『少女ABCDEFGHIJKLMN』最果タヒ【読書感想文】
最果タヒさんの『少女ABCDEFGHIJKLMN』。
最果タヒさんは、ずうっと気になっていた方で、今回たまたま図書館で「このタイトルは、、?」と気になって手に取ってみました。
結論から言うと、すごく好きでした…。
まだ1作品しか読んでいないのですが、表現とか言葉が美しかった、、瑞々しいというか…沁み入りました。
最初「???」っていう世界観から始まるんですが、ぐいぐい引き込まれていって、ページを捲る手が止まらない。
ファンタジー寄りな設定でも、ずしんと心に刻まれる内容というか…良かった…よかった…。
ほかの作品も読みたいなって、とても思う。そんな感じでした。
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いちばん好きだった章は、『宇宙以前』
人間は個であり、ひとりを充実させることで最高の幸福を手に入れると、最近の啓発本的なものでは言われているけれども…それって簡単にはクリアできない問題でもあるんだよね。
触れている世界や繋がっている人がいるから、必ずしも、最後まで個で生きて個で終われるわけではない。
愛情や執着によって、どうしても揺らいでしまうものであるし…。
人間はつい寄り添いあいたくなってしまう生き物である。ぬくもりを必要とし、誰かを愛さずにはいられない生物だ。
自分だけの世界だと孤独でいいのかもしれないけれど、誰かを愛してしまったら、孤独から抜け出さなければならない瞬間もあるな、と。
この章を読むと、それでもいいんだよって、「個」や「孤」から抜け出したからといって、自分の世界は揺るがないし、弱いわけではないんだよ、と言われている感じがした。
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「愛」を証明するのに、なにが必要なの?
そんな問いかけをさまざまな背景や条件から導き出してくれるような、そんな小説だった気がする。
価値観の違うもの同士だって惹かれ合うし、いくら気持ちが通じ合わなくても、言葉がすれ違っていても、苦しさの中に愛の痛みがあったりする。
また、感情の生まれないものだとしても、一度興味を抱いてしまったら、どうにかしてその愛を証明しようとするかもしれない。
愛情を知らないままの物体は、あたたかいものではなくて、冷ややかな態度で感情をぶつけてしまうこともあるかもしれない。
しかしながら、愛を履き違えていることも。
愛をそばに置いておく。
それだけが幸せになるすべてではないんだけれども、若い女の子たちは、それが世界のすべてなのかもしれないよね。
もう少し若いときに読んでいたら、また何か違った道がひらけていたのかもしれないな。