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宿

二人組。
 
「どうも~よろしくお願いします」
 
ゴールデンウィークですね?」
「いいですね~。
 4月は年度始めで、
 何かといそがしかったでしょうから、
 この連休有意義ゆういぎに使って、
 英気えいきやしなってほしいですね」
 
「ゴールデンウィークは、
 何か予定あるんですか?」
「うちは子供3人なので、
 どこか連れてこうとは思ってます」
 
「どこ?」
「どこって聞く?
 いやどっか1泊か2泊くらい
 できる場所がいいなあって、
 思ってますけどね」
 
「だから、どこ?」
「そこ言わなきゃダメ?!
 一応、私、芸能人…ねっ!
 もし行き先を言ったらさ、
 もしかしたら熱狂的な方が、
 来るかもしれないじゃん?!
 もしかしたらだけどね」
 
「いいじゃん。ファンサで」
「そこは家族サービス
 カゾサ優先
 カゾサってりゃくし方もあってるか、
 わかんないけどな」
 
「じゃあ、どこか泊まるの?」
「そうだね。
 やっぱり温泉とかいいかな」
 
「じゃあよく聞く、やしの宿とかどう?」
「いいですね。
 スタッフの手厚いおもてなしで、
 心も体もリフレッシュってね」
 
「あと、いきかえりの宿
「それもいいね、
 素敵な温泉につかって、
 日頃の喧騒けんそうを忘れ、
 あ~生き返った~とか、
 露天風呂で言っちゃったりしてね」
 
「あと、活造いけづくりの宿
「え?!
 これ大丈夫っすか?
 このたいまだビチビチいってますけど!
 から上げたばかり?
 どうりで…
 もうきがよすぎて、
 身が舟盛りから飛び散ってますけど…。
 え?!
 これがあと2匹も?
 全部、鯛の活造りで?
 いや、他にお寿司とか鯛めしとか、
 調理法なかったっすかね~
 …まあ活造りの宿って、
 看板かかげちゃってるから…
 しょうがないか…つってね」
 
「あと、りの宿
「あの~すいませ~ん。
 誰かいませんか~。
 急に仲居なかいさんたちに、
 座椅子ざいすしばり付けられたんすけど、
 態度が急変して…
 何か余計なこと言いました?
 しかも宿のハッピ着せられて…。
 これどういう状況?…。
 みんな露天風呂行ったまま、
 帰ってこないし…。
 あっ!誰か来た!
 お…よっ!良かった~。
 帰ってきてくれて~。
 ちょっと待って!行かないで。
 な~んで引いてんの?
 あっ!これ?
 これは仲居さんにしばられちゃって。
 待って!言い方悪かった…。
 え~と気付いたらこんな感じになってて、
 そのまま放置されたんだけど…。
 ちょっと待って!!だから!
 そういうプレイじゃなくて…つってね」
 
「あと、行き帰りの宿
「あれ?
 この宿は泊まれないんですか?
 通り過ぎるだけ
 え?!そうなの?
 眺める専門?横目で?
 これが今時のスタイル?
 へえ~、でも風情ふぜいのある立派な宿で…。
 え?!
 見世物みせものだけど、
 長々ながながとは見るんじゃないって?
 随分ずいぶん変わった商売ですね…つってね」
 
「あと、言いがかりの宿
「おい!てめえ~。
 どうなってんだぁ、
 この宿の料理は~あ゛~!
 今、インスタ見たぞ!
 鯛の舟盛り出してたろ!
 俺が泊まった時は、
 ただのサーモンの刺し身って、
 どういうことだよ!
 いくらなんでも格差ありすぎだろ。
 せっかく活造りの宿っていうから、
 舟盛り楽しみにしてたのに…
 え?!違う?な~にが?
 あれはルイベ
 ルイベって何?
 北海道の郷土料理
 せっかく遠方から来て頂いたので、
 ちょうど、とてもいい鮭が入ったので、
 特別に…うちだけに出してくれたの?
 そ~~なのぅ?
 いや~そうか~そうでしたか~。
 ええ、ええ、大変美味びみでした。
 もう文句もつけようのないくらい…。
 郷土愛あふれたおもてなしで…つってね」
 
「あと、いきものがかりの宿
「え?!本当すか?
 20時から?
 いきものがかりのライブ
 あるの?
 大宴会場で?
 マジすか?!凄いですね~。
 観客無制限で?!ほんとに?!
 心配だな~
 広間の畳とか抜けません?
 前回もやったから問題ない…そう。
 前回…500人?!あそこに?
 一体感凄そうっすね~つってね」
 
「あと、言い逃れの宿
若旦那
 また○○金融取り立てが、
 表にいますよ!
 勝手に通行人に声かけて、
 威嚇いかくしてるんですけど。
 ジロジロ見てるんじゃねえ!って。
 え?!鶴の間のお客様
 あの人を身代わりに?
 自分に似てるから? 
 そんなことしたら大問題ですよ!
 え?!どうせ手荒てあらなことはしないし、
 1時間説教したら帰るから問題ない?
 いやいやいやいや。バレますよ~。
 それにお客さんにあとで、
 何て説明するんですか~。
 え?!それも大丈夫?
 ルイベがあるから…つってね」
 
「あと、よみがえりの宿
「もうずっとこれおんなじ宿の話!
 結構、途中から気付いちゃった。
 拉致らちされるし
 お前、本当に宿に興味あるの?」
 
「宿にはないけど、
 ルイベには興味はある」
「もういいよ」


 これは漫才です。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。
あくまで作者の自己満足です。

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