報告書DAY2
かんずめになっている。
自らを拉致し、軟禁している。
二日目はこうだ。
朝、外は茶色くて中は白く、スポンジのように柔らかいが表面が布で包まれているみたいで、沢山噛まないといけないやつを3つ喰った。
無味のとしょっぱいのと甘いのである。
無味のは、集合写真の男子生徒が腿に置く拳みたいな形で、表面の茶色い布が真ん中で十字に裂けて、なかの白いスポンジが覗いていて、とにかく沢山噛まなければいけなかった。
しょっぱいのは、ぱりっと糊付けされた茶色い布が幾重にも重なり、映画『ミッキーの大時計』でドナルド・ダックが翻弄されていた謎の部品みたいな渦巻の中央にツナが載っていて、塩気はそこからきていた。渦巻はやはり無味であった。
甘いのは、円盤状で、真ん中に穴が空いていて、やはり茶色である。穴が空いている分、損した気分になる。
それと、サラダとコーヒーを食べました。美味しかったです。
あとは昼寝と読書と散歩。
雨の日の本屋は嫌いだ。経験と歴史と思想、神羅万象、あるものからないものまでの全てが、夏の産毛に絡みついてくる。
仕方ないので、風呂で全部剃ってやった。男性用剃刀の、柄の黒いので剃ってやった。何十年が、排水溝で渦巻いて、やっと死んだ。
夜も嫌いだ。
お化けが出るかもしれないからである。
お化けが出たら追加で料金を払わなくてはいけないと、或る男が言っていた。
その男を信用しているので、きっとその通りなのだろうと思うし、自分がホテルマンだったら、やはり追加料金をきっちり徴収するだろうと思う。
それならば、礼儀と節度をわきまえ、例えば、漢詩を詠めたり、プログレに詳しかったり、一見様お断りの回らない寿司屋を紹介してくれたり、ショートカットキーを網羅していたり、食べられる茸を見極めることが出来たり、旧式のスーパーカブを自分でメンテナンスして乗っていたり、初めてのライブハウスで堂々と出来るような、教養とセンスのある人物が良い。
きっとそのような人物なら、私が今朝食べたものも知っているかもしれない。
深夜にラジオを聴いて眠る。
窓から見える劇場は、遅くまで明るい。
ガーメントバッグが夜の道を行くのが見えた。