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美大にとっての当たり前と私にとっての当たり前:パネル編

アートから程遠い社会人生活を送ってきた私は、自分の当たり前と美大の当たり前のギャップに翻弄されることが度々ありました。当たり前のように使われる美大語がわからないのです。最初に受けた洗礼は、入試そのものでした。

パネル持参・・・

武蔵美の大学院入試の出来事。社会人方式の場合、職務経歴書と研究計画書の事前送付と、そして入試当日の面接、の3つ。日本で初の社会人向けに美大院が開放された1期生の入試、ということで、情報も過去問も出回っていません。デッサン等の絵のスキルは見ないということは察しがついたものの、入試というイベントが人生でもあまりないのでドキドキでした。

入試当日の1週間前、すでに書類は提出済で、あとは面接で聞かれるだろう質問に対して、自身の答えを準備して、気持ちは準備万端でした。念の為、入試要項を見てみたら、すごく小さな文字で

入試面接では、活動実績を説明するA3のパネル4枚以内持ち込み可

と欄外に書かれていて。。。

パネルって何だろう。。。ネットで検索しても正解がわからない。アルミ枠の壁にかけるようなものなのか、会社の説明会のパネルで立てかけるような形なのか、。ふと、キンコーズさんに聞いてみようと思い立ち、パネルと言われたら何のことだと思いますか、と聞いて見ると、スチレンボードと呼ぶ、発泡スチロールみたいなものに紙を貼り付けたものがいいのではないか、ということでした。ありがとう、キンコーズさん。

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とりあえずパネル作ってみる

パネルが何者か理解ができても、一体何をここに書けばいいんだろう。どうやって作るんだろう、謎だらけです。とりあえず、パワポで作りはじめます。しっかり4枚用意。自身の活動実績1枚、自身のきっかけとなった思想1枚、研究したいアプローチ1枚、補足するもの1枚、の形4枚。当時のパネルができて喜んでる写真です。

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入試当日の面接

当日の朝、9分の面接時間×2スロット回す。1スロット4名の先生がいて、9分のうち自身からの説明は1分、残りは質疑応答と説明がある。入室してすぐ気づく、面接官の先生まで2メートルは離れている、、、パネル絶対見えないじゃない。笑 

結局、1分の自己紹介の際に、使えたパネルは2枚。見せてはみたものの、文字読めないだろうし、伝わっている気がしない。面接官の一人に学長が混じっていて、「せっかく作ってきたんだから残りのパネルも是非見せて説明してよ」とおっしゃっていただき、みんな日の目を浴びることができました。

表現は紙とパソコン投影だけじゃない

正解はないですが、2年修了して思ったこととしては、パネルと言われたから文字の羅列をあのA3のパネルに印刷するという表現ではなかったな、と笑。

けれど、面接と言えば、口頭で語るもの。何かに表現して見せることができるのであれば、紙に印刷して配る。あるいはパソコンで画面投影してプレゼン。これくらいの表現方法しか知らない、そして頭が固着化していた中で、新しい気づきでした。

2年後の修了制作展では、5メートルくらいの幅で、パネルや什器やその他オブジェ等も駆使して、自身の研究を表現するに至ります。

表現の基礎中の基礎として、表現ツールは紙とパソコン投影のみではないことを知り、自身の説明したいものを伝えられる一番最適な方法を自分で選んで、一定の制約の中で最大限に表現をする方法は何かから考える姿勢を学ぶ、そのきっかけとなった、というご紹介でした。

読んでいただきありがとうございました。

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