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073 自己実現とは貢献意欲を発揮し続けること

1.そもそも自己実現って何?

1-1自己実現とは「自分らしさの実現」である

自己実現に関するマズローの言葉
・「ますます自分らしくなりたいという願望,自分がなりうるものになりたいとする願望(the desire to become more and more what one is, become everything that oneis capable of becoming)」
・「自己充足したいという願望,即ち,潜在化している自分自身を顕在化させたいとする性向(the desire for self-fulfillment, namely, to the tendency for him to become actualized inwhat he is potentially)」
・「音楽家は音楽を作り,画家は絵を描き,詩人は詩を作らなくては,彼らは本当に幸福であるとはいえない(A musician must make music, an artist must paint, a poet must write, ifhe is to be ultimately happy.)
・人は本来的に成り得るものに成らなくてはならない (Whata man can be, he must be.)」とする傾向
・「自分自身の可能性を最大限にしようとする性向(the tendency to be the most that one iscapable of being)」
・「自身の基となるパーソナリティを顕在化すること(working out of one’s own fundamen74 商経論叢 第52巻第3号(2017.3)
tal personality)」
・「潜在的パーソナリティの実現(the fulfillment of its potentialities)」
・「パーソナリティ能力の活用(the of its capacities)」
・「自己充足,自己の表現(self-fullfillment, self-expression)」

file:///C:/Users/fwit0/Downloads/52-(3)-08.pdf

ちょっと長い引用だったかな

私なりに要約すれば、自己実現とは「自分らしさを実現すること」である

1-2自己実現の概念図

「やりがい」➡「貢献意欲」➡「自己実現」の図:筆者作成

この後詳しく説明するけど、自己実現は貢献意欲が発展したもの、貢献意欲はやりがいが発展したものだと考えている

やりがいは、社会の中で自分の強みを活かせた時に湧く感情

貢献意欲は、共通目的ある集団(組織)に所属し、メンバーとのコミュニケーションの中で湧く感情である

2.自己実現に対する批判に答える

2-1自己実現=成功者、称賛される存在、金持ち、というカン違いについて

「自己実現!」なんていうと、経済的成功者、社会的成功のイメージがあるよね

確かにそれを目的に生きている人はいる

でも、先ほども書いたとおり自己実現とは「自分らしさの実現」であって、必ずしも経済的成功・社会的成功とは限らない

例えば、アーティスト、研究者、オリンピック選手、職人、社会活動家などを思い浮かべてもらいたい

パッと思いつくのはきらびやかな成功者の姿かも知れない 

でも、その裏に日々研鑽している無名の者たちがすそ野のようにひろがっている

彼らはなぜずっとその世界にいるのだろうか?

金や名誉のためか?

おそらくそれが「自分らしさ」だからじゃないかな

そもそも人間は思うほど合理的ではない

経済的・社会的に見たら明らかにマイナスでも、心がうずいたら喜んで行うのが人間である

ウソだと思うなら、自分の日々の生活を振り返ったらよい

たとえば自分のファッションをどういう基準で選んでいるか?

予算やトレンドを気にしながらも、最終的には「自分らしさ」で判断していると思う

普段は無自覚でありながらも、「自分らしさ」とはそれくらい強い欲求なんだよね

この「自分らしさ」を自分の人生で完成させることが自己実現である

2-2自己実現という発想自体、個人主義的で現実のキャリア形成に当てはまらない?

巷には「自己実現という発想自体、個人主義的で現実のキャリア形成に当てはまらない」という批判があるようだ

でも実際は組織に加わらないと自己実現は難しい

自己実現とは、貢献意欲の極めつけだからである

これについてはこの後説明する

2-3自己実現という発想自体、発想がエリート主義で万人に当てはまらない?

