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『はーばーらいと』世の中のほとんど全ての思考は宗教的【読書感想文】

※この記事は、ある夏の暑い日に書いた記事です。

最近は、誰かの言っている言葉や書いている文章について、何を云わんとしているのか、全然わからなくなってしまって戸惑っています。
暑さで頭が回らないのか、そもそも理解力がないのか。はたまた、理解しようという気持ちが無くなってしまったのか…そうゆう意味で戸惑っているのかもしれない。


どのような文章でも、人によって理解できる部分は違っていて、見た人は、その中でも特に自分が言いたいことや共感できた部分についてを強く語りだす。


評価はもちろんのこと、批判的なことでも、反応するということは、その人(書き手)に対して少なからず興味を抱いているということ、だと感じる。


興味が無くなってしまったとき。
それは全くの「無」で、お互いが空気以上の軽くて透明な物体同士へと変化してしまったといえる。
見えないもの同士であれば、評価も批判もない。
それは良いのか悪いのか…良いとも悪いとも言えない。


出会った瞬間とか、話した内容とか、嬉しかった出来事も悲しみ続く場合も、今までの記憶も全て無くしてしまうことができれば、それこそ究極であると云えるが。記憶だけ残ってしまった身体は、いつまでも記憶に縛られて、何処へも行けなくなってしまう。
身体的な縛りよりも精神的な、思考の縛りは呪いである…。
こんなことを、朝からぼんやりと考えていた。
そんな朝です。


さぁ、今日は吉本ばななさんの『はーばーらいと』です。


前置きが長くなりましたが、あらすじからいきまーす。
※一部ネタバレが入るかもしれません、ご注意を。



◇あらすじ


小さな港の近くで穏やかに暮らしている「つばさ」と、幼い頃から彼を慕っていた「ひばり」。
ひばりから久しぶりに手紙が届いた時、彼女の人生は両親の信仰により一変していた。

染まってしまったもの、何によっても奪うことのできないもの。
誰もが自分らしさを求め、自由を掴もうともがいているが、内側からでは近すぎて見えていないものもある。
近しい人との訣別や再生を描くストーリー。





宗教団体や宗教二世の暮らし・運命について書いてある、すごく難しい内容の小説でした。

誰にでも「幸せになりたい」という想いはあるはずだが、家族でも友人でも、同じ枠組みを誰かに無理矢理当てはめることはできない。

みんなそれぞれ違ったカタチの幸せがある。
同じものを押し付けられることで、それが誰かを傷つけて、壊し、自由を奪うことになり得るかもしれない。

誰かの幸せは、誰かの不幸せでもあるのだ。



ほかの記事・コンテンツでも書いたことがあるが…
誰かを想っての「善意」は、その人にとっては、全く「善意」ではない時がある。
「あぁ、可哀想に」っていう心の言葉がじわじわと滲み出てきているのが目に見える。

あなたの中の「正しい」と思うものから良し悪しで決定していますよね?
あなたの正義感が突き通されたら、それは気持ちの良いことだからやっているだけですよね?となってしまう。



あぁ、いま書いていて気づいた。
これのことか。
わたしの話だったのか。
なるほど、私のことを狭くて小さな世界に収まっているモノだと、どうしても言いたいみたい。当てはめたいみたい。良いモデリングでしたね。と言ってあげよう。



そうだよ、わたしは所詮この自分の小さい世界でしか生きていけない。
もうこのまま、ずっとここに居るから。そこには行かないから、だから安心してほしい。そちらの世界を穢したりしないと約束するよ。

もう、飛び出していって、他所の世界の邪魔をしたり、高望みしたり、誰かに憧れを抱いたり、会ったり、触れたり、新しいものと出会うことなんてないであろう。
この小さな世界を守っているだけなんだ。
そう、こんな感じ。

宗教によって、信念を奪われて、囚われてしまうというのは、こういった心の縛りが存在しているから?

そうであれば、この思考ももはや宗教の一部に匹敵するのかもしれない。


自分個人以外のことを夢見ることが、すでに宗教的な思考を生み出すのかもしれない、なんて、くよくよと考えてしまった。



人間は、たったひとり、自分のことだけを考えれば幸せになれるはずなのに、どうして他所の人のことで頭をいっぱいにしてしまうんだろう。


それは、もしかしたら、様々な思考を乗っ取り、インプットし、自らの幅を広げたいという欲求からなのか。



はたまた、単純に血を絶やさないための手段のひとつとして遺伝子に組み込まれているのだろうか。


もしかすると、宗教で守られている方が、幸せでいられるのかもしれない。だってそこは、自分の幸せを第一に考えられるから。






すべてを理解できないまま、人間は朽ちていくばかり。


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