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100%趣味で作ったアプリが200万DLされるまで(3)

アプリの個人開発をしながら考えたことを書きます。
前回の記事はこちら

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フツララと言います。
サラリーマンをしながら深夜に個人開発したアプリArtomatonが累計200万ダウンロードにたどり着いたので、それまでの経緯を振り返ります。

2013年の10月にリリースしたArtomatonはいくつかのアプリ紹介サイトで取り上げられたこともあってその年のうちに1万ダウンロードを超えることができました。

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まだ先が長いですが、SNSでアプリやゲームの個人開発者を追っていて考えたことがあるのでまずそこから。

*文学部出身ということもあって創作をする人の生き方や考え方に興味がありるのですが、SNSはいろいろな物作りをする人の近況や考えを見ることができるので有難いです。

個人開発者はかなり個性的な人が多い?

と思います。

本業はゲーム会社でサラリーマンをしているので普段から堅い人とつきあっているわけではないのですが、それと比べても個人開発者は個性的……というか突き抜けて変わっている人が多いように感じます。

個人開発をしている内にそうなったのか、もともとそうだから個人開発をしているのか、ということを考えているうちに変わっていること自体が開発で有利に働いているのではないかと思えてきました。

精神的な突然変異

変わり者はほとんどの人が考えないことを考えたり、考えてもやらないことをやるから変わっているのだと思います。
そういった思考や行動の突拍子もなさは、生物が進化する要因となる突然変異と似ている気がします。

進化論は政治やビジネスの場での誤用が時々話題になります。

進化というのは意図的に起こしたり決められた道筋があるものではなく、突然変異によって生まれた多様性の中からたまたま環境に適合した者が繁栄することによって起きるというのが進化論の本質なわけです。

2010年ごろから始まったスマホアプリの爆発的な増加は地球史における生物種の多様化と似ている感じがします。
それだけの多様性がプールされた環境では進化論と同じように突然変異と自然淘汰の原理が働くと思われます。

個人が作ったアプリが数百万とか数千万とか、企業が大量の人とお金を投じて開発したアプリに劣らないダウンロード数を記録することがあるのは、無数のアプリの中から環境に適合した1つだからと考えればそれほど不思議ではありません。

そして、突然変異的なアプリを作るのはどんな人物か、ということを考えると個人開発者に変わった人が多い理由が見えてくる気がします。

自由である意味

社会には自由や多様性を尊重する考え方がある一方で、歴史を見ると個人を統制したり画一化しようという力が強まる時もあります。

限られた状況では全ての人間が同じように考えて同じように動くことがメリットになるケースがあるかもしれませんが、長期的に見ると多様性を切り捨てた集団は環境に適応できなくなって徐々に衰退していくはずです。

物作りをする人はしばしば自由すぎて社会からはみ出しているように見えますが、GAFAのように少人数からスタートした活動が世の中を変える事を考えると、「画一化されない=多様性がある」ということは社会的に重要な意味があるのではないかと思います。

アプリ開発も発想や行動が型にはまらないことがギフトとして働く領域なので、個性的な人の活躍が目立つのではないかと考えました。

収益化してみる

画像処理のプログラムは作っていて楽しいですが、アプリ内購入の実装はワクワクする感じもなく少し面倒です。
アプリ開発は趣味だからお金にならなくても良いわけですが、それでも収益化の仕組みを入れようと思ったのは3つほど理由があります。

1.開発の持続性
今年は特に実感している人が多いと思いますが未来というのは数ヶ月先でも何が起きるかわかりません。
アプリを作るのが好きでも、生活とか社会の変化で急にそれどころではなくなってしまうという状況もありえます。
そんな時にアプリが収益を生み出していれば諦めずに開発を続けることができます。

2.開発という行為の価値を下げない
完全に無料のアプリというのは一見気前がいいようですが、価格水準を引き下げてしまうという意味で他の開発者にとっては迷惑です。
価格とともに収益が下がれば開発を続けられなくなるので、結果的にはジャンルの衰退を招きます。
物作りには時間と労力がかかるので「趣味で作ったものだから全部無料で持っていってください」と言って対価をゼロにしてしまうのは社会的に正しい行為とは言えません。

3.お金を意識の支配下におく
収益化のプロセスを客観視して他人事のように観察や実験をできれば、お金に意識を支配されずに、お金を意識の支配下における気がします。
金銭的な欲とか不安は物作りの邪魔になるので、それらを意識的にコントロールすることができればもっと自由にアプリ開発を楽しめると思います。

3のように考えるようになったのはオンラインでプレイしていたテキサスホールデムポーカーの影響があります。

Youtubeでテキサスホールデムの大会を見たら、優勝したプレイヤーの表情が全く嬉しそうではなかったことから「結果によって感情を左右されないことが上手いプレイヤーの資質なのではないか」と考えました。

これはテキサスホールデムのプレイヤーがミスをしないための考え方を解説した本なのですが、認知心理学や行動経済学に通じる人間の心理が陥りやすい失敗のパターンが数多く紹介されています。

勝敗や損得は隠された情報や運に左右されますが、個別の状況下での適切な判断は統計的に絞り込めるので、「運が良ければ勝つ」ことではなく「適切な判断をする」ことを目的にプレイすることで長期的にバンクロール(安全に賭けられる残高)を増やしていく、というのが考え方の趣旨です。

アプリ開発でも、損得や成功失敗といった結果から自分の感情を切り離す技術を身に付けたら、心理的なミスを犯さず、適切な判断を行うことを楽しめるようになる気がします。

全部無料

お金を払ったユーザーがいるとアプリが動かなかった場合に無理をしても急いで修正しなければならないのと、単純にやってみたかったという理由で、Artomatonのリリース当初は全ての追加要素を¥0に設定していました。

個人で人気ブログを運営している人がアプリの紹介とは別に、追加アイテムが¥0ということを記事にしてくれたので、この実験は意外な効果がありました。

最初の売上げ

そのようなわけでArtomatonをリリースした2013年の売上げは0だったのですが、2014年のお正月明けから3種類の追加アイテムをそれぞれ¥100で販売したところ、その月の売り上げは43ドル(1ドル105円換算で4515円)になりました。

その後の売り上げは……

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2月 $60(¥6300)
3月 $75(¥7875)
4月 $38(¥3990)
5月 $60(¥6300)
6月 $100(¥10500)
7月 $218(¥22890)
8月 $258(¥27090)
9月 $4400(¥462000)
10月 $2920(¥306600)
11月 $1560(¥163800)
12月 $1320(¥138600)
 
というように推移して、1年で合計11052ドル(1160460円)になりました。

「計画通り」と言いたいところですが、生物の進化やポーカーの勝敗のように偶然や予測不可能なことを含む様々な要因が重なってたまたまこうなっただけです。

7月と9月に売り上げが増えたのは効果があるかわからないけど、とりあえずやってみたことが関係していています。
その話はまた次回で。

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