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プチハッピー

新婚さんご夫婦。
 
「ただいま」
「おかえり、遅かったね」
 
「ちょっと買い物してきた」
「あれ?
 何か頼んだっけ?」
 
「違うよ。
 食後のデザート買ってきたんだ」
「なんだぁ。
 何買ったの?」
 
プリン。
 あとで食べよう」
「プリンうれしい!
 じゃあ冷蔵庫入れといて」
 
「うん」
 
夕食をとる二人。
 
「ごちそうさま」
「私もごちそうさま」
 
「ああ~。
 お腹いっぱいで、
 眠くなってきたなあ」
「あれ?プリンは?
 明日にする?」
 
「そうだった。
 食べる食べる。
 何か今日は、プリンの口だったんだよ」
「何それ?」
 
無性むしょうにプリンが食べたい気分?
 仕事中も、すっごい我慢がまんしてた」
「そんなに食べたかったんだ」
 
「体がほっしてる感じ」
「じゃあ、取ってきてあげる」
 
「あ、ありがとう」
 
冷蔵庫を開ける。
 
「あっ!プッチンプリンだ!
 私、久しぶりかも」
「ほんと?
 僕はプリンと言えば、
 プッチンプリンだから、
 いつもそればっかり食べてる」
 
「そうだったんだ。
 そう言えば二人でプリン食べるの、
 初めてかも。
 スプーンはもらってきてないのね。
 じゃあ小さいスプーン小さいスプーン」
「あ~やっと体の要求が満たされる。
 たまにあるんだよね。
 帰ったらビールとか」
 
「それはいつもじゃない」
「まあ、そうなんだけど」
 
「はい。
 食べましょ」
「……
 ちょっと待って」
 
「なに?」
何で、プッチンしてないの?
 
「え?
 私、このままでしか、
 食べたことないけど

「嘘でしょ?
 プッチンだよ?
 プッチンプリンだよ!
 プッチンしないって…
 え?!
 そんな人いると思わなかった」
 
「ここにいるよ」
「まさかの身内!
 ……プチショック…」
 
「そこまでのこと?
 いるよ結構。
 あっ、思い出した。
 そう言えば昔、グリコでアンケート取って、
 プッチンする人としない人、
 どっち派ですかってやってたけど、
 しない人、過半数だったよ」
「嘘だーー!
 ……ガチショック…そんな」
 
「何でそんなにプッチンしたいの?」
「そこ?」
 
「プッチンの意味がわかんない」
「ひっくり返しても落ちてこないのに、
 あの底の棒をポキっと折ると、
 底に空気が入ってポトッ!プルン!って、
 あの流れがいいんじゃない」
 
「そうなの?
 だって洗い物増えるでしょ?
 スプーンも貰って来てくれれば、
 捨てるだけだったのに」
「そこかぁ。
 確かに合理性から言えばそうだけど、
 プリンを食べて得られる幸せは、
 非合理にこそあるんだ」
 
「何言ってるかわかんない。
 じゃあ、プッチンしてみて」
「いいよ。
 じゃあ、お皿を二枚用意して…
 いい?見てて」
 
プチッ!プルン!
プチッ!プルン!
 
「どう?」 
キレイに着地したね
 
「それだけ?」
「そんなもんでしょ?
 だってそうなるって、
 したことない私でも知ってるもの」
 
「まあ…そ、そうか……
 でもこれで終わりじゃないんだよ
「え?
 まだ何かあるの?」
 
「実は…奮発ふんぱつしてこれも買ってきました!」
ホイップクリーム?
 
「これをプリンの上と回りに、
 こうやって飾り付けをして…」
「わあ~美味しそう♪」
 
「そして仕上げにこれ!」
「それ!
 スーパーで売ってる、
 カットフルーツの盛り合わせ!
 
「これはしみなく、
 全部乗せちゃいます!」
「ねえ~!
 写真撮っていい?!」
 
「撮って撮って!」
 
カシャカシャ
 
「スイーツじゃん♪」
プリンアラモードって言うんだっけ?
 これが子供の頃のおやつ、
 ナンバーワンだった。
 特別な日だけだけどね」
 
プッチンいいね♪
洗い物は僕がするから、
 またプッチンしようね

 
「うん」
「じゃあ…」
 
「いただきます♪」
「いただきます♪」
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

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