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【エンタメサービスのUI/UX分析】 Spotify編

株式会社FuturizeでUIデザイナーをしている おだりおです。
社内のデザインチームで、「様々なエンタメサービスのUI/UX分析をする記事を書こう」プロジェクトが発足し、今回第一弾の記事を私が担当します。よろしくお願いします🙌

はじめに

Spotifyは、世界中のクリエイターによる数千万もの音楽やポッドキャストを楽しむことができるデジタル配信サービスです。
2024年4月時点での月間アクティブユーザー数は、全世界で6億1,500万人。そのうち有料会員数は2億3,900万人
Apple MusicとYouTube Musicのユーザー数 約1億人と比べると、Spotifyは世界最大の音楽プラットフォームと言えます。

https://spotifynewsroom.jp/company-info

今回は世界で最も使われている音楽アプリSpotifyをUI/UXデザインの観点から分析し、何がSpotifyの強みなのか、ユーザー体験を向上させているのかなどを考えてみようと思います。

ぜひご一読ください。


ここがすごい 〜UI編〜

1. コンテンツを邪魔しないが印象的に残るトンマナ

Spotifyは、ロゴで使われている緑と黒を基調としたカラーパレットをアプリ内で使用しています。黒に映えるSpotifyの緑色は印象にとても強く残る色ですが、よく見てみると実はアプリ内で使用されている箇所は少ないことがわかります。

例えば、 曲をフィルタリングした、お気に入りに登録した、ダウンロードした、今イヤホンに繋がっているか等…【今選択されていたり、今後変える可能性があるようなもの】が特に重要視され、目立つ緑色が使用されています。

アクティブなタブのアイコンや、再生ボタンなども重要度が高いボタンではあるのですが、場所によって緑色ではなく白色が使用されており、重要なものをより厳選していることがわかります。

ブランドカラー(緑)を多用しない意図としては、Spotifyのアプリ自体の色が、メインである楽曲などのコンテンツを邪魔しないようにという配慮があるからだと思います。

音楽アプリでは、楽曲のカバー画像やアーティスト写真など、コンテンツ自体がそれぞれの色や世界観を持っており、コンテンツが並んでいるだけでも統一感がなくごちゃごちゃして見えてしまう恐れがあります。
アプリ自体の色が強いとさらに統一感がなく見え、ユーザーがコンテンツに集中できなくなってしまうでしょう。


これは約8年ほど前からのデザイントレンドなのですが、コンプレクション・リダクション(Complexion Reduction)というものがあります。これはユーザーの使いやすさを向上させるために、余分な要素を取り除き、本当に必要な情報だけを表示することを目的とした手法です。

色を削ぎ落とすことでコンテンツが主体となり、最近ではさらにコンテンツ周辺のUIもコンテンツに応じて変化するよう透過する色が使われていたりと、どんどんアプリ自体の固定の色というものが少なってきています。

ですが、UIをシンプルにしすぎてしまうと、今度はアイデンティティの喪失に繋がってしまうため、競合アプリとの差別化もしにくかったりするのですが、Spotifyはほどよいバランスでアプリ内でブランドカラーを使用したり、メインの緑色と同じトーンの明るいカラフルな色を複数色サイトやバナーなどのデザインシステムで使用しており、アプリだけでなくサービス全体のブランドイメージの構築に成功していると思います。


2. ローカライゼーション

Spotifyは190以上の国と地域でサービスを提供しており、単にUIを各国の言語に翻訳したり、プレイリストの曲を変えるだけでなく、それぞれの文化や人々の嗜好に応じてテキストのトーンや表現、カバー画像のデザインなども変更しています。

ここまでの細かいローカライゼーションは、アプリの操作性や、聴くことのできる曲数などと同じくらい、世界的に多くのユーザーに選ばれる理由なのではないかと思います。


3. シンプルなアプリ内構造

アプリ内で異なるセクションに移動するため、一般的に画面下部にタブバーが設置されますが、Spotifyは他の音楽アプリと比べてタブの数が厳選されています。

YouTube MusicやApple Musicでは「検索」の他に「見つける」項目が設置されていたり、無料版を使用している場合にはアップグレードの導線などをタブの項目として設置していて【5つの項目】を並べているのに対し、
Spotifyは「ホーム」「検索」「マイライブラリ」の3つのみ。
「好みの音楽に出会い、聴く」という基本的な体験への過程を、よりシンプルにしているのがわかります。

しかし2018年のSpotifyを見てみると、他アプリと同じように「見つける」項目と「ラジオ」項目があることがわかります。(2024年現在では「見つける」タブは削除され、「検索」タブの中に入れられています)
タブの数を減らすというのはユーザーの行動を迷わせてしまうことになる可能性もあるのですが、ホーム画面と検索画面内にうまく要素を取り込んで、他項目とUIを差別化するなど、ユーザーが直感的に期待する動作をすることができる構造・UIになっていると思います。


