人生14回目の学会発表で見えた真実:研究者としての成長
こんにちは、朝山絵美です。
春に博士の学位も取り、一旦研究活動には区切りをつけた私ですが、ライフワークとして研究活動を少し進めています。先日、経営学における老舗である組織学会にて学会発表を行ってきました。
ここにきてようやく「学会発表とはなんたるか」がわかったように思えたので、鮮度が高いうちに皆様に紹介したいと思います。特に社会人学生を目指している方には事前に知っておいていただくと良いかなと思っています。
前提(わたしの学会発表歴)
私は、大学から進学して人工知能(AI)の研究をしていた一つ目の修士(工学)と、社会人になってから学び直しとして美大でとった修士(造形構想)、博士(造形構想)の3つの課程を歩んでいます。
一つ目の修士(工学)においての学会発表は記憶にあるものですと、このようなところで発表した経験があります。
二つ目の修士(造形構想)@美大においては、
博士(造形構想)@美大においては、
といったラインナップでして、それに加えて、博士卒業後である24年6月に、経営学の老舗の学会である組織学会にて発表させていただく機会を得ました。
記憶にあるだけでこれまで13回ほど学会発表をさせて頂いていたようですが、お恥ずかしながら「学会発表がなんたるか」について気づいたのは14回目となる今回のこの組織学会でした。
それぞれの時期における学会発表に対する認識
本題に入る前に、それぞれの時期における学会発表に対する意識をありのままにお伝えしますね。
一つ目の修士(工学)のとき
このような気持ちでしかありませんでした。学会発表=ただの経験+その街に訪れる機会 といったところでしょうか。(若気の至りとはいえ、お恥ずかしい。。)
二つ目の修士(造形構想)のとき
と、まだまだ認識が甘い状態でした。学会発表=ただの経験(ただし社会人学生の身、、、その街の情緒を楽しむ時間などないわけで、、)。このように、学会に貢献したいという気持ちを持っていなかったのですが、「経営者の人間らしさ」に関する発表をした後、何人かの方がお声がけくださって、「研究内容を聞いてファンになりました」と仰っていただき、学会発表=ファンを増やす場所 かもしれない、と少し意識が変わるようになりました。
博士(造形構想)のとき
博士後期課程ということで、ようやく学会選びにも主体性が出ます。誰からの指示でもなく自ら学会を探し、申し込んでいきます。しかし、学会発表=卒業要件(>ファンを増やす場所) という認識に成り下がります。人間とは恐ろしいものです、心の余白が狭くなっているからか、目的と手段が入れ替わってしまったわけです。
生々しい認識を共有させていただきましたが、もちろんどれも正解ではありません。正しい意識で参加するほうが、よっぽど研究活動の質もあがります。ですので、特に社会人学生でアカデミアに明るくない皆様には、私のような認識に陥ってしまわないように、恥ずかしながらシェアさせて頂きました。
では、「学会発表とはなんたるか」の本題に戻りたいと思います。
学会発表とはなんたるか
学会発表という活動をどう捉えておけばよかったのか。ちゃんと研究活動をやりたい方向け(博士後期課程の方含む)におすすめする心得です。これまでの修士・博士の活動を振り返りながらnoteを執筆していくことで、本質に気づきはじめ、今回6月某日にて行った組織学会での発表を通じて、確信に至りました。
学会発表=アイデアを共創する場
一般的には学会発表では、発表時間と質疑応答の時間で構成されています。その両方を足し合わせてはじめて価値を発揮するため、登壇者と聴衆の共創の場だと捉えるのが望ましいのではないかと思いました。
わたしの博士後期課程までの学会発表についての認識は、「登壇者が発表する」という、やや一方的な活動だという認識でしたので、双方向性があり、さらにいうと、共に創り出していく場と捉えたほうがよいと考えたのです。
学会発表に向けた心の持っていき方は、
「このアイデアをいま明らかにしかけているのですが、もっと良くするために何かお気づきのことはありませんか」と聞く感じでしょうか。そうすると、トーク内容も明確になり、作るスライドも定まってきます。
発表 =商品化前のアイデアの報告
❶「何をやりたい人か」を知ってもらう
研究をするに至ったきっかけや想いなど、なぜこれを探求したいのかについて自分自身を知ってもらうことに努める
❷研究内容について「興味」を持ってもらう
この人は何を明らかにしたくてこの研究をやっているのか、この研究をもっとよくしてあげたいと思ってもらえることに努める
なお、「共感」までいかなくとも「反論」でもよい。「無関心」にさせてしまってはだめだということです。質疑応答 =商品化するためのバリューアップ会議
❶研究をより良くしてもらうためのコメントだと捉える
質問してくださる人は、疑問を持った背景がある。単純にQ&Aしてゴールと捉えるのではなく、Qの背景を理解する。「反論」かもしれないし、「妥当性の不備」を感じているかもしれない。その問いを抱くに至った、研究の欠陥を補修するのに役立てます。
❷質問いただくことによって、自身の研究に対する聴衆の理解を深めてもらうものだと捉える
質問をよく聞いていると、自分自身の考えと聴衆との認識のずれが発生していることに気づかされます。伝え方の問題なのか、表現の問題なのか、既存の理論を地盤にできていないからか、悪かったところが明らかになります。空き時間・懇親会など =会議のラップアップ
❶多面的な意見をもらう時間と捉える
質疑応答の時間は非常に限られているので、ほとんどの聴衆は質問ができません。できるだけ空き時間などを使って、参加されていた方から、良し悪し含め多面的な意見をもらうことが望ましいと思います。
❷同じ領域で研究を行っている方とコミュニティを広げる
ファンを増やすということに近いかもしれませんが、研究領域の同志を増やしていくことが、後続の研究活動の一助になることは言うまでもありません。
ここまでがワンパッケージ。発表して終わりではなく、議論の時間を通じてアイデアを昇華させていく過程であり、まさに共創そのものではないかと思うわけです。このように、学会発表については、「よし!たくさん質問をもらうぞ!」という気持ちで臨むのがいいのではないかと思うのです。そのような心持ちであったこともあり、今回の発表では、たくさんコメントや質問をいただき、ルンルンで帰宅しました。
昔は、学会発表は、すでに強固なコミュニティが形成されており、むしろ新参者にとっては居心地が悪いとさえ感じてしまうほどの印象を受けていましたが、物は捉えようというのか、研究者として一歩成長できたからなのでしょうか。正しく捉え直すと、自分自身の研究の場を発展させるための重要なコミュニティであり、温かい場であるという印象を持つに至りました。
おわりに
今回機会をいただいた組織学会は、とても温かさを感じるコミュニティでした。質疑応答の時間、発表直後、懇親会の時間のなかで、色々な先生方からコメントを頂戴しました。発表の機会を頂いた組織学会の皆様、コメントを頂きました先生方、お声がけ頂きましたすべての方に感謝申し上げます。
これから社会人学生として歩まれる方にとって、最短で本質的な研究活動にたどり着くための一助になれば幸いです。
社会人学生のための備忘録
01 |学び直しに大学院を選ぶということ
02|MFA(美大修士)を修了した私が博士に進学したワケ
03|私が思い込んでいた博士後期課程とその現実
04|私が思い込んでいた博士での研究とその現実
05|博士を1ミリでも考えている人の学び場の選び方
06|人生14回目の学会発表で見えた真実:研究者としての成長(今回)
07|初めて研究を進める方におすすめする10のこと coming soon…
最後まで読んで頂いた方に、少し宣伝させてください。修士・博士での学びを通じた新しい発見「ビジネス×アートの交差点」について書いています。ぜひご注目ください。