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明るい男【サウナのサチコ『裸の粘土サウナー』第17回】

サウナ支配人や熱波師をかたどった粘土造形を手がけるクリエイターにしてサウナー・サウナのサチコのサウナ訪問記。「ととのった」と感じるまで半年かかったという不器用サウナーならではの独自目線で、サウナ施設とそこに働く人々の魅力を切り取ります。

この記事が全国の温浴施設に並ぶ頃には、ある温浴施設が緞帳(どんちょう)を下ろしている。

ここは大衆演劇のある、数少ない温浴施設。縁あってこの温浴施設の最後の2カ月間を、一緒に走らせてもらうことになった。2022年12月から2023年1月まで、出稼ぎサチコとしてお土産コーナーの一角に、粘土を置かせてもらうことになったのだ。

だからと言って常連でもない私が、この温浴施設との別れを書くつもりはない。私が書きたいのはいつも「人」。私が辛いのは閉館よりも、そこにその人がもういなくなるということだ。

出会いは昨年の6月だった。やたらと人懐っこいフットワークの軽い支配人で、Twitterでの姿そのままの、底抜けに明るい方だった。最初にお会いした時に感じた、この親しみと程よい距離感は、良い意味で薄まることも深まることもなく今に至っている。

童顔に四角いメガネ、首にはネックウォーマー(マッサージの佐々木さんに首を冷やすなと言われたらしい)、よく通る声と屈託のない笑顔、気持ちがすぐ顔に出てわかりやすいのも魅力だ。仕事中もモニターを見ては、知ってる顔がやってくるとフロントに飛び出してきて、その人の名前を呼ぶ。私も何回「サチコさーん!」と呼ばれたかわからない。そして忙しいんだからもういいよと言いたくなるほど、話に付き合ってくれる。タイミングが合えば行きも帰りも見送ってくれる。そりゃ勘違いして通うだろ。

これが「よしかわ天然温泉ゆあみ」の支配人、小野田さんだ。

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