「フランシス・ハ」モノクロの世界で

「フランシス・ハ」の一番の特徴はそのモノクロの映像だろう。ヌーヴェル・ヴァーグを意識したと思わしきその映像は雄弁である。

主人公フランシスはなかなか大人になれない女性である。彼氏はいるが、親友ソフィーとのルームメイト生活が楽しすぎて別れてしまう。その親友ソフィーからも新たな地へ移住したいと申しだされる。しかも、ほかの友達(そんなに好きではない)と共同生活をするというのだ!

そんなソフィーにフランシスは容赦ない。酔っぱらっているとはいえ、彼女の彼氏を「嫌い」と言い切り、新たな共同生活者のリサに対しても「好きじゃないでしょ?」と確認。ソフィーの一番近くにいるのは「私」でなければいけないのだ。彼女にとっては。

そんなことを言っていたってソフィーとの別れの時期はやってくる。新たなルームメイトはアンティーク好きのカイロ・レン。まだマスクはかぶっていないようだ。彼らとの生活はうまくいくが、老けているといわれたりなんだかダサい。映画の冒頭でソフィーとじゃれあっていた底抜けの楽しさはそこには見られない。

これなら実家に帰ってやれとサクラメントに行ったり、やっぱり戻ってきて友人の家に泊めてもらったりする。友人に戦いごっこを挑んで嫌がられる場面は重要だ。フランシスの本質がみられる場面だ。

会食の席でも、パリに家を持つ男性に初対面にもかかわらず図々しく家を借りる。パリで電話がかかる。ソフィーからだ。

彼女は日本に行く。送別会には行けない。なぜなら勢いでパリに来てしまったからだ。

務めていたダンス団も、見栄を張ってクビになる。仕方なく母校で働くことになるが、そこでまさかのソフィーに出会う!この場面はなかなかコミカルで見どころだ。

酔いつぶれたソフィーと久しぶりに夜を過ごしたフランシスは、ここでは幾分か大人に見える。逆にソフィーは疲れてしまったのか、よれよれに酔いつぶれてごみ箱に吐く始末。

みんな、苦労してんだね、みんな

彼女はダンス団の友人に言われた通り、振付の道に進む。そこでささやかな成功をおさめ、映画は終わる。彼女にはまだまだ苦労は尽きないだろう。しかしその苦労は、今までのなんやかんやを経た、もっと大人のものになっているはずだ。


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