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区所に侵入…駆除して苦情

女性社員。
 
プルルルッ
プルルルッ
 
「はい。市の相談窓口です。
 どういった、ご相談でしょうか?」
「おい!
 何なんだ、あれは!」
 
「はい?
 あれと言いますと?」
熊だよ、熊!
 何で保護ほごしないんだ!
 処分する必要はないだろ!

 
「熊の駆除くじょ苦情くじょうですね?
 今のくじょ●●●くじょう●●●●は、
 別にダジャレじゃないですよ」
「どうでもいいわ!
 何で熊を処分する必要が
 あるんだと聞いてるんだ!」
 
処分する理由ですね。
 では、説明させて頂きます。
 
 今月の…
 農作物の被害件数23件。
 家畜の被害は14件。
 人への被害が5件。
 
 要請ようせいによるものなんです」
「だからなんだ!
 保護して二度と人里に、
 戻ってこないようにできるだろ!

 
「まあ、簡単に言いますと…
 熊の数が多すぎるんですね。
 
 できれば山に戻った熊が、
 【人間やべえ!ガゥ
 【絶対、街へ行っちゃダメだぜ!ガゥ
 って、仲間に注意してくれると、
 こちらも大変、助かるんですが」
「あんた、ふざけてんのか!
 熊が多かろうが、熊も生き物だ!
 そんなに被害に合うのが嫌だったら、
 人間たちが引っ越せばいいだろ!
 
「おっしゃること、よくわかります。
 ちょっとだけ、
 お話してもよろしいですか?」
「なんだ!」
 
おそらく…恐らくですよ。
 
 ここから人がかりに…
 あくまで仮の話です。
 
 全員引っ越したとしたら、
 ここはきっと…間違いなく、
 熊王国になると思うんです」
「それがなんだ!」
 
「するとですね…
 熊には境界きょうかいなんて認識は、
 ないと思うんです」
「……」
 
「まあ、えさを求めて、
 どこまでも行くと思うんです。
 まず手始めにお隣の市区町村…
 やがて…都道府県も越えて
「……」
 
「お客様…
 ちょっとおたずねしてもいいですか?」
「何だ?」
 
「お客様は、口が堅いほうですか?」
「何だ急に!失礼な!
 堅いに決まってるだろ!」
 
「良かったです。
 ではお話します。
 実は報道では処分と発表されましたが、
 ここだけの話…
 3頭とも、うちで保護してるんです

「本当か?」
 
「ええ。だから安心して下さい」
「いいや!信じられん!
 口では何とでも言えるからな!」
 
「そうですか。
 ちなみにですが、
 お客様はどちらにお住まいですか?
「言うわけないだろ!」
 
では、お名前は?
「言わん!」
 
電話番号も?
「教えるわけないだろ!」
 
「こちらには表示されてますけどね。
 では失礼して…解析かいせきさせて頂いて…
 ああ~他県の方ですか…
 ◯◯◯◯にお住まいで」
「え?!」
 
では、捕獲ほかくした3頭、
 そちらに搬送はんそういたしますね

「はっ?!」
 
「そうそう、私ったら忘れてました。
 これを言っておかないと…。
 ただいま秋のキャンペーン中でして、
 無料カラーリング実施中じっしちゅうなんです」
「な、何の話だ!」
 
熊の毛色を変更できるんです。
 おすすめは一番人気の白黒ですね」
「毛色が白黒の熊?!
 それは…まさか…!」
 
「あと、全身で口の周りを白。
 ほほだけにすることも可能ですよ」
「い、いらん!やめろ!」
 
「では、お客様には特別、秋の限定色。
 黄色がよろしいかと。

 では、いまあげた色でこの3頭、
 カラーリングしておきますね。
 
 きっと話題になって、
 人が押し寄せること間違いなしです。
 
 可愛がって下さいね。
 
 …はい…あっ、
 もう、カラー終わってる?…
 3頭とも?
 
 もう…発送した?
 …と、いうことです。
 
 では、失礼いたします」
 
おーーーーい!
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

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