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本を読むこと。 ~ オキシトシンがつくる絆社会 ~

本日ご紹介する本はスウェーデンの生理学者シャスティン・ウヴネース・モベリの著書「オキシトシンがつくる絆社会」です。

本書は幸せや安らぎを与えるホルモンといわれる「オキシトシン」について、その生理学的機序や効用、社会における影響について数多くの研究論文とともにまとめられています。

今日はその一部をご紹介しながら、幸せホルモン「オキシトシン」の理解を深めていきたいと思います。

オキシトシンとは

私たちの体内で起こることの大半は、脳とホルモンによってコントロールされています。脳は進化的には新しい知的機能を有する大脳皮質と進化的には古い大脳辺縁系である脳幹、脊髄に分けることができます。

オキシトシンは感情や情緒的衝動、記憶、学習を司る大脳辺縁系である下垂体の後葉から血流に放出されます。

オキシトシンは進化上、非常に古い物質ですべての哺乳類が持つ科学的に同一の小さなタンパク質であり、主として視索上核と室傍核と呼ばれる脳内の神経細胞の2つの大きなグループで産生されます。

オキシトシンは血流を介してホルモンと機能するルートと脳内のオキシトシン産生神経細胞を介して神経伝達物質として機能するルート、そして神経細胞から直接、脳の他の領域に拡散するルートの3つの異なるメカニズムを有しており、私たちの身体の広範囲にわたって効用をもたらしています。

オキシトシンの効用

オキシトシンは他者との関係性の中で全体として関わり合いを刺激し、ストレスレベルを軽減させるとともに、身体を癒やす効果があります。

ラットにオキシトシンを投与するとストレスホルモンであるコルチゾールが減少します。

また、自律神経系にも影響を与え、交感神経の活動を抑制し、血圧を下げ、副交感神経の働きを強めることで心拍数を下げます。

これにより消化器系が活動し、血液循環を弱め、身体を休めたり、癒やしたりするプロセスが働きはじめます。

さらに、オキシトシンが拡散することで運動と報酬系を調節するドーパミンや気分や満腹感を調節するセロトニン、記憶と学習プロセスと消化管活動の調節に関与するアセチルコリンなど他の伝達系も活性化され、効果を連鎖させていくことで幅広い効用を生み出しています。

オキシトシンの効用でよく知られているのは女性の出産や授乳に関わるもので、出産や授乳中に脳内に放出されるオキシトシンは母親の社会的相互作用の能力を高め、母親を穏やかに、落ち着かせリラックスさせることにより栄養効率を高めるとともに子どもとの結びつきを強める効果があります。

これらは男性にも同様にも働くことがわかっており、オキシトシンを鼻から投与された男性は恐怖心が和らぎ、コルチゾールのレベルが低下しました。

また、寛容さが増し、相手への信頼感が増しました。

社会的には見知らぬ土地や不慣れな人に出会ったときの恐怖心や不安心を弱め、同時に社会的行動が部分的に刺激されます。

また、記憶や学習とも結びついており、個人が他の個人を識別する能力も高めてくれます。

オキシトシンを増やすために

オキシトシンは早期にスキンシップを多くすることでその受容体を増やします。幼少期に多くのスキンシップを得られた子どもは、その後長期にわたって人とうまく関わることができたり、ストレスにうまく対処する能力が高まるとされています。

スキンシップの代表的なのは「タッチ」であり、皮膚を介してやわらかな刺激が感覚神経に伝わり、脳内のオキシトシンは放出されます。

そのため軽いマッサージや撫でるなどの行為はとても効果的といえます。

また、セックスはオキシトシン放出の最も強力な引き金となりますが、多くの時間を共に過ごしたり、寄り添うことでもオキシトシンは双方の脳を刺激し、互いの結びつきを強めます。

その他として直接的な報酬や施しなど「与える」ことも互いのオキシトシンを分泌させる手段としては有効であり、犬と生活をともにするのも良いとされています。

まとめ

オキシトシンというホルモンの働きがヒト同士の関係性を強め、無意識に私たちの生活に影響を与えていることを簡単にご紹介しました。

先に述べたようにオキシトシン自体はとても古いものであり、ヒトはその働きによって長く時間とコストのかかる子育てをやってのけ、さらに他人と協力して生きていく術を身に付け、ここまでの繁栄を手にしました。

しかしながら、現代は個人主義時代と言われるようにヒト同士の結びつきは以前ほど強くなく、たとえ親子同士であっても虐待や子殺しが起こっていることは「子の虐待を想う」という記事に書かせてもらいました。


その背景は様々ですが出産が帝王切開が増えていることや低体重出産によってすぐに母子が離されてしまったり、母乳育児が減っているといったことで結びつき強め信頼を高める「オキシトシン」の放出が少ないことが要因になっているのかもしれません。

事実、出生時とその後間もない時期にたくさん寄り添った親子では子を放棄するリスクが減少しています。

オキシトシンは無意識に私たちの脳に働きかけています。

そのため、これを悪用しようと思えばそれが可能であり、詐欺などは巧みに相手のオキシトシンに働きかけ信頼を得ようとします。

本書はオキシトシンの効果や利用方法、またそのリスクについて学び、自分の人生を豊かに、そして幸せなものにする一助となると思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

本日の紹介図書
シャスティン・ウヴネース・モベリ著「オキシトシンがつくる絆社会」

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