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『夜行秘密』 なにもかもが繋がれた世界【読書感想文】

カツセマサヒコさんの『夜行秘密』を読んだ。

今回実家にのんびりと帰省している。
パソコンも持たずに。なつやすみ。

折角こんなにも長い期間おやすみしているのだから、読書でもしようかなと思って、書店へ行ってごっそりと本を買ってきた。

その中のひとつがカツセマサヒコさんの小説。

つい最近行った美容室で、たまたま見ていた雑誌の中に、カツセマサヒコさんのコラムが書かれていたんだ。
たった1文字。ほんの少しだけ掻い摘んで読むつもりが、あっという間に引き込まれてしまって、ぐんぐんと読んでしまった。

「何だかわからないけど、この人の文章好きだ…」って思ったんだよね。

登場人物の魅せ方とか、台詞の選び方とか。
思考を巡らせている間の描写とか…引き込まれるなぁって思ってしまって、羨ましくて嫉妬に近い感情だった。



高校生の時近くの書店で気になる小説を見つけては、バスやお迎えの時間が来るまで一冊の本を少しずつ読んでいたことがある。
その時のことをふと思い出した。

時間をチラチラと気にしながら、だけど短時間で一気に集中していて、隣にあるゲームセンターの音なんか耳に入らないくらい物語の中に入っていた。
隣に彼が近づいてくる気配さえも感じることなく。

終わりを告げる振動で、日常に戻っていける。
誰にも気づかれないように、そっと、何もなかったように。彼とわたしだけの秘密に。


『夜行秘密』という本は、indigo la Endというバンドとコラボして書かれたもの。
収録楽曲をベースに、作られている。

カツセマサヒコさんによって、曲の中にいる人物が、誰もが抱えている感情を持つ『登場人物』となって出演している。
本能的に落ちてしまう恋の感覚とか、人間の泥臭い感情とか。あとは、感情のもたない関係性とか…


今まで生きてきた中で、
「あぁ。こんな瞬間あったな」
とか不思議と思い出させてくれる。
思い出したくない感覚までも、やけに綺麗に表現されていて、胸がえぐられる瞬間があるような小説。

曲と曲をうまく繋ぎあわせて書かれた小説は、最後の最後に
『すべてに終わりがなく、何もかもが繋がれているんだ』
と思わせてくれるような感情になる。


ページをめくるたびに、人間の底が暗いことを知ってしまう。
つづきを読むたびに、繋がることの怖さを知る。
救われる方法はないのだろうかと前に戻りたくなるのに、指は次のページに進んでしまうんだ。


怖さの中に、澄んだ空気を含んだ初恋のようなものが、ぽつんと真ん中で輝いている。

『大事な人を大切に想い続けるのっていけないことなのでしょうか?』


正義と不義がシームレスな状態でいて、「これも愛なのだ」と錯覚してしまうような。不思議な感覚に堕ちていく。


読んでいくと、わたしの持っている黒い部分を共有している彼女(彼)が出てきて、少し怖くなる。
『誰しもが抱く感情』
『矛盾しているんだけれど、どちらの味方もしたくなる』

正当化したくなる感情が沸き起こっては踏み潰す。


後悔はしていないんだけれど、時間を『あの時』に巻き戻して、すべて曝け出していれば…と思ってしまうような。そんな小説。

すべてを曝け出すことって怖い。
隠すなら、隠し続けないといけないね。
だって彼とわたしだけの秘密だから。



この小説を読み終わって、どんな気持ちになったのか、みんなに聞いてみたい。

わたしは、indigo la Endの『夜行秘密』を聴かずに、先に小説を読んでいたのですが。

読んでから、アルバムを聴きたくなってしまって。

今、曲を聴きながらこのnoteを書いている。
合間に、歌詞を読みながら。

この曲があの文章になるんだ…と思うと、すごく不思議な気持ちだし、本当に嫉妬してしまう。

もう少し曲を丸呑みしてから、また色々追記していこうかな。


今日はこのへんで、おやすみなさい。


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