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12月の朝のベッド

12月、遅く起きた朝,      晴れ 。

この時期、平日の起床時だと夜がまだ明けきらずに外は暗い。
リビングの照明をつけるこたから始まる朝だ。

休日の朝、日差しが部屋に溢れている。
ぼんやりと、静かに漂う光の群れを眺めて過ごす。
隣のベッドからは、妻のさほど大きくはないいびきが不規則に聞こえてくる。
無呼吸症候群かもしれない。起きたら検診を進言してみようか。

そして、今年ももうすぐ終わるのだな…
師走も差し迫った頃より、このくらいのタイミングの方がより一年を振り返るには頃合いだ。

思い返してみると、今年もあっと云う間に過ぎた一年だった。それでも、一つ一つの出来事を思い返そうとすると、それはそれでやっぱりそれなりに時間の経過を感じるわけで。
ただ残念なことに、詳しく思い出そうとすると、なんだ霞の中のように頼りない記憶しか残っていない。
人は歳を重ねるにつれ経年劣化が進み、記憶保存のフィルムは、かすれた記憶しか残せないのだろう。
鮮やかで生き生きとした再生は望むべくもない。
まあ、それはそれで味わいがあるから。今のおれには丁度いい。

今年の春はどんなだっただろう。
道端に咲く花を、春の夜に浮かぶ朧な月を、おれは眺めだろうか。
雪解けの風は、冷たかったか。それとも暖かかったのか。

夏は暑かったか。
もう遠過ぎてよく思い出せない。
ここ何年も、海に入った時の冷たさを感じていないな、とふと思い至る。
でも今年は、海沿いを走り岬へは行った。
確かあの日は暑かったように思う。
その時の夏の日差しと影のコントラストだけは、記憶の表層に貼り付いている。

秋はそれを楽しむ余裕もく、憂いと慌ただしさの中で過ぎた。
一番長かった季節のように思う。それでも一日一日は過ぎて行くものだ。
なんといっても、経験した事のないような大きな地震があった。
あの日、ブラックアウトに見舞われた夜。
その夜の星空は、どんなふうに輝いていたのだったか。

そして今年も雪が降り、こうして冬の朝を迎えている。
イエスキリストは「明日を思いわずらうな」と教えてくれている。
それでもおれは、どうすることも出来ぬ明日を性懲りも無くまた考えてしまう。
もう一度、心の中で唱えてみる。

明日を思いわずらうな。

今日という日が、穏やかでありますように。
そろそろ起きるとするか。
いや、もう少しベッドの中で音楽でも聴いていよう。

少し小さめな声でおれはiPhoneに話かける。
ベルベットアンダーグラウンドのSunday morningをかけて。

#エッセイ #朝 #年末 #記憶 #季節 #一年

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