見出し画像

5/16

初Liveの余韻

初夏の夜
カエルたちの声に包まれて
一つの季節が移ろい過ぎたことに気づく
まだ肌寒い 雨がしきりに降っている
部屋干しする洗濯物の香りは強すぎて
忘れられない思い出がよみがえる
風に揺れるアイリスの白い花瓣
手を振る君の笑顔
また会う約束
静かな夜に熱が帯びて眠れない

迷蝶道

おはよう 暖かな日差し
25年前に踊った 君の指の感触
ほどけた瞬間 時間が止まってしまった
自暴自棄になって
全てを傷つけた
全てを拒否して
全てから逃げ出して
いつの間にか 時間だけが過ぎてしまった
一輪の花の中に君を見出せる?
歩き出そう 舞うように
迷う蝶ですら
その道を知る

ANIMA

私はあなたを取り込んだ
深い心の中に
閉じ込められたお姫様を
助け出すために
かつての美しい姿も
永久凍土の中で凍傷し
皮膚は爛れ
再生を冀うたび
血潮を吹いては
再び腐り果ててしまう
「ANIMA」
腐りかけた魂
色彩のない世界
絶対絶望世界のご主人様
仮面を被って泣いている
悲劇のヒロイン

無言の優しさを求めて

当たり前になってしまうと
感謝を忘れてしまう
夕暮れ時に差し掛かる
工事の音と睡魔の鬩ぎあい
同じことの繰り返し
同じ言葉の捏ね繰り回し
何を求めて鳴いているの
何も期待しない
ただ空気でもいい
言葉が苦手だから
全部嘘なんだ
何かほかに見つけた方がいいのかな
言葉のいらない物語を

比較境界線

詩なんて誰でも書ける
特別な事じゃない
だからこそ書いている
でもどこかで求めてしまう
唯一無二の詩風を
ああ、求めなくも 初めから僕らオリジンなのに
いらない いらない
自分の客観的思考
目を瞑って見出すもの
ただ流れていくもの
街並みのシルエット
闇に沈みゆくあなたたちの世界

月と紫陽花

老いた母
欠け行く下弦の月
闇を溜める紫陽花の水瓶
零れ落ちる夢と希望
濡れた地面に染み入る月明かり
根に眠る紫陽花の夢と希望
認知症の母を子どものようにおぶ
る 骨だらけのごつごつした感触
シミだらけの皮膚
不甲斐ないという感情
その感情は母から伝わる体重

ゴスロリ

「死ぬ」って言った後
全く君は電話に出ない
冗談だろうと思いながらも心配になった
君との距離 60Km
車を持たず最終電車も終わってた
正確な君の住所は知らなかったけれど
自転車を必死で漕いで
途中で縁石にぶつかって転んだりした
君の家の近くのコンビニの 写真を撮って送って帰った

刺激麻薬

ストレスがないことがストレス
平和な時間を望むけれど
何も刺激がないことは退屈過ぎる
平和はきっと刺激がないと続かない
刺激がないと腐敗してしまうんだろうね
僕らは業が深くて
同じ過ちを繰り返してばかりいる
他人の物を奪って
支配欲に駆られて
一体何を満たしたいんだろうね
きっと何も

あったかもしれない可能性の否定

お菓子を買いに行こうって
差し伸べた先に小さな手はない
ああ、違った人生を歩んでいた可能性
パラレルワールド 思い浮かべるけど
僕らはヘッセの子だったね
ニーチェの思想
どんなに自分の人生が惨めなものだったとしても
もう一度同じ人生を繰り返そう
何度も何度も繰り返して笑いあおう

火の鳥

今こそ意志を 盲目たる憂鬱の雲
ミッドライフ・クライシス
人生の危機 いつからだろう
長いトンネルだ25年の歳月
四半世紀ずっと諦めの哲学を求めていた
心の中に宿る火の鳥
固定観念でできた世界 
焼き尽くせ
ここは強制収容所の小さな独房の中
想像力で破壊しろ
大空へ翔けていく火の鳥

プロメテウス

ああ、肝臓を禿鷹に食われ続けても
俺は人間に火を与えたことを後悔しない
闇におびえ 寒さに苦しむ人間たちに
希望の暖かさを与えたんだ
それが災いをもたらすことになろうとも
ファム・ファタールに溺れられる幸福
苦しみのないところに実存はない
快楽のないところにもまた実存はない

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?