確かに「自分らしさの実現」をしたくてもできない人はいる

身体的な事情、経済的な事情…

何らかのハンデキャップがあり、自分らしさを諦めざるを得ない場合だ

そんな人から「自己実現なんかきれいごとだ」「エリート主義だ」と言われれば、そうかも知れない

でも、どう言われようと、自分の人生を決めるのは自分しかいない

たとえ貧乏だろうと、苦労ばかりの人生だろうと、死の床についた時「ああ自分らしい人生だった」と言えたなら、その人は自己実現したことになる

逆に、きらびやかな人生を送り金持ちになれたとしても、人生の最後に「俺の人生失敗だった」と感じたなら、自己実現できなかったことになる

最後に「自分らしい人生だった」と言えるかどうかで自己実現は決まるということだ

3.自己実現とは貢献意欲の発展型である

自己実現は「貢献意欲の発展型」だと考えている

貢献意欲とは、バーナードの組織3要素のひとつである

共通目的
コミュニケーション
貢献意欲

バーナードの組織成立の3要素

つまり、組織に加わることが自己実現の道ということだ

ただし、組織は必ずしも会社組織とは限らない

3要素さえ揃っていれば、フリーランス同士のネットワークだろうと、地域コミュニティだろうと「組織」である

現代の社会は複雑な分業社会

その中で生きていくには、何らかのネットワークに組み込まれる必要がある

そのネットワークに共通目的があり、コミュニケーションがあり、メンバーみな貢献意欲が持っているなら、それは「組織」である

そこに加わることで自己実現の道は拓かれる

ではなぜ、組織に所属しないといけないのか?

自己を実現するには必ず「他者」が必要だからである

「他者」の存在無しにアイデンティティは形成されないということだ

同じやりがいを持つ者が集まるコミュニティの中で、情報交換しながら、メンバーそれぞれのチャレンジを行う

これをすることでアイデンティティ(自己)は強化される

つまり自己実現につながる

4.貢献意欲はやりがいの発展型である

やりがい(強みの発揮)は自己実現の基である

その要素は次の3つ

  • 自覚している強み

  • チャレンジ

  • 行為そのものの満足感

これらについて一つ一つ説明する

4-1自覚している強み

やりがいを持つためには、まず自分の強みを自覚している必要がある

はっきり強みだと自覚していなくても、自分の好きなこと、やりたいこと、向いていること、逆に嫌いなこと、やりたくないこと、向いていないことが自覚できていればよい

右に進むか、左に進むかさえ判断できればそれで十分である

4-2チャレンジ

次にその強みを生かすためのチャレンジが必要である

これができるかできないかで、やりがいに出会えるかどうかが決まると言ってもよい

もし本気でやりがいのある仕事をしたいのであれば、集団に飛び込むとか、新しいことを始めるとか、誰かに会いに行くとか、自主的な行動が必要

一歩踏み出せば二歩目が見え、二歩目を踏み出せば三歩目が見える

人はみなそうやって何者かになっていった

4-3行為そのものの満足感


4-1と4-2をやった結果、満足は得られたか?

この問いに「はい」と答えられなければやりがいとは言えない

やりがいとは内的な満足感なので、最終的に自己評価ですべてが決まる

4-4やりがいと貢献意欲の違い

ここでやりがいと貢献意欲の違いを整理する

違いは次のとおり

  • やりがいは個人的な満足度

  • 貢献意欲は組織内で湧き上がる感情

個人的なやりがいが組織内でも発揮できるようになれば貢献意欲

つまり、やりがいのバージョンアップ形が貢献意欲ということだ

4-5こういう会社に入社してはいけない

なんども言うけど、組織とは「共通目的」「コミュニケーション」「貢献意欲」の3つが揃っていること

この状況に身を置くことが自己実現につながる

逆に、次のような会社に入社したら自己実現は遠ざかる

  • やりがいを持つ者たちの受け皿になっていない会社(人が集まらない会社)

  • たとえ、入社したとしても貢献意欲が湧かないからすぐに辞めてしまう会社(定着率の悪い会社)

しつこいけど「組織」は会社とは限らない

組織成立の3要素の揃った場である

たとえブラックな会社に入社したとしても、サードプレイスがしっかりしていれば、そこを基点に自己実現の道を進むことは可能だと思う

サードプレイスとは、自宅(ファーストプレイス)や職場(セカンドプレイス)とは異なる「第3の場所」を意味する言葉で、アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグが1989年に著書『The Great Good Place』で提唱した

筆者

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