結婚10年目。もう一度「夫婦」が始まった。
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夫婦やカップルの本音をシェアするコミュニティ「フタリノ」です。
今回お届けする「ふうふのA面・B面」第2回は、偶然にも前回のゲストである、北埜さんご夫妻のシェアメイト……!
そして憧れのご夫婦としてお名前があがっていた、松尾さんご夫妻にお話を伺ってきました。
ファーストキャリアが農林水産省と経済産業省の共働き夫婦
シェアハウスで子育てをしながら、新しい家族のカタチをつくってきた
定期的にホテルステイをして語り合う「Quarter Session(クォーターセッション)」という名の夫婦会議を実施
などなど、調べるほどに「完璧」や「理想」という言葉が思い浮かぶ松尾さんご夫妻。
結婚して10年目、いったいどんなキラキラしたお話を伺えるんだろうと「夫婦の転機」をテーマに取材をはじめると「実は……」とマナさんの目から涙が……。
今回はA面として、妻のマナさん視点で抱えていた夫婦としての葛藤と、そこを乗り越えて生まれた、新たな心境についてセキララに語ってくださいました。
ぜひ最後までご覧ください。
「完璧な夫婦」だと思われているけれど
ーーー北埜さんご夫婦のお話や、以前の取材記事の様子から、おふたりは「完璧で理想の夫婦」というイメージがありました。
マナ:
周囲からは「すごく仲が良くて、やりたいことを応援し合っている夫婦」だと思われることが多いのですが、実は、喧嘩はめちゃくちゃしているんです。
私たちにとっては「真剣な話し合い」なのですが、常に本気で、相手に向き合おうとするタイプなので、一緒に暮らしているシェアメイトからは「よく喧嘩する夫婦」と認識されていると思います(笑)
最近は減りましたが、少し前までは大きい喧嘩は半年に1回。 小さな喧嘩は、数ヶ月に1回はしていました。
仕事やキャリアの話もあれば、”話を聞いてほしい私と、聞いてくれない相手”みたいな場面で衝突することが多かったですね。
ーーーマナさんから見たリキさんはどんな人でしょうか?
マナ:
とても純粋な人です。私の方が人への関心が強かったり、付き合いが多かったりするので、一見愛情深そうに見えるかもしれないんですが、夫の方が愛情深い人だと思っています。淡々と仕事ややるべきことをこなしつつ、子どもたちや家族に対する愛情がすごい強い人。
どんなに忙しくても、子どもと過ごす時間に幸せを感じてくれてるような優しい人ですね。
結婚から10年経ち、訪れた大きな変化
ーーー結婚して10年目を迎えられるおふたりですが、一緒に過ごしていく中で変化はありましたか?
マナ:
子どもができたことは、大きな変化でしたね。
もともと私は、夫婦の時間や私自身の人生を追求したい気持ちが強いタイプでした。でも子どもが生まれると、当たり前ですが自分の時間はそもそもないし、 夫婦の時間となると、さらに無い……。
話を聞いたり悩みを共有することを大切にしたいタイプなので、以前は3ヶ月に1度、都内のホテルに泊まりに行ってふたりの今後にじっくり向き合うクォーターセッションを恒例にしていたのですが、第二子が生まれてからは、そういう時間も作れなくなっていたことも、喧嘩が増えた原因のひとつかなと思います。
マナ:
仕事と子育ての両立も大変だったので、外部要因もありますが、相手に助けてほしいと思っているのにわかってもらえないことが辛くて、よく喧嘩になりました。
私たちの喧嘩は、相手に何か言われたというよりは、 仕事や友達関係で苦しんでることに気づいてもらえなかったり、理解してもらえないことに私がショックを受けてはじまることが多くて。
ちゃんと聞いてくれないことに対して「なんで聞いてくれないの?」「私に関心がないから理解できないの?」という気持ちが芽生え、行き場のない感情を相手にぶつけてしまっていました。
ーーーお互いに多忙な中で、対話が減ってすれ違いが増えていたんですね。
マナ:
人によって、言葉の受け取り方とか、それに対してどんな感情を抱くのかってそれぞれ違うじゃないですか。同じことを言われても、全然気にならない人もいれば、すごくショックを受ける人もいる。
1番そばにいる夫には、阿吽の呼吸じゃないけれど、その感覚をわかっていてほしいという気持ちが強かったです。
落ち込んで助けを求めているときに「え、それ落ち込むの?」みたいなことを言われると、10年も一緒にいるのに「夫どころか、友達よりもさらに遠い人」のように思えて、すごく寂しかったんですよね。
長く一緒にいればわかってもらえるはずだという期待がどこかにあって、何年経っても「なんか違う」という違和感に切なくなりました。
