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がーる みーつ あいす

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小説。完結済。主演は田中樹、ヒロインは齋藤飛鳥をご想像してくださいませ。コメディかな。
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記事一覧

がーる みーつ あいす #1

12月3日、あっという間に日本は冬へと突入し、マフラーと手袋なしでは出歩けないほど冷え込んでいた。特に、仕事が終わって客のアフターに付き合った後の朝方の時間は地獄のような寒さだった。これからもっと寒くなることを考えると憂鬱でしかない。

駅のロータリーでタクシーを待っているとスーツの内ポケットに入れていたスマートフォンが震える。黒い皮手袋を右手だけ外して通知を確認するとさっきまで一緒にいた客の女か

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がーる みーつ あいす#2

「お客さん、お客さん!」

徐々に大きくなる声に、ぼんやりとした頭がかろうじて反応した。ゆっくりと、瞼を開くとタクシーの運転手がバックミラー越しに呼びかけていた。

「お客さん、そろそろ目的地ですよ」
「ああ」

周りを見回すと家の近くにある大通りまで走ってきたらしい。左手首につけた腕時計は5時40分を示していたが、どんよりと重い雲のせいで朝という感じはなかった。よく見るとちらちらと雪が舞っている

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がーる みーつ あいす#3

コンビニに入り、買い物かごを手に持つ。乱雑に弁当、スナック菓子やペットボトルのお茶、缶ビールなどを入れていく。

次に日用品が置いてあるコーナーへ向かい、コンドームを手に取り外にいる少女の方に目をやる。

少女はこちらに気づき少し微笑む。一度死んだ口角を気力で蘇らせ、できる限りの爽やかな微笑みを返した。そしてコンドームをかごに入れ、何事もないかのようなポーカーフェイスで会計を済まし、駆け足でコンビ

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がーる みーつ あいす#最終話

部屋のドアを開けて手探りで玄関の電気をつける。暖色系の明かりが2人を照らす。いつもは乱雑に脱ぎ捨てる靴を綺麗に揃えて先に部屋へと上がる。

「ちょっと散らかってるけど上がって、上がって」

そう言って少女の足元を見ると草履ということに気づいた。

「えっ、草履だったの!?足完全に冷えきってるでしょ?」

少女は美しい所作で草履を脱いで部屋へと上がる。そして微笑んで首を横に振った。

「平気。寒いの

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