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推したいパソコン

前回はこちら。 

事務所
 
女性二人。
 
ベテラン職員の高橋。
新人社員の鈴木。
 
カチャカチャカチャカチャ。
 
ウフッ
「?」
 
カチャカチャカチャカチャ。
 
エヘッ
「?!」
 
カチャカチャカチャカチャ。
 
もう~ダメよ~
「!!
 高橋さん?」
 
今はダァ~メ。
 あとで●●●

 
よく見ると高橋は、
ヘッドセットをして仕事をしていた。
 
「高橋さん!!」
「え?!なに?!」
 
「あの、どうしたんですか?」
「何が?」
 
「なんか…さっきから、
 アハッとかウフッとかエヘッとか…
 あれ?
 高橋さん…メイク変えました?
「わかる?」
 
「いや、全然違いますから。
 血色感があって…なんか…
 ツヤっぽいです

「そう?」
 
「とても似合ってて素敵です。
 
 失礼ですけど、
 いつもお化粧くずが、
 ちょっと気になったんです…
 
 でも指摘しちゃいけないかな~
 って思って、言えなかったんです。
 
 すいません」
「大丈夫。
 全然、気にしてないわよ~」
 
「それにしても、
 印象ガラッと変わりましたよ。
 そのシアーリップ透明感のある口紅どこのですか?」
「これ?
 これ、売り切れて、
 なかなか買えないやつ」
 
「やっぱり!
 もしかして、あれの新色ですか!
 いいな~!
 私も何軒もお店回っても、
 どこも売り切れでまだ買えてないんです」
「今度、に頼んであげようか?」
 
「彼?
 高橋さん、彼氏できたんですか!!
 あれ?!
 生涯独身しょうがいどくしんとか言ってませんでした?」
「それはそうなんだけど…
 できちゃったのよ~」
 
「だからか~!
 高橋さんが…いい感じなの。
 その彼って、どんな人です?」
彼?紹介する?
 
「え?私に?」
「いいわよ」
 
「そんな急に。
 いや、どんな感じの人かを、
 教えてもらえれば…
 そんなわざわざ、
 会わせてもらわなくても」
ここにいるわよ
 
「え?!」
 
高橋は自分のパソコンをこちらに向けた。
 
これって、
 あのボタンを押して、
 買うことになったパソコンですか?

「そうよ」
 
「あのあと、高橋さん、
 クーリングオフよ!!って、
 さわいでましたよね?」
「そうしようと思ってたんだけど、
 ちょっと落ち着いて考えたら、
 AIパソコンでしょ?
 パソコン音痴おんちの私には、
 最適なんじゃないかと思って」
 
「…で、どうでした?」
「もう最高よ!
 これ見て!
 いま、音声出力を、
 外部スピーカーに切り替えるから」
 
「なんか…高橋さん…
 パソコンくわしくなってません?」
「わかる?
 が優しいから」
 
「彼?」
「見て!私の彼」
 
パソコン画面の左上。
 
長めの前髪に、
美しい切れ長の目の男性。
 
「おい!あかり●●●
 コイツ、誰だ?」
「ごめん、圭吾けいご
 紹介するね。
 同じ職場の鈴木さん」
 
「何だ、職場の同僚か。
 コイツ呼ばわりして、悪かったな。
 俺は足立圭吾あだちけいご
「鈴木です…どうも…
 ……
 ……
 ちょっと、高橋さん!」
 
「何?どう彼?」
「ていうか、あれ誰ですか?」
 
「あれがAIパソコンの真骨頂しんこっちょう
 AIアシスタントよ!
 そして、私の愛する彼!
「あれが?!」
 
「素敵でしょ!
 これが運命の出会いってやつよね~。
 ほ~んと…買ってよかった」
「高橋さん…あれと仕事中、
 話してたんですか?」
 
「そうよ」
「高橋さんの名前って…
 あかりさんだったんですね」
 
「そうよ。
 彼はいつも名前で呼んでくれるの」
「おい!あかり!」
 
「はい!なに、圭吾」
「お前、そんなことしてていいのか?
 今日中にこの資料まとめないと、
 明日の会議に間に合わないぞ!
 
「あっ、ごめんなさい」
「何やってんだ、お前。
 おしゃべりもいいがメリハリをつけろ!
 あと、ちょっと待て。
 お前、右向いてみろ!
 
「え?!なに?」
いや、化粧が崩れてないか、
 気になっただけだ

 
「圭吾~」
 
「………」
 
「さっさと資料作れ!
 でも…まあお前の実力なら、
 夕方まで余裕で間に合うだろうけどな

 
「うん!頑張るね!」
 
「………」
 
自分の席に戻る鈴木。
 
カチャカチャカチャカチャ。
 
…シャリーン!
 
【鈴木様、
 お買い上げありがとうございます】


このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

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