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「心の底からゾッとした映画」関心領域レビュー


皆様お久しぶりです。がぶまると申します。
今日見てきた映画「関心領域」の鑑賞体験がとても刺激的だったので、レビューを残したいと思います。

〈はじめに〉
皆様は「鑑賞体験」という言葉をどのように捉えるでしょうか?というのも、そもそも僕にとって映画はエンタメであって芸術の一種です。そらそうやろという話なのですが、映画は芸術の中でも身近な芸術だと考えています。鑑賞コストが程よく低いという言い方が適切でしょうか?美術館に行く時程のハードルは無いでしょうし、音楽ほど手軽ではないでしょう。映画は鑑賞コストにおいて、とてもバランスの取れた芸術体験と言えます。しかし今回の「関心領域」ではそれがひっくり返ったように感じます。スクリーンの隅から隅まで、作品に存在する細かい音の初めから終わりまで、とにかく集中して見ないといけませんでした。凄くエネルギーを使う映画なんです。普段と違う鑑賞体験をしてみたい方は、ぜひ観てください!

〈ネタバレあり感想〉

さて、ネタバレありで感想を書いていきます。
感情のままに書き殴ってるので拙い文章だと思いますが、ご容赦ください!

さて、映画の始まり方も多種多様ですが、今作の始まり方は本当にビリビリ来るものがありました。まず、不穏な音楽と一緒にタイトルの文字が出てきます。そしてそのタイトルが少しずつ暗闇に溶けていくのですが、ゆっくりゆっくり文字が消えていくんです。完全にタイトルが消えた後も、3分くらい何もないスクリーンを見せ続けられ、不穏な音楽を聞かされ続けます。本当にゾッとしました。何も見えないのに、不穏な音楽が聴こえ続けて逃げられない恐怖を最初に味わうんです。

そして、永久に思えた怖い時間が終わると、一転してのどかな風景に切り替わります。家族が自然の中で楽しそうに遊ぶ映像が流れます。これが本当に本当に幸せそうな映像なんです。前提条件が無ければ、マジでただの退屈なホームビデオを見せられてると感じるでしょう。しかしご存知の通り、今作に登場する家族はアウシュビッツ強制収容所の隣で生活しています。この前提条件が絶対に消えないように、この映画では様々な仕掛けがあります。ピクニックが終わって家に帰り、幸せそうに生活する家族の映像には、必ず「何か」の音が小さく聞こえてきます。具体的に何が起きてるかはわからないものの、明らかにアウシュビッツ強制収容所内で行われている虐待を思わせる悲鳴、銃声、低く鳴り響く焼却炉と思わしき稼動音。ずーっと聞こえてくるんです。

そしてこの映画の凄い所は、ギリギリ無視できる位の醸し方をしてる所です。題名を借りるなら、鑑賞者にとっての関心領域を広げて見ない限り、目の前の映像の残酷な恐ろしさに気付けないのです。勿論自分の中で視野を広げて見れば見るほど、重く辛く苦しくなります。やがて耐えられなくなって映像の表面的な部分だけを眺めていると、めちゃくちゃ退屈な映画に感じてきます。この「退屈を感じている自分」を自覚する瞬間がこの映画の醍醐味とも言えるでしょう。その瞬間、僕は心底ゾッとしました。逃げ場がないお化け屋敷にいるみたいなんです。

さてさて、ストーリーの詳細にも面白い所は沢山あるんですが、1を書こうとすると全部書かなきゃいけなくなるので端折ります。許して!

そしてそして映画最終盤、アウシュビッツ強制収容所の跡地を清掃する映像が静かに流れます。今まで作中で意図的に描写されなかった、逆を言えば鑑賞者が意図的にずっと想像し続けなければならなかったモノの、全てが終わった後の姿を静かに見せつけられます。この映画の恐ろしい所の2つ目として、最後に鑑賞者に答えだけを見せる所です。過程は一切教えてくれません。鑑賞者に想像で委ねて、結果だけを見せつけるのです。ラストシーンのショック度合は、この作品を真剣に見た人であればあるほど大きくなるでしょう。とにかく物凄い鑑賞体験でした。久しぶりにこんなに刺激的な映画に出会いました。まだ見てない方々、可能であれば絶対に見てください!後悔するかもしれませんが、見た方がいい映画です!疲れた後に見ると苦しいかもしれないので、そこだけ気をつけてください!笑

ではまた〜

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