見出し画像

荒んだ心に染みるのは、

浪人していた1年は、確実に私の人生で1番つまらない1年だった。もう今となってはほとんど思い出せないくらい。辛すぎて記憶から抹消したいのだろう。


地元の予備校に通っていたが、新たに友達や恋人ができることはなかった。同じ高校の友達が1人だけいて、いつもその子と黙って授業を受けた。休み時間も話すことが無くて、毎日つまらないと思いながらも、仕方なく天気の話をしていた。
楽しみなことが無さすぎて、18歳の女子の唯一の楽しみが、土曜の夕方の名探偵コナンのアニメだった。土曜日だけは早めに帰って、テレビの前にスタンバイして、リアタイしていた。もともとは別にアニメ好きではない。相当やばい。


友達はみんな地元を離れ、都会の大学でキラキラしたキャンパスライフを送っているのに。自分は田舎で、去年と何も変わらず、ただひたすら勉強するだけの毎日。SNSで、単位が〜、とか、サークルが〜、という話が流れてくるのが辛くて仕方なかった。
もちろん仲の良い友達は応援してくれていたし、励ましてくれた。夏休みや正月に地元に帰ってきて、遊んでくれた。でも、それも辛かった。キラキラした大学生になっている友達を見て、もうこの人たちは日常生活で私のことを思い出すことは無いんだなと、思い知った。


こんな私の浪人生活を支えてくれた曲がある。シンガーソングライターの山崎あおいさんの、「東京」という曲だ。上京し、東京に染まっていく人目線の曲。というと、「東京に染まっても君のことは忘れないよソング」だと思われるだろうが、違う。この曲の主人公は「東京に染まって変わってしまい、君のことを忘れていく。東京に染まっていく自分を嫌いになれない。」というのだ。正直だな。

本当に落ち込んでいる時、ストレートな応援ソングを受け止めきれないことがある。
浪人中の私はまさにそうだった。大学生になった友達はみんな都会に染まって、私のことなんて思い出さない。そう言ってくれる方が、あの時の私にとってはリアルだったし、中途半端な優しさや励ましは逆に傷つくだけだった。
みんな私のことなんて忘れて、都会で楽しんでいるけれど、それでも私は今ここで頑張るしかない。そう思って歯を食いしばって勉強する。その方がまだ惨めな気持ちにならずに済んだのだ。


ネガティブなことばかり書いたが、レベルを下げて現役合格できる大学に行かなくてよかったと思っている。それくらい大学生活は最高に楽しかったし、大学時代に出会った人間関係は、私の人生にとてつもない影響を与えている。学年が違えばこの人に出会うこともなかったと思うと、浪人してよかったと心から思う。そう思わせてくれる出会いがたくさんあった。


今日から心を決めて、勉強する浪人生へ。


東京に染まって変わってしまう 
自分を嫌いになれないんだ
僕は僕だけれど変わりたいんだ 
思い出も少しだけ置いてゆくよ

東京/山崎あおい


山崎あおいさんの曲はどこか影がある歌詞が多くて、心に寄り添ってくれるので大好きです。

この記事が参加している募集

思い出の曲

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?