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すてきな女むてきな女⑩

前回のファミレスからの帰り際、なっちゃんから提案があった。
「むくみちゃんチャットワーク知ってる?」
「チャットワーク?知らん。」
「チャットワークならどんなデータでも送れるし、その方が今後やり取りしやすいから、スマホとパソコンに入れて。」

なっちゃんからの招待メールが届き、私はChatworkなるものをダウンロードした。こうして、私達の連絡はLINEからChatworkへと変わった。

使い始めると確かに便利。LINEと違いデータもスムーズに送れるし、スクロールするだけでこれまでのやり取りが全て見れ、メールよりも使い勝手がいい。
最近のビジネスマンはこう言うものを使っているのか。
病院で働いていると、こう言うことには疎くなる。電子カルテとOffice位しか使うことはないし、院外の業者さんとは未だに電話やFAXでのやり取りが多い。

こうして私達の坊ちゃん文学賞に向けてのプロジェクトは動き出した。

私はとりあえず、今書ける範囲で書いてみようと、大久野島関連の事や当時の様子をネットで検索した。祖母が住んでいた竹原の古い写真を探したり、広島弁についても調べた。
ひとつの話を書くのに、調べなければならない事は山のようにあった。
そして、思いつくままに第1稿を書き上げた。
私はゼロから創作するのが頗る苦手だ。できたものを修正する方がまだ得意だと思う。だから取り敢えず書いて、そこから修正しようと考えた。

そして、なっちゃんに第1稿として原稿を送信した。

なっちゃんからは、4,000字という限られた文字数で何を1番伝えたいのか、ポイントを絞った方がいい、とアドバイスが来た。
そう、私はこんな事も入れたい、あんな場面も入れたいと薄くしか書けていなかった。
なっちゃんからのアドバイスを受け、自分が何を一番書きたいのか考えてみた。でもそこに明確な答えは見つからない。何を書けばいいのだろうか。

なっちゃんから3つの提案が送られてきた。
・広島は被曝だけではなく、毒ガス製造でも犠牲になっていたこと。
・毒ガス製造をしていた大久野島自体にフォーカスする。
・主人公の心の葛藤を伝えきる。

私は主人公の心の葛藤を伝えることにしようと決めた。
しかし、どんな風に書いていけばいいのかは見えていなかった。

なっちゃんは目星をつけていた本を購入し、1日で読み終え、私に郵送してくれた。マッハな仕事ぶり。
私は4日かけて、ようやく読み終えた。

私は文字を読むのは嫌いではない。けど、人より随分と時間がかかる。読みたい資料を全部読んでいたら、締め切りには間に合わない。映像や写真、ネットに上がっている手記、NHKの戦争関連の特集などを可能な範囲で観た。
仕事が終わると家で戦争の資料と映像ばかりを観て、気持ちは沈み、どんよりとした気分で眠る毎日。いや、私はただ観ているだけだ。そこにはその時代に実際に生きていた人々がいるのだ。ここで目を背けてはいけない。

週末にもっさりの匂いを嗅ぎ、汗を浴び、気持ちを復活させる。

なっちゃんとチャットをする中で、少し私の書きたいものが見えて来た気がした。民俗学者の宮本常一さんのように、当事者がその時にその場で体験していた事、感じた事を掬い上げたようなものを書きたい。
よくある体験談だとこうなる。
『空襲警報が鳴ると、みんな防空壕の中へ避難した。壕の中はたくさんの人で溢れ返っていた。』
そういう事実ではなく、実際その時、その人がそこで何を感じていたのか。
『防空壕の中へ避難した時に、下駄の鼻緒と指の間に挟まった土が気持ち悪くて、ずっと気になって仕方がなかった。』
と言うようなことを書きたいと思った。
(こんな例えで上手く表現できているのか分からないけど。)

修正の方が簡単だろうと思っていた私だが、全く筆が進まなくなってしまった。
書かなければと思う程に、他のことを書きたくなる始末。


そんな中、なっちゃんとのチャットが心を救ってくれた。

映画『めがね』を観て与論島に行った時のことを振り返るなっちゃん
素敵な絵を購入して大掃除をするなっちゃん
うちの母が畑で取れたイチジクを届け、どうやって剥くのか検索するなっちゃん

そして2人で永井玲衣さんと武田砂鉄さんのラジオの話で盛り上がる

極め付けはこれもあるよと文學界新人賞のリンクが貼られてきた。
到底、今の私には無理だ。4,000字で四苦八苦している。

文學界は来年にしよ。
いや、再来年でもいい。
又吉みたいに挑もう!
そして、ハセショで又吉とむくみちゃんが対談するねん。
どう、この妄想(笑)

なっちゃんからのChatwork

わー!ハセショで対談、めっちゃいい!!
なんか、それを妄想してたら頑張れそう。
そして、又吉とネンさん、気が合いそう。
やから、めっちゃ会ってほしい。

私の返信文

文學界新人賞を取り、ハセショで対談をする。こんな無謀な妄想をする私達。
きっと私は緊張して上手く話せない。私と又吉が対談するよりも、又吉とネンさんに対談をして欲しい。
又吉とネンさんはどこか似ているところがある。穏やかそうで大人しそうなのに、自分の考えがしっかり有って、纏う雰囲気や世界観が近い気がする。

ハセショでの又吉との対談。
できたらいいな。
いや、実現させたい(笑)
そんな妄想を膨らませながら、私は第2稿の執筆に取りかかった。

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