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【SFショートショート】入場制限75歳以上大人のディズニーランド

2060年。

日本の高齢化は進み、70歳以上は人口の半分の4000万人に達した。2人にひとりは老人という時代が到来した。

街を歩いてもグレーヘアの老人しかいない。日進月歩で医学は進歩しており、日本人の平均年齢は110歳を超えようとしているところだった。

若者は困窮していた。若者の選挙の投票率は90%を超えているのに関わらず、その老人の数の多さで、老人に都合のいい法律が増えていくばかり。

所得の7割は社会保障にまわされ、文字通り若者は年寄りのために働いていた。

「おい若者、ちゃんと子供を産んでくれないと困るよー!わしらは110まで生きるんだから。次の稼ぎ手を産んでくれないと」

そんな風に年寄りは道ゆく若者を茶化した。若者たちはそれに文句を言う気力すら失っていた。

ある時18歳で会社を起こし、新興サービスで荒稼ぎしている若手起業家がテーマパーク建設に乗り出した。その名も「大人のためのディズニーランド」。入場制限は75歳以上だと言う。

また、アトラクションやパークについて取材は一切禁止で、中の様子を口外してはならない。しかし、このパークを訪れた老人たちは口々に「天国のような体験だった」と笑みを浮かべ、その数日後には笑みを浮かべたまま自然死するとか。

103歳の老婆と暮らすM氏もこれは人ごとではなかった。ある日老婆は「友達にチケットをもらったから」と大人のディズニーランドに出かけて行き、幸せそうな表情で帰宅した。

「ディズニーランドどうだったの?」と聞いても、「それは天国のようだった」と笑みを浮かべるだけで、それ以上は話さない。

その3日後居間でお茶を入れていると、老婆の部屋の襖が開き

「死後の世界はね、それはそれはいいところよ。熱海や伊豆よりもいいところなんだから。友達もまた行きたいねって言うからね、おばちゃんちょっと旅してくることにしたよ。しばらく帰ってこないかもしれないけど心配しないでねえ」

大人のディズニーランドは口コミで広がり、連日大盛況。翌年には75歳以降の人口は358万人まで減少した。

日本の超高齢化は大人のディズニーランドの出現で解決されたのであった。

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