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父と娘

あまり言葉を
交わさない
親子だった

何時からだろう
いや
ずっとずっと昔から
ふたりは
戸惑いの日々でした

あなたに投げかけて
踵を返した
私の問いは
最後まで
分からずじまいのまま
幕を閉じた

伝えたかった想いは
溢れ出るというより
ゆっくりと時間をかけて
抽出される
重たい液体のようで
誰にも見られたくもなく
それを自ら認めてしまうことが
恥ずかしさで
いたたまれないのでした

お別れの涙を
あなたの前で
流すことさえ
憚れて

心が素直さを取り戻す
唯一の在処で
ひとり枕を濡らした

悲しみと後悔と
あなたの娘として
至らなかった無念さ

淋しそうな
それでいて
それを認めたくないような
不器用なあなたに
天国に向かって
手紙を綴った

それからしばらく
空を見つめた

何処からともなく
あなたの声が
聴こえてくるようで
私はそっと
微笑み返した

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