13,000kmのロングレース、強風と極寒の世界を超えるGLOBE40第3レグを追う。
冬の南インド洋をひたすら走ることになる過酷なレグの1つです。オーストラリアの南側を通過し、ニュージーランドを目指します。
モーリシャスから出発、南の高緯度の寒い海へ
Globe 40 第3レグはモーリシャスから、オークランド(ニュージーランド)までを走る、6,200マイルのコースです。南インド洋の西風を掴むために、大きく南下してから東に向かうため、実際は7,000マイルほど走る長距離セーリングとなる予定です。
今回の相棒はイタリア人のルカ・ロゼッティ。彼は26歳のセーラーで、私が外洋セーリングにのめり込むきっかけとなった、2019年のミニトランザット(単独大西洋横断ヨットレース)に出場し、その頃からの仲です。
シャイですがとても真面目で優しく、彼と一緒にいると気持ちが落ち着く、良い相棒です。
9月11日、カラッとした晴れ空の下モーリシャスをスタートしました。いつもながらスタートの日はナイーブな気持ちになります。これから始まる30日以上の過酷なレースを目の前にすると、仕方がないことだと思っています。
でもこれはスタートの瞬間まで。レースがスタートすると一気に気持ちが入れ替わり、力が入ります。
レース艇団はまとまって、まずは南下をします。
徐々に東に向かいながらも、およそ1週間南下をしました。モーリシャスでは25℃あった気温も、ここでは夜は10℃以下に気温が下がります。
ストーブやヒーターが無い船内はハッチを閉めても冷え込みます。外は15m/sほどの風が吹き、船外は極寒の世界です。
常に西風が吹くこの海域は、うねりがとにかく大きいことに驚きました。波長の長いそのうねりは、まるで山脈の様にはるか遠くまで繋がっています。
船の周りにはアホウドリが常に飛び回っています。おそらく私たちを漁船と思って付いてきているのでしょう。残念ながら彼らにあげる魚はありませんが、船を周回し続ける鳥を見ていると、こんなところにも生き物はいるのだと、不思議な気持ちになります。
スタートして2週間が経過、この1週間南緯40度前後の寒い海を走っていましたが、ここから西オーストラリアのウェイポイント(通過地点)を目指して一旦北上します。このウェイポイントは安全上の都合で設置されているものです。南の高緯度を走り続けた方が、距離が短くなるので目的地には早く到着できますが、南緯40度まで行くと私たち以外に航行している船はほぼなく、緊急時の対応が取りづらいためです。
レース艇は再び北上を始め、西オーストラリアのエクリプス島沖を目指します。
北上を始めると当然ながら気温が上がり、久々に上着を脱いだり、湿った服を乾かしたりと久々にリフレッシュすることができました。
気温や時間、そして出会う生き物たちが移動するごとに変わってくるので、自分が地球の上を進んでいることを感じる今日この頃です。
併せて地球の大きさも実感しています!
第3レグフィニッシュへ、距離で言うと地球を約半周!
西オーストラリアを越し、MILAI号と私たちはグレート・オーストラリア海に入りました。
発達した低気圧を通過するため風速20m/s以上の向かい風です。波が悪くMILAI号はこれまで体験したことがないくらい、激しく波に叩きつけられます。叩きつけられる度に、大きな音と振動が船に響きます。「頑張れミライ」と何度も船に話しかけました。
無事に嵐を越し、バス海峡に入ります。
先行するセック・ハヤイとの距離を徐々に詰め、バス海峡の出口ではついに追い抜くことができました!
オーストラリアを抜けて、次はタスマン海。いよいよニュージーランドに向けてファイナル・アプローチです。ここでもまた低気圧の通過でタスマン海は強風が吹き荒れていましたが、僕もルカもMILAI号も、最後の一踏ん張りです。
セック・ハヤイとの攻防戦続けましたが、一歩足りず約34分差で10月16日にオークランドにフィニッシュしました。モーリシャスをスタートしてから35日間のレースでした。長く辛い、でもやり甲斐のある充実したレースとなりました。
長旅で酷使したMILAI号はオークランドに到着後、メンテナンスに入りました。
今回、アンドレアが先にオークランドに到着をして、メンテナンスの段取りを整えていたため、すぐに作業に入ることができました。
キール、ラダー、マスト、セイル全てを外し、メンテナンスしました。距離で言うと地球を約半周し、ここでしっかりとメンテナンスできたので、安心してフランスまで乗り越えることができると思っています。
執筆・写真 鈴木晶友
編集 高津みなと
本記事は古野電気website特設ページ 「チームMILAI x FURUNO 世界一周への挑戦 Trip Log」を再編集したものを掲載しています。
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