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シリーズ:コロナと激動の消費者心理【7-9月期調査⑥】女性の化粧品や美容への支出増加への転換点にさらに近づく

企画・製作 株式会社矢野経済研究所 未来企画室

このシリーズでは、WEBアンケート定点観測調査(年4回実施)をもとに、日本の消費者の消費・心理・生活がコロナ禍でどのように変化したのかについて、気になるトピックを調査ごとにお届けしています。

当シリーズ投稿の趣旨や出典元の消費者調査につきましては、初回の記事でご紹介しておりますのでご覧ください。

<シリーズ説明>

調査概要

女性の化粧品や美容への支出

「化粧品や美容(カット、ネイル、エステ等)に使うお金」の金額が、前の四半期(3か月前)と比較して最近どうなったかを、「増えた」「変わらない」「減った」の3段階で調査し、DI値を計算した。DI値は基準となる50のとき、「増えた」と「減った」の割合が拮抗しており、50を上回ると、「増えた」が優勢に、50を下回ると「減った」が優勢であることを示す。下図は女性の結果を示している。

化粧品や美容(カット、ネイル、エステ等)に使うお金(DI値)【女性】(n=1800)

女性の化粧品や美容(カット、ネイル、エステ等)に使うお金のDI値は、今回7-9月期調査で42.8となった。これまで最大だった昨年10-12月期の40.8を2.0ポイント上回って過去最大となった。外出が制限される状況が続く中でも、美容関連への消費支出は回復基調にあることがわかる。しかし、全体的な増加傾向への転換を示す50の値には未だ道半ばだ。

女性の化粧品や美容への支出は昨年4-6月期に、コロナ禍で外出が制限された影響で大きく減少し、その後徐々に回復してきていた。今年1-3月期に2回目の緊急事態宣言が出された影響で、一度、回復が中断される影響を受けた。しかし、その後4-6月期からは引き続き外出に制限がかかるものの、再び回復。今回さらにその傾向が続き、過去最大を更新する結果となった。

今後の見通し

今後の見通しとしては、さらなる回復が見込まれる。今回7-9月期調査は感染拡大局面にあり、外出時間も抑制的な傾向が続いている。にもかかわらず、消費に関しては、化粧品のみならず他品目においても概ね回復が続いている。そのため、今後は感染状況の如何に関わらず、今回のような回復傾向は継続していくものとみられる。

ただし、このまま感染拡大が悪化し、医療崩壊に至るなど、人々の消費者心理を冷やすような状況や、ロックダウンなどの超法規的措置に頼らざるを得ない状況になると、さすがに消費だけ無傷とはいかないだろう。そうならない限り、消費は順調に回復していくと考えられる。

しかし、DI値の回復は見られるものの、DI値が50を下回っていることからわかる通り、依然として明確な増加傾向に反転したわけではない。未だに多くの人が消費支出を抑えている状況だ。全体的な消費回復には相応の時間と対策が必要になるとみられる。ワクチンの普及に期待がかかるが、その効果には疑問が残るとの意見も聞こえる。先行きは不透明であり、引き続き注視が必要だ。

出典:「コロナ禍の消費者心理・消費・生活を捉える定点調査2021」

※本シリーズの投稿内容はすべて執筆者の個人的な見解を示すものであり、執筆者が所属する団体等を代表する意見ではありません。また、投稿内容はいかなる投資を勧誘もしくは誘引するものではなく、また、一切の投資の助言あるいはその代替をするものではなく、また、資格を要する助言を行うものではありません。


今春、矢野経済研究所 未来企画室は新プロジェクトを始動しました。 『未来を数字に』をコンセプトに、独自の切り口で、今はまだ数値化されていない未来の価値や潜在価値などを、あれこれ数字で表現していきます。