ここがすごい 〜UX編〜

1. 導線がシンプルで使いやすい

最近よく聴いている曲・アーティスト・プレイリストなどが、ジャンルを問わずホーム画面にまとめて表示されるため、アプリを起動してから聴きたい曲を聴くまでの操作がとてもスムーズで早くストレスがありません。


2. 新しい音楽との出会い方が豊富

● ジャンル検索
それぞれのジャンルごとに、おすすめのプレイリストが複数表示されます。ジャンルの中でも、「これは絶対聴いて!」「ドラマで話題なのはこれ」「最近流行ってるのはこれだよ」というような感じでプレイリストをグループ分けしてくれているので、全然知らないジャンルでも「まずこれを聴いてみようかな」とあまり考えることなくプレイリストを選ぶことができます。

● ショート動画式のレコメンド
MVなどの映像と共に、サビをTikTokのような縦動画式で聴くことができ、気に入らなかったら次の曲へスワイプ、気に入ったらお気に入り登録をしてフルで聴くというように、直感的に好みの曲と出会うことができます。

「何かを選ぶ」というアクションはユーザーにとって負担になることが多いので、このように直感的に選べるUIはUXの向上に繋がっていると思います。

● 自分で作ったプレイリストへのレコメンド
Spotifyでは、自分でプレイリストを作ることができるのですが、選んだ曲と似たような系統の曲を自動でレコメンドしてくれます。知らなかった好みのアーティストや楽曲に出会えることも多いので、個人的に好きな機能です。


3. 情報量豊富なアーティスト画面

アーティストの楽曲だけでなく、今後のライブ情報や販売中のグッズなどの情報、アーティストの基本情報など、様々な情報が掲載されています。アーティストをフォローする機能もあり、新曲が出た際には通知がくるので、情報をしっかりとキャッチすることができます。

また、よく知らないアーティストでも、「とりあえずこれを聴いてみな!」と言われているようなまとめプレイリストなどが表示されるため、じゃあとりあえず聴いてみようかなと思わせてくれます。これは仲のいい友達がおすすめのCDを借してくれるような感覚に近いような感じがして好きです(笑)

アーティスト画面にも、関連するアーティストや楽曲と混ざったプレイリストなどもレコメンドしてくれるため、どんどん好みのアーティストや楽曲と出会いやすいのがSptifyの良いところだと思います。


4. どんどんパーソナライズされていくコンテンツ

これがSpotify最大の魅力ではないかと個人的に思うのですが、音楽を聴けば聴くほどコンテンツが自分に最適化されていきます。

例えば最近よく聴いている曲をまとめた自分専用のプレイリストを自動で作ってくれたり、少し前にはまっていた曲をレコメンドしてくれたり、ムード別のプレイリストなども自分専用に作ってくれます。

自分に最適なコンテンツ(興味があるコンテンツ)が表示されるようになることで、どんどん自分好みの楽曲を聴くことができ、新しい楽曲と出会うハードルや音楽を聴くという行為へのハードルも下がり、アプリを使用する頻度が上がると思います。


まとめ

Spotifyはパーソナライズ機能が優れていたり、新しい音楽に出会う導線が多く設置されていてハードルがとても低いことから、自分の好きな曲のみを繰り返し聴くよりも、新しい音楽に出会ったり、音楽を気分作りやムード作りに使用するユーザー向けのアプリになっていると思います。

また、世界中のローカライズやパーソナライズに力を入れている点から、とりあえずアプリを開けば何か聴きたい曲があるという安心感があったり、
アプリを開いてからすぐ直感的に曲を選ぶことができる操作性の良さなどがUXを向上させている主な理由なのではないかと思います。

ローカライズをするにあたって実際に外国へ調査しに行ったりもしているようなので、より世界中のユーザーが使いやすくなるように日々アップデートを検討していく姿勢は、やはりプロダクトをより良くしていく上で欠かせませんね。今後のアップデートにも注目してみようと思います。


Futurizeについて

Futurizeは、エンタメ領域のプロダクト開発スタジオです。
これまでに多様なエンタメプロダクトを手掛けてきた経験を持ち、エンタメへの情熱を持つメンバーが揃っています。

特にデジタルネイティブ世代をターゲットにしたプロダクト開発を得意としており、
グループ会社である株式会社Mintoと連携して、プロダクト開発だけなく、コンテンツ制作から流通まで一貫してサポートが可能です。

エンタメプラットフォームの立ち上げや、次世代のエンタメプロダクトの開発をお考えの企業様はぜひご相談ください。


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