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お手軽センチメンタル

この時期おれは、ちょっとしたセンチメンタルなジャーニーを密かに楽しんだりしている。
それというのも、お手軽な方法があるのだ。

センチメンタルジャーニーといっても、なにも雨の中を駆け出すような恋に破れたわけではない。

そう、ジャーニーといっても、つかの間のセンチメンタルタイムのことをそう呼んでいるのだ。
いや、タイムって何のことだ。

それは、ふとした瞬間の胸を締めつける甘酸っぱい一瞬のことだ。
実際に連絡船に乗ったり、各駅列車に飛び乗るのとはちと違う。
古くてすみません。


その方法とは、この時期、あるいは春さき限定にはなるのだけれど。

朝、シャワーを浴び、まだ濡れた裸を吹き抜ける風に晒すのである。
この時期特有のひんやりとした風に晒されて、「ひゃっ!」と声が洩れると同時に、その瞬間、あの日あの時の記憶が冷たい風と一緒に吹き抜けて行くのである。

いつの思いが吹き抜けて行くかは、その時しだいだ。
甘いも切ないも、その日しだい。

あなたも一度試してみるといい。
吹き抜けるその一瞬の風に、きっとあなたの少し切ない思い出が甦るはずだ。
そう、ちょうど思い出の香りが、一瞬であの日に引き戻すような感じに似ている。

歳を重ねると、時々、センチメンタルなジャーニーはあった方がいい気がするのだ。
若い頃と違い、「過去」の取り扱いにもそれなりに慣れた。

そう、ちょっとのセンチメンタルジャーニーで、わりと一日を優しく過ごせたりするものだ。


最後に注意事項を。
夏の風は単に気持ち良いだけだし、冬の風でやると風邪ひくよ。

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