売(6800円税込~)もしています。

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オーマツ: 今(6月10日時点)の売上げはどのぐらいですか?

篠塚:
スタートから2カ月で、数千万円もの売上げです。この売上額は、Reluxの創業時と比べてもかなり大きく、私自身も驚いています。

サイトをオープンして10日ほどで、『金目鯛の姿煮』は1000匹近く売れました。現在までを合わせると2000匹以上の金目鯛が購入されています。兵庫県美方群にある民宿・松田家さんの『但馬玄牛すじ入りコロッケ』(2000円税込)は初日の20分で1000個が完売もしました。

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オーマツ: 
4月10 日にサービスを開始。全国7都府県を対象に発令された「緊急事態宣言」の直後ということもあり、サービスの周知が速かったように思います。「TASTE LOCAL」のサービスが広く知れ渡ったきっかけは何でしたか?

篠塚:
IT業界の人たちが「(Relaxを)退任したばかりなのに何してるの」と驚いて反応して、個々のSNSでシェアしてくれました。「コロナで困っている宿を何とかしたい」という背景にあるストーリーが多くの人たちの気持ちと結びつき、広まってくれたのが第1弾でしょうか。応援の気持ちが集まったことが、一番大きかった

オーマツ: なぜ、うまくいったと思いますか?

篠塚: 
旅館やホテルには、ファンの方が元々たくさんいらっしゃいます。家で過ごす生活を余儀なくされるなかで、自宅でプロが手がけた食事を楽しめてそれが宿のサポ―トにつながるというのは、シンプルでわかりやすかった。ありそうでなかったサービスだと思います。僕自身のはじまりも、これまでつき合ってきた宿の人たちの顔が浮かび、なんとかして売上げをつくってあげたいという想いだけでした。

旅館やホテル内のお土産コーナーにある商品なら、パッケージ化もされているし、販売免許もある。オンライン販売しやすそうなうえ、売れそうだなと。「ここにビジネスの可能性があるからやる!」といった戦略は、実は何ひとつなかったんです(笑)。

いい宿は実は「いい食品メーカー」でもある

オーマツ: 対面による料理の提供と、オンライン販売の違いは何だとお考えですか?

篠塚:
飲食店でも同じですが、その場で食べたほうがおいしい食事と、家に持ち帰って温めてもおいしい食事は違います。松田家さんの『但馬玄牛すじ入りコロッケ』がものすごく売れましたが、揚げたものを解凍するのではなく、自宅で解凍してから揚げてもらうから、おいしい。最終調理を自宅でするほうが圧倒的にクオリティを担保できるものは多く、宿の味の独自性も出せます。戦略としても売りやすいというのはありますね。

オーマツ: なるほど。ほかにもこのサービスにおける「強み」と感じた部分はどこですか?

篠塚:
まず、ハード面です。宿には、生産工場としての機能が十分にあります。キッチンは大きいですし、配送するにも、お土産も売っているから梱包資材もあります。加えて、ソフト面にも強みがある。1つ目は豊かな人材。シェフがいて、細かい作業や心遣いができる配膳のスタッフがいます。2つ目は、宿泊客というファンがいらっしゃること。長年の関係性で培われた宿泊客の方たちは、「あの宿の商品なら買ってみよう」と動いてくれる最大の資産であり、Eコマースで販売する土壌が十分あるということです。

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3つ目は、スタッフの不稼働時間が存在していること。休業していれば稼働率は0%ですし、緊急事態宣言が解除された今も、当面の稼働率は50%以下でしょう。宿泊施設としての経営は厳しいのですが、うちのサービスにおける視点でだけでいうとスタッフや調理場に余裕が生まれます。その余ったリソースを、たとえば、販売や梱包をするのは月〜火曜日、宿として稼働するのは金〜日曜日など、ECサイトに時間を割いてもらえます。

オーマツ: 宿泊施設にはそもそも、量産できる機能がそろっていたわけですね。いい宿は実は「いい食品メーカー」という。

篠塚:
始めてみて工場として機能する点に気づけたわけですが、もっと戦略的にECに力を入れていくことで、宿泊施設にとって別軸の収入源になります。TASTE LOCALは、そのサポートができると手ごたえを感じています。

運営メンバーはほとんどボランティア

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オーマツ: 
スタートアップとして考えたとき、サービスをスタートするスピードが圧倒的に速かったのも驚きです。アイデアから、サービスの開始まで約1週間だったとか。短い期間で出来た理由は、なんだったとお考えですか?

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☑ オンラインだけの組織づくりに重要なことは?
☑ スタートから2カ月。現状や今後の課題は? 今後の収益構造は?
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