喧嘩の根底にある、家族観の違い
ーーーおふたりの家族観についてもう少し詳しく教えてください。
マナ:
私は、”真正面から正直にぶつかって、それを受けとめてくれる人こそが家族”という価値観を持っていて、それを相手にも求めていました。
でも夫はそうではなくて、”本心でぶつかるのはいいけれど、本音を言うことだけが、優しさじゃない。楽しい時間を過ごせる家族でいたい。”という価値観を持っています。
あと結局のところ、今まで私は「父親であり母親」であると同時に、「夫であり妻」であるという「カップル」であることを求めていたんです。
子どもはいるけど、ふたりの時間も当然ほしい。
相手にも、そのふたりの時間を大事にしてほしい、とすごく思っていました。
マナ:
例えば家族でドライブにいくとき、私は子どもが昼寝をしたときのその貴重な時間をどうふたりで過ごすかというということを大事にしたいタイプ。
一方で夫は、子どもが寝たら俺も休もう、みたいな感じで。求めるものが全然違ったんですよね。
私はふたりで過ごす時間に期待していた分、寝ちゃった夫の姿をみて「全然私のことを考えてくれないじゃん」って、ショックを受けてしまっていたんです。
喧嘩をするたびに仲直りはするけれど、やっぱり元々のスタンスや求めるものが違うから、何回も同じ内容でぶつかってしまう。
そんな状況のなかで、去年の年末、とうとう大きな出来事(事件)が訪れました……。
何でも話せる夫婦と思っていたのは、わたしだけだった
ーーーどんな出来事が訪れたのでしょうか?
マナ:
年末はいつも実家に泊まっていたんですが、去年の暮れはたまたまホテルに泊まりました。「1年間頑張ったね」と、いい感じの雰囲気で、子どもたちが寝たあと、久しぶりにふたりの時間をゆっくり持つことができたんです。
そのとき、ふと「私のことをどう思ってるの?」って聞いちゃったんですよ。
すると、珍しくいつもと違う雰囲気になって。
「たくさんぶつかりすぎていて、正直、好きとか嫌いとか、考えられなくなっている」ということを、打ち明けられたんです。
自分がこれまで相手にぶつかり過ぎていて、相手が自分の意見を正直にいうことを憚かるようになっていたことを知り、夫婦なのにそんな風に思わせてしまっていたことに、すごく驚くとともに、とてつもなく悲しくなりました。
自分としては「何でも話せるのが家族」だと思っていたのに、それを自分で壊してしまっていた、しかもそれに気づけてすらいなかった……。
ただ、そうやって夫が自分の気持ちを正直に話してくれたこと自体はとてもありがたく感じていて、お互い号泣していましたが、相手に怒ったりするということはなく、これまで気づけていなくてごめんね、という気持ちでした。
ふたりを救った両親の言葉
ーーーそこからどうなったのでしょうか……?
マナ:
このままの関係は良くないと思って、夫婦としては上手くいっていないけど、お互い人としては尊敬しているし、応援してる気持ちは変わらないので、少し距離をおいたほうが良いかもしれないっていう話をしたんですよね。
もともと私も彼も、自分たちの折り合いがつかないなら離れる、という考え方ではあったし、向こうも同じような気持ちでいたと思います。
そのあと1人で実家に帰って、一度距離を置いてみようという話や「彼はもう私のことを好きとかいう気持ちになれなくなっているみたい」ということを両親に伝えました。
すると両親は「いや、そんなことないでしょう」と、あっさり言ってくれたんです。
私の求めている愛情表現の形ではないにせよ、彼は彼なりに、私のことを大切にしてくれているんじゃないか、と。そのときの両親の言葉は、私が気づいていなかった、彼の愛情に気づかせてくれるきっかけになりました。
マナ:
例えばなんですが、夫はこれまで「育児・家事は女性がするもの」とはせず、子どもの送り迎えもわたしと同じくらい担ってくれていました。
子どもが小さいうちは、女性が仕事をセーブしながら働くというのが一般的な社会の価値観の中で、定時に仕事を切り上げて帰ってくることは、本人の中でも葛藤があったと思います。
それでもわたしのキャリアのことを考え、わたしが残業したりする時間をつくってくれたりしていました。これまでわたしの中では「わたしだって同じだけ送り迎えしているのに、なぜことさら感謝しないといけないの?」くらい強気に思っていましたが、
両親に「そんなふうに応援してくれてるって、十分愛情がないとできないし、大切に思ってくれている証拠じゃない?」と言われて、ハッとしました。
