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勇者御一行様

私は異世界転生いせかいてんせいした、
元サラリーマン。
 
みちびかれるままに、
流れで仲間にしたメンバーと、
なんやかんやで、
勇者として魔王の城に辿たどく。
 
重たい門が音を立て開く。
まるで入ってこいと言わんばかりに。
 
挑発ちょうはつにのることなく、
周囲を警戒けいかいしながら入城。
 
するとそこには、
いかにもな格好をした魔女が…
カウンターに座っていた。
 
勇者「敵?」
僧侶「いや待て。
   敵意はなさそうだ」
 
戦士「でも油断するな。
   もうここは魔王城なんだ。
   何が起こるかわからない」
 
魔法使い「あのう?あなたは?」
 
戦士「おい!気軽に声をかけるな!」
 
魔女「私は…みちびきの魔女
勇者「導きの魔女?」
 
カウンターには小さく
受付】と書いてある。
 
勇者「何が目的だ?」
魔女「お告げじゃ。
   この城で待ち構えている、
   英雄たちの恐ろしさを、
   愚か者に知らしめ、
   無駄な戦いを避けるのが我の役目」
 
勇者「お前が言う英雄って、
   ただのモンスターだろうが」
魔女「何を言うとる。
   私たちにとっては、
   お前たちこそが怪物じゃ」
 
勇者「ふん。まあどうでもいい。
   モンスターの恐ろしさを聞いたところで、
   みすみす引き下がると思うか?
   それとも他に、
   何か魂胆こんたんでもあるのか?」
魔女「我らはこれまでの戦いで、
   お前たちをよ~く知ってる。
   でもお前らは我らのことを何も知らない。
   それは不公平というものじゃろ?
   【正々堂々
   それがが城の城訓じょうくん!」
 
勇者「城訓ってなんだ?!
   まあいい。
   教えたいというなら聞くから、
   さっさと言え!」
魔女「お前ら…
   逃げ出すのなら今のうちじゃぞ。
   気をつけなされぇ~。
   ここからは~上へ行けば行くほど、
   くせの強い英雄がいるでなぁ~。
   まず10階フロアー。
   第一の刺客!
   調査部 隠密おんみつケシゾウ!
   奴に消された人間は数知れず。
   お前らも無惨むざんに消されるがよい。
   そして次なるは20階フロアー
   第二の刺客!
   苦情対策部 論破ろんぱアクタイ!
   人間どもの威圧いあつひるまぬ不屈の精神。
   逆に返り討ちにあい家にこもった人間は数知れず。
   そしてお待ちかね30階は…」
 
勇者「ちょっと待て!」
魔女「なんじゃ?怖気おじけづいたか?」
 
勇者「いや、そうじゃない。
   調査部とか苦情対策部とか、
   馴染なじみのワードばかり。
   まさかそのうち広報部とか、
   出てくるんじゃないだろうな!」
魔女「なぜそれを知ってる!
   やはり侮《あなど》れぬな勇者よ」

勇者「もう部って会社のこと部署だろ?
   そんなのは流れで誰でも気づく」
魔女「ぶしょ?なんのことだ?
   まあよい。どのみち知られることだ。
   この地上60階の魔王城。
   各フロアー毎に得意分野の者たちが、
   切磋琢磨せっさたくまし魔王様のために、
   汗水垂あせみずたらし働いているのじゃ!」
 
勇者「知ってる。それ会社って言うんだ。
   俺の元いた世界ではな。
   しかし60階もあるのかこの城。
   そんな高かったか?」
僧侶「外ではよく見えなかった。
   上の方にもやがかかってたから」
 
魔女「そうじゃろ。
   まさに天をつらぬくこの名城!
   高さ300メートルをほこる魔王の城!
   またの名を、あじのカルパス!!」
 
勇者「それも知ってる!
   聞いたことあるよ!関西の方で。
   しかも名前、ちょっと美味しそうになってんのな。
   ………って、もういい!!
   教えるとか言うから、
   弱点でもうっかり口走るかと思えば、
   お前らの自慢話じゃねえか!
   どのみち戦いは常に所見しょけんだ!
   お前のつまらん話に付き合ってるひまはない!
   みんなかまわず上に行くぞ!」
 
プルルルルル~
プルルルルル~
 
魔女「はい。受付です。
   はい……はい……お見えです。
   はい……はい……はい、わかりました。
   では、そのようにお伝えして…
   はい、そのように。
   では失礼しま~す……
   待たれい!勇者よ!」
勇者「なんだ。まだ何か用か?」
 
魔女「たった今、魔王様から伝言があった」
勇者「なに?!魔王から?!」
 
魔女「よく聞け!勇者よ!
   が城は本日を持って、
   吸収合併きゅうしゅうがっぺいすることとなった。
   よって日をあらためよ、とのことじゃ」
勇者「おい!おいおい!
   なんで魔王、買収ばいしゅうされてんだよ!」
 
プルルルルル~
プルルルルル~
 
魔女「はい。受付です。
   はい……はい……はい、わかりました。
   はい……もう~魔王、それは……
   では、はいそのように。
   では失礼しま~す……
   待たれい!勇者よ!」
勇者「ずっとお前の電話で待たされてるよ!
   今度は何だ?」

魔女「ひょひょひょ、残念だな勇者。
   魔王はすでにその職をかれ、
   CEOになったわ。残念だったな」
勇者「CEO?!
   ちょっと待て。
   CEOって最高経営責任者のことだよな?
   それなら幹部であることに変わりないはずだ。
   打ち倒す敵であることは変わるまい!」

魔女「違う違う。
   CEOはちょっとエッチな王様の略じゃ。
   幹部でもなんでもない、
   ただのエロジジイじゃ」
勇者「まぎらわしい!
   なんなんだそのエッチな王様って!」

魔女「これは社外秘じゃ!」
勇者「秘密ベラベラ喋ってるじゃねえか!
   いちいちイラつくなあ。
   じゃあ、新任がいるだろ!新任が!
   新しい魔王を出せ!」

魔女「それは無理じゃ」
勇者「なぜだ?!」

魔女「ここにはいないからじゃ。
   今、CEOがちょうどヘルに乗って、
   新魔王の城へ移動中じゃ!」
勇者「なんだと!
   別の場所にいるのか…新魔王は…。
   新魔王の城はどこだ?教えろ!」
魔女「新たな魔王城!
   地上52階!高さ247m!
   超高層魔王タワー!
   その名も…
   ドラゑもんヒルネ 起きタワー!!」
勇者「虎ノ門……関東かよ!」
 
 

これは妄想話であり、
フィクションです。

お疲れ様でした。