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絵事常々 -制作のながれ⑥図起こし-
エスキースなどから辿ってきました「制作のながれ」、
ようやっと画面を触る段に参りました。
制作How toなのだから、もうちょっとこう、筆とか絵具とかビフォーアフターとかじゃんじゃん華やかな内容になると思っていたのですが…
下図・紙張り・複写紙など、地味に費やすこと1万5千字です。
まったくもって映えん…とぼやいていたら、
「でも制作ってそういう下準備が大半じゃない」とお言葉を頂きました。
激しく同意。
画面に色を入れだしたら、もう筋道だって紹介できることなどわずか。
「どうやってする」ではなく「こうしました」としか言えない。
でもせっかく制作ながれを追って書くわけですから、
できるだけ頭の中の考えを出しながらご紹介しようと思っています。
そんなこんなでまず第一手目は「図を起こす」工程のお話です。
図を起こす
「図を起こす」とは「形を出す」「見えやすくする」ということです。
下図を和紙に転写した後の状態がこちら。
(正対では見えづらいので、見下ろす感じで)
![](https://assets.st-note.com/img/1663067069791-hFtkjuh6Ig.jpg?width=1200)
今回は「黄土上汁」という絵具で作った念紙を使いました
あらかじめ大下図から転写用に「白描」を起こし、その通りに転写。
シャーペン0.3mmの芯を出さずに圧をかけていきまして写したものです。
そしてこちらが図を起こした後。
![](https://assets.st-note.com/img/1661682140154-5XM3y1On9n.jpg?width=1200)
ちと見えづらいですが、形が出て参りました
こんな感じで薄い線のみだった画面に形を出していきます。
今回は墨で図起こしをしました。
前回の「制作のながれ」でお話ししました、古梅園の御花墨です。
茶色がかった油煙墨で、使い心地が良いです。
図を起こす際に描き入れる墨は、完成時も陰影として残る(ハズ)。
今後、月の背景の空にもこの墨を使用しますので、空と岩山・草原に使う墨は統一しておくほうが馴染んだ空気になるかしら、と。
![](https://assets.st-note.com/img/1661682162127-RX0udlJPnq.jpg?width=1200)
草は後ろの陰に墨を入れて形を起こしています
![](https://assets.st-note.com/img/1661682211708-ips9jrgTJU.jpg?width=1200)
今回の手はこんな考え方です。
転写線に沿って墨を入れていくのですが、3パターンで作り込みます。
①形を明るく出してくるために形の後ろにくる部分を暗くする
②形を暗く出すために墨で形通りに塗る
③凹凸・立体感を出すために凹部分を暗くする
![](https://assets.st-note.com/img/1663498670426-XkSwDEkw8J.jpg?width=1200)
「日本画」だからこうするわけではなく、平面で物体を現そうとしたらだいたいこうなるでしょう、な素直な考え方です。
一応、「日本画」風に言うなれば、図を起こす時の考えは2つあります。
線で起こす「線描」と面で起こす「隈取り」です。
線描
読んで字のごとく、線を描いていきます。
念紙で転写された線は「アタリ」の線ですから、ほんちゃんのラインを起こしていきます。
墨でやらないといけないわけではありませんが、墨が何たってよく残るんですよね。
絵具は埋もれたり、場合によっては動いたり(定着していない)しますが、墨は「微粒子かつ膠と超絶練りあわされている」代物なのでまぁ残ります。
薄い濃いも水加減ひとつですから、便利なもんで。
そんな線による描き起こしも更に2種類に分かれます。
①骨描き
②括り
①は転写線の清書。
忠実に、あくまで最終的には目立たなくなるよう、薄い墨で細く描かれるものです。
②は物の形を表現する線。
均一なアウトラインではなく奥行きや陰影も表現する仕上げの線です。
![](https://assets.st-note.com/img/1663573298759-nuKvZRv9Rw.jpg?width=1200)
隈取り
平たく言うと「ぼかし」のことです。
ぼやあっと全体に淡く入れたり、ぴりっと効かせたり。
画面の雰囲気や陰影や重量感、物の存在を表現できる便利な手法です。
隈取りにはいくつもの種類があります。
![](https://assets.st-note.com/img/1663577127866-WwBLIO8KFj.jpg?width=1200)
今は使い分けて描く人の方が少ないかと思いますが、昔のビジネス彩色では
こうした効率的なテクニックを使って映える絵を描いてきました。
色々な呼び名もテクニックもありますが、
線描も隈取りも形をつくっていく考え方の1つです。
隈取りについて1本書きたくなってきた…また書きます。
もちろん水干絵具や岩絵具で図起こし・形づくりをしていってもOKです。
今回私が墨を使っているのは
「墨で揉み紙した和紙の雰囲気を残しながら絵にしたい」
「少しずつ浮かび上がるように形を出していきたい」
この2つの理由に尽きます。
必要以上に手数を重ねて和紙の風合いを消したくないので、
自然と馴染む色(後から塗りつぶさなくて良い色)で創っていこうと考えています。
作品によっては同じような図起こしの工程を、青やら黄やらカラフルな色で様々に仕込んでいくこともあります。
色の重なりで創り上げたい時はそうしますね。
ケースバイケースです。
いかがでしたでしょうか。
日本画に限らず、絵画制作にはつきものの「図起こし」かと思います。
絵画制作3ステップ
①下図やらでアタリをとって、ラインを清書して形を出す
②出てきた形の周囲や中身に色を施す
③全体をまとめる
おおざっぱにはこの3ステップが絵画制作するにあたっての、オーソドックスなところかと。
この第1段階をようやっとご紹介し終えたところです。
さて、次回は色を入れます。
このモノトーン画面についに色が入ります。
下塗りは「水干絵具」を使って。
水干の練り方もあわせてご紹介の予定ですので、どうぞお楽しみに。
さらっと「図起こし」、最後までお読み頂きありがとうございます。
また次回の投稿で。
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