私の話を聞いてほしいとか、日々の細々したことに悲観的になっていた私に「それだけで相手に愛情がないと決めてしまうのは違うと思う」と言ってくれて。
両親のおかげで、今まで受け取れていなかった夫の愛情に、やっと気づくことができました。
ーーー大きな転換点だったんですね。
マナ:
そのあとすぐに夫は話をして、離れることなくまた一緒に暮らすことになりました。私にとっては大きな転機だったんですけど、夫はもっとライトな受け止め方で「そりゃそうでしょ」みたいなリアクションでした(笑)
今まで私は、自分の家族観を大事にするあまり、それに合わないなら家族じゃないし、一緒にいる意味もない……ぐらいに思っていたんですけど、この年末のことを経て、家族観がちがったとしても、この人は私にとって大事な家族だなと思えるようになりました。
ーーーなぜそこに行き着いたのかが、気になります。
マナ:
不思議ですよね。10年間、自分にとっては、話を聞いてくれなかったり、理解してくれないことがすごく大きな悩みだったのに、年末のことを経て、夫婦というものに対する価値観が大きく変わった気がします。
今、話したこと以上に何かあったわけではないんですけど、自分の中では、すごく大きな変化でした。それがきっかけで夫婦関係はすごく良くなったと思いますし、喧嘩の回数もかなり減りました。
ーーーご両親の言葉をきっかけに、今まで見えていなかった力さんの愛情に気づけたことで、「私をみてほしい」という気持ちや不安が和らいだのかもしれませんね。
今まで気付けなかった夫の愛情
マナ:
夫はすごく子どもと仲が良くて、休日もよく遊んでくれるんですが、そういう部分にも純粋に家族としての感謝を感じられるようになってきました。もちろん今までも十分ありがたいとは思ってたけれど、「私のことは?」という気持ちがどこかにあって、素直に感謝できていなかったのかもしれません。
私のキャリアを応援してくれていることや、子どもの送り迎えや家事を一緒にやってくれることへの感謝が増した気がしています。
今まではいつもどこかモヤモヤしていて、「相手はどう思ってるんだろう」みたいな気持ちのまま一緒にいたんですけど、 今はそういう気持ちもありません。
距離感が縮まったというか、「夫婦の第2章がはじまった」という感じが強いですね。以前とは全然違う感覚なんですよね。
ーーー喧嘩が減ったこと以外に、マナさんの中で変化はありますか?
マナ:
お願いしたいことを言語化できるようになりました。
今までは、私が落ち込んでるのを気づいてほしかったり、モヤモヤしたことを察してほしいという気持ちがあったんですけど、今は「日曜日の夜、仕事の件で相談したいのでお願い」って感じで言えて、相手も仕事モードで相談にのってくれたりとか、そういうコミュニケーションができるようになりました。
あとは、さっきお話した家族でのお出かけについても純粋に楽しめるようになって、 子どもたちが昼寝したとしても、自分も疲れたら寝る、くらいのスタンスになった気がします。
夫婦第2章に向けて、リキさんに伝えたいこと
ーーー最後に、これからふたりでどんなふうになっていきたいか、想いをお聞かせいただけたら嬉しいです。
マナ:
どうして今まで相手の愛情に気づけていなかったんだろう、と本当に思っています。だからこそ今は、日々感謝の気持ちがあるし、これからも家族4人でいろんな経験をしていけたらいいなと思っています。
ちょっと大袈裟かもしれないのですが、私としては夫婦の第2章が始まったな、という感覚がすごくあるし、これからも本音で向き合いつつ、一緒に人生を切り開いていけたらいいなと。相手のやりたいことに対しても、自分にできることがあれば支えていきたいです。
ーーーマナさん、ありがとうございました!
結婚して10年経ち、夫婦で仕事も子育ても順調にやっているように見えた松尾さんご夫妻。
マナさんのように「私のこと、本当に好きなのかな?」とふと頭によぎったことのある方も少なくないのではないでしょうか。
なんど喧嘩をして、対話をし続けても、価値観の違いを乗り越えるには時間がかかる。
一緒に過ごす時間が長くなるほどに、相手への期待が高まるけれど、一つ視点を変えるだけで、ふたりの関係性は大きく変わるかもしれません。
リキさんの一言をきっかけに「今まで気づけていなかった愛情の形を知ることができた」と語るマナさんの、晴れ晴れとした表情がとても愛らしく印象的でした。
次回はB面として、夫のリキさんに年末当時の心境や、今のおふたりが営む夫婦第2章について伺っています。ぜひご覧ください。
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