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天秤

どんな風景を想い
どんな世界に傷ついて
やがてそれが
憎しみに変わってしまうのだろう

少年は思った
道端で転んだ傷のように
どんな悲しみも
消えてくれたら
いいのに

正義と正しさが
あやふやな境界線で
戦闘していた
敵は
異なる正義だった

この世界に
勧善懲悪の物語のような
すっきりした
コントラストは存在しない

それぞれの立場
それぞれの正義
心は如何様にも熱くなり
時に暴走して
サイレンが鳴り響く

『すばらしい新世界』では
感情は必要のない悪だと
切り捨てられていた

少年は思った
感情のない世界に
愛は生まれない

けれど
争いごとの火種になる
憎しみの連鎖は
古代ローマ時代から
あらゆる文明を経て
今もなお続いている

沈みゆくタイタニック
最後の最後まで
演奏を止めなかった
8人の楽団員

天秤に乗せられた
善と悪

ただ一切は
その愛